裏切られた想い
私はその時、何が起きているのか理解出来なかった。否、理解しようとしなかったのだ。
目の前で行われている出来事を見て、私は何か声を出そうとしたが、息が詰まって出せなかった。
2人はそっと唇を離し、レイラはこっちを向いて、フッと笑った。
それは、私に対する嘲笑だった。
「やっと来たのね、アリア・エスタニア」
「っ……!」
もう何が起きているのか分かっているはずなのに、まだ理解しようとしない自分がいた。また裏切られる、という現実を理解してしまう恐怖が、私の身を襲っていたのだ。
憎らしい笑みを浮かべるレイラに対し、私はやっとの思いで声を出した。
「これは、どういうこと…?」
「見ての通りよ」
その冷たい声が王室に明瞭に響いた。
その時、心臓が早く鼓動し始めるのを私は身に感じていた。呼吸も上手く出来なくなり、過呼吸になっていた。
それは何故か、今から告げられる現実に耐えられないと分かっているからだ。
「分からないの?じゃあ教えてあげるわ!」
私はこの空間から逃げたくなり、後ずさりをしていたが、なぜか足は動かなかった。
レイラは楽しそうに嘲笑を浮かべながら、私に告げる。それは、今まで戦ってきたことの無意味さを証明する言葉。絶対に聞きたくないもの。
「フフ、あなたはねぇーー」
「やめて、やめてぇっ!!」
早くなる鼓動。私は頭を抱え込んでそれを拒絶する。
しかし、無慈悲にそれは告げられた。
「最初っから何もかも無意味だったのよ。あなたの出会いも、冒険も、ここまで来たのも全て意味がなかった」
「ッーー」
気がつけば私の頭の中は真っ白になり、ナイフを手に持ってレイラに斬りかかりに行っていた。
怒りからでも、苦しさからでもない。私にも分からなかった。きっと、否定されたくなかったんだろう。今までの事を、そして仲間のことを。
私はナイフをレイラの心臓めがけて放つ。が、その寸前だった。
ガキィィンッ!
「っ!」
私のナイフは、レイラの心臓を突き刺す前に弾かれた。私は振り払われて飛んでいったナイフの方に視線が向いた。
何故ならそのナイフは、レイラが弾いたのではなく、別の誰かが弾いたからだ。
ーーでは、誰が弾いた?
そんなのは決まっていた。この部屋には私とレイラ以外に彼しかいない。認めたくない現実がすぐそこに、私は彼の方に視線を向けた。
彼は私の方を、凍てつくような冷たい目で見ていた。
「カイル…?」
次の瞬間、私の腹の方に鈍い痛みが生じた。私はカイルに手を伸ばしながら、眠るように気を失ったのだった。




