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スカベンジャーズ・イージス・フォルト  作者: みやなぎさん


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7/20

第7話:『レッドコア』を求めて①

300万Cという大金を稼ぎだしてから数日。


放課後の夕暮れが差し込む教室で、私『白坂 葵』は一人

自分のデスクでノートを整理していた。

教室の端では女子グループが週末の予定を楽しそうに話していて

その中心にはいつも通り明るく笑う『蓮見 凛』の姿があった。


現実世界の平和な日常、あの泥と硝煙にまみれた『SAF』とはまるで違い

遠い夢だったかのように思える時間だ。


(今日の夜は....なにしようかな

サイト調整...グリップの位置も少し手前に....。)


そう考えながら、荷物を詰めて鞄のファスナーを閉めた、その時だった。


「ごめんっ!ちょっと用事あるから先に行ってて!!」


輪の中でスマホを弄っていた凛が、突然声を上げて友達との会話を断ち切る。


「えっ?凛ちゃん?これからカフェ行こうって......。」


驚く友人たちを置き去りにして、凛は迷いのない足取りで私の席へ来た。

いつもならクラスでは目立たない私にわざわざ声をかけることは少ないのに

今日の凛はあきらかに目の色が違っていた。


「葵!ちょっと来て!!」


「えっ!?あ、凛.....!?」


返事をする間もなく、凛は私の手首をガシッと掴むと

半ば強引に席から立ち上がらされた。


「ちょっと凛ちゃん!?」「白坂さん連れてどこ行くのー?」

「2人ってそんなに仲良かったっけ......?」


後ろからクラスメイトたちの驚き交じりのざわめきと

好奇の視線が背中に刺さるが、凛は一切振り向くことは無く

私の手を引いたまま教室から連れ出された。

そのまま人が滅多に来ない廊下の奥...非常階段の踊り場まで

一気に引っ張ってかれた。


「ちょっと凛、痛いって.....。

 何があったの?急に...みんなすっごく見てたよ.....?」


「見た!?ねぇ、公式アプリの通知見た!?」


壁に私を追いつめるような勢いで、凛は私の肩をガタガタと揺らした。

学校では目立たないようにお互い『普通のクラスメイト』として

接しているはずなのに、今日の凛は周りの目すら忘れて完全に興奮している。


「通知.....?いや、5時間目終わったばっかだし見てないけど.....。」


「今すぐ見て!ほら!早く早く!!!」


急かされるまま、私はポケットからスマホを取り出し

SAFの公式コンパニオンアプリを開いた。

トップ画面に躍り出ていたのは、赤と黒の鮮明な警告色で彩られた

特大のアナウンスだった。


【特別期間限定レイドイベント『レッドコア・ハンティング』開催のお知らせ】


・開催日時 今日21:00~


・概要:特設封鎖エリア中央部に単体価値1,000万クレジットを誇る

    極秘物資『レッドコア』が1マッチに1つスポーンします。


・特殊ルール

 1:『レッドコア』を回収したプレイヤー、及びパーティの現在地は

   30秒ごとに同マッチ内の全プレイヤーへ強調表示されます。


 2:『レッドコア』所持中は通常脱出が不可能となり

   特定の特別抽出ポイントからのみ脱出が可能となります。


「い、いっせんまん......クレジット......!?」


画面に並んだ桁違いの数字に、私は声を裏返らせた。

1,000万C、前回の300万でもめまいがしそうだったのにその3倍以上。

ロビーの家具はもちろん、服も装備も武器も

必要なものはあらかた買い揃えることができる程の金額だ。


「そう!そうなんだよ!!!1,000万だぜ葵ちゃん!!!!」


凛は声を殺しながらも、両手でガッツポーズを作り顔を赤くしている。

まだ学校だというのに普段の少し荒い言葉遣いも垣間見えてくる。


「ま、待ってよ!一回落ち着いて...!」


私は冷静になろうと、画面の『特殊ルール』の欄をもう一度指で拡大した。


「『30秒ごと』だよ?『300秒』じゃなくて.....

 『30秒ごとに、"すべてのプレイヤー"から位置がバレる』んだよ!?

 拾った瞬間にガチ勢とかランカー...それだけじゃなくとも一斉に

 殺到してくるに決まってるじゃん!数の暴力で押し切られるよ...!」


「分かってる!分かってるんだけどさあ!!!」


凛はぐっとこぶしを握り締め、まっすぐに私の目を見る。


「私達なら勝てる!うん...絶対勝てる!!!」


「どこからその自信が来るの.....。」


「前回の300万レイドの時、めっちゃ強かったじゃん私達!!

 私のベイト(囮行為)と葵の不意打ち!コレがあれば!

 ガチ勢だろうがランカーだろうが目じゃないって!戦えるって!!!」


「凛.........。」


同じクラスで過ごすいつもの明るい友人....

だけど、向こうの世界じゃ生死を共にする頼もしいバディ。

私の胸の奥で、じわじわと熱いものが込み上げてくるのを感じる。


「.............分かった、分かったよ。

 行こうRIN、1,000万C奪還戦。」


「おっしゃあ~!!!そういうと思ってくれたぜAOちゃ~!!!」


踊り場で思わず大声をあげてしまった凛は、慌てて自分の口を両手でふさぎ

そのあと、ニッと笑って親指を立てた。


「イベントは21時開始....だよね。

 準備とかあるから20:30にはインしてればいいかな?」


「いーや、作戦も考えるから20時までにゃ集まりたいなぁ!

 こっちはあくまで2人なんだから、しっかり練らんとな!」


「うん、わかった。

 ならそれくらいでまた会お。」


2人で非常階段を後にし、教室に戻る。

その後色々と質問攻めにあったが...そこは凛が何とかしてくれて

私達は一旦別れた。


同日 19:40 RINのロビー内..........

相変わらずゴツゴツした銃達が飾られているRINの個人ロビーで

私とRINは装備の最終点検や回復の準備をしていた。


「予備マガジンは....4本あればいいかなぁ.....。

 医療キットも少し良いの持ってくようにして.....グレネードも

 お守り代わりに持ってた方がいいよね....。」


「だぁ~!!ポケットが足りねぇよぉ~!!!!

 弾代も馬鹿にならねぇってのに体力回復もアーマー回復も補充しな....

 これマジで1,000万取らないとトンデモだぜAOちゃ~!!!」


「だからしっかり準備してるんでしょ......。」


2人で確認し合いながら入念にアイテムをそろえた私たちは

来るイベント開始に備えて最後の確認と言わんばかりの

アイテムショップやガンショップ巡りをしていた。


「にしても...急だよなァイベントなんて。

 いままでのパッチにも予めの告知も伏線も無しに急に来るかね?」


「そんなもんじゃないの?分からないけど...。」


「ん~......最低でも1週間前とかに告知が

 今までのセオリーだったんだけどにゃあ.....。」


話ながら街を歩いていれば

『レッドコア』イベント参加者であろうプレイヤーたちが何人も見えた。

そのほとんどがフルメンバーの4人パーティーであり

2人で挑むことがどれほど過酷で無謀か知らしめられるようだった。


「.....本当に2人で大丈夫かな。」


「イケるに決まってんだろォ!!!.....とは言えねぇ雰囲気だな。

 右を見ても左を見てもゴツい子抱えた歴戦共しか居ない.....。

 こりゃ無理にでももう1人集めるべきだったかァ.....?」


「えぇ....急に弱気にならないでよ.....。」


「だって見てみろよAOちゃ!人数差をよう!!

 とてもじゃないけどM60とMPXの2人じゃせいぜい

 3人目か4人目で限界だぜぇ!?」


それは嫌というほどわかっているが

ここまでRINが弱気になるのも珍しい、SAF内に限らず

リアルでもずっと前向きで強気な彼女がこうなる程無謀だという事だろう。


「よし!決めた!」


突如RINが大きな声...はいつも通りだが、声を上げて私の方へ向き直る


「.....何を?」


「あと1人、見つけよう!

 今からなら....30分はあるから、その間に

 ソロだったり私達みたいなデュオ見つけて勧誘するんだよ!」


「えっ....えぇ!?」


「そうと決まりゃ即行動!行くぞ!!!」


どうせ圏内エリアだし2人一緒に探していても時間が足りないしと

RINが言いだし、私達は二手に分かれて探し始めた.......が

声をかけようにもみんな殺気立っていたり既にパーティを組んでいたり

ソロのプレイヤーも警戒心をむき出していて、とてもじゃないけど

話しかけられる雰囲気でも空気でもなかった。


「残り10分....都合よく組んでくれる人なんているわけないか.....。

 戻ろ、RINなら見つけてくれてるでしょ.....タブン。」


諦めながら、最後にここだけ...と人通りの少なめの

路地裏へ足を踏み入れた、その時だった。


「やあやあ、そこの可愛いスカベンジャーさん。

 何かお困りかい?」


頭上から、ひょっこりと降ってきたような軽薄で楽しげな声。

私が驚いて見上げると、少し高い所にある配管に腰を掛け

背中には長大なスナイパーライフルを携えた1人のプレイヤーが

ひらひらと手を振っていた........。

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