目覚めた先で
本当にすみません、不定期投稿すぎました。
少しずつでもいいので進めていくのでよろしくお願いします…
薄暗い闇の中。
辺りを見渡せど光は1つも存在しない。それは閉じられた空間か、否。現実味がないことから夢の中だということがわかった。
それにしては意識がハッキリとしていたことに疑問を持った。ならば考えられるのは1つ。
「私は…死んだ?」
そう考えるのが当然だ。あの場で身体中を切り裂かれ、意識を失えば後のことなど想像に容易いだろう。
きっと私は民衆の目の前で、見世物としてカイルに殺された。ーー何より一番愛していた彼に、ただの名誉のためだけに殺される。
あんなに好きでたまらなかった彼に、最後は王国の反逆者として。
「………ふっ、ははっ!」
何故だろうか、気がつけば私は笑っていた。可笑しくてか、否。今までありもしない希望と愛を信じて貫いてきた自分を嘲笑ったのだ。
アルデン王国に小さい頃来てからずっと、私は彼の玩具でただ遊ばれていただけ。信じてた家臣や民衆すらも全ては偽りだった。
何を信じれば良かったのか、もう私には分からなかった。きっとこのよく分からない空間で自分が壊れていくのを感じながら果てるのだろうか。
ーー生きる意味なんてない。
死んだ方がマシだ、そう思った。
しかし現実はいつも私を裏切るのだ。
目の前に一筋の光が現れ、死んだ目をした私を飲み込んだ。決して暖かくはない光、それは次第に大きくなり、空間を飲み込んだ。
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重い瞼をゆっくりと開ける。
知らない天井、窓から差し込む光。そして、うっすらと聞こえる声。私は体を起こした。
「…!」
痛くない。
あんなに切り刻まれたはずなのに、体のどこにも傷は存在せず、むしろ体が軽いくらいだった。
辺りを見渡せば、見たこともないような素材で作られた家具や道具が置いてあった。そのことからここがアルデン王国でないことが、すぐに分かった。
ピシッ!
状況が理解できずに呆然としていると、突然何かが割れるような音が聞こえた。それは、私の寝ていた枕付近に置いてあった装置から聞こえた。
装置の形状は少し蜘蛛に似ているだろうか、6つの脚で支えられていた。恐怖より興味が勝り、それに触れようとした時だった。
「それに触れるな」
気がつけば部屋のドアが開いており、そこには1人の男が立っていた。黒い短髪で旅人みたいな服装の目つきの悪い男だった。蛇のように鋭い瞳はこちらを今にも殺しかねないようなものだ。その男は装置に触れるなと、私に強く言った。
私は男の恐ろしい睨みをもろともせず、むしろ淀んだ瞳で睨み返した。
命の恩人か、そんなことは知らなかった。
何故私が生きているかと問えば、この男が原因だ。助けてくれとも言ってない、むしろ死んだ方が良かったと思っている。
しばらくの睨み合いが続いた後、男が口を開く。
「エイスが俺にお前の面倒を見るように頼んできた。名前を教えろ」
やっと向こうが発した言葉はそれだった。もちろん私は答える義理はないし、誰かに面倒を見てもらうなんて望んでいない。
故に私はこう返す。
「嫌だ」
「なに?」
男の表情が強張った。それもそうだ、見ず知らずの男に名前なんざ教えるはずがない。
私はより反抗的な態度でこう言った。
「私をアルデン王国に戻して」
生きる希望はなくとも、目的はある。死んでしまった方が楽だが、それでは憎しみは消えない。あの女を、アルデンを滅ぼすまで私は止まるわけにはいかないのだ。
だが、それも簡単に打ち砕かれる。
「悪いが俺は転移は使えないし、お前を助けたのはエイスだ。そして、ここからアルデンまでは1ヶ月以上かかる」
「っ、そんな…」
私は頭の中が真っ白になった。アルデンへ行くことができなければ、ここがどこかも分からない。
目的は果たせずして、残ったのは絶望だけだった。どうしようもできず、悔しさと悲しさに私は胸を抑えた。
苦しむ私に、男は口調を変えずにこう言った。
「お前の事情は全部エイスから聞いた。仲間のこと、裏切られたことやその右腕のこともな」
「………」
「お前は本当は何がしたい?」
何がしたい、か。
いままであまり考えたことがなかった。
ただ純粋に愛を追って戦ってきて、今では想いは憎しみへと反転した。真実が見えなければ、民衆だって悪の味方をする。
私の仲間は何も悪くなかった。アルラさんだって、フリードさんだって無残に殺されただけだ。
それなのにきっと今もカイルやレイラは呑気に生きているに違いない。
ーー憎い
そう考えるだけで右腕が、心がドス黒く染まっていくのを感じた。
正義なんて存在しなかった。なのに、まるで正しいかのように見せるカイルとレイラを私は許せなかった。
何がしたいか、なんて決まっている。
私を絶望の底へと落としたアルデン王国を滅ぼす、そのためだったらなんでもする覚悟なのだ。
故にこう答えた。
「私の目的は、アルデンを滅ぼすこと」
それは、嘘偽りない言葉だった。
やろうとしていることは正気ではない、だが決意だけは正気だった。そんな私を見て男は、軽くフッ、と笑うと近くにあった椅子にゆっくりと腰かけた。
「俺の目的も同じようなものだ。憎しみと怒りで全てを滅ぼす力を手に入れた。だから全てを壊したいってことさ。ーー終焉者って知ってるか?」
ーー終焉者
1000年前に起きた聖戦が起こった原因の人物。7人の終焉者と災厄級の魔物達によって起こった過去最悪の戦争。
この世界に生きる者は皆知っている。有名なおとぎ話だからだ。
男は薄暗い笑みをしながらこう言った。
「俺がその終焉者の1人、世界を滅ぼしかけた災厄の1つだ。名をグレイズという」
何を言っているか分からなかったが、これから嫌でも知ることになるのを、まだ私は知らなかった。
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この男とアリアの出会いが世界を最悪の方向へと回すことになるのは、まだまだ先のお話。




