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スカベンジャーズ・イージス・フォルト  作者: みやなぎさん


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6/20

第6話:静寂と咆哮

「今日も良い稼ぎになりそうだ......。」


湿り気を帯びた『ディープ・フィルター』の不気味な暗闇の中

俺は数百万Cを注ぎ込み、ガチガチに仕上げた【Colt M4A1カービン】を

低く構え、暗視バイザーのポジションを微調整した。


俺たち三人のパーティは、このエリアのスポーン地点や強ポジション

脱出ルートも物資の湧き位置も完全に熟知しているベテランだ。

狙うは『旧研究施設』全体に湧く激レアなお宝と、そこに群がるカモども.....

初心者スカベンジャーの身ぐるみだ。


『リーダー、前方...施設:B側で電子キャビネットの開錠音だ、

 誰か漁ってるみたいだぜ、どうする。』


インカム越しに、周囲を警戒していたメンバーの低く抑えた声が届く。


「かかったな........よし、逆湧きのパーティだろう。

 脱出地点はこっちのはずだ、静かに詰めて油断してるところを....

 一気にぶっ殺してやる。」


俺たちは足音を消しながら、研究施設の白タイル張りの通路を

ゆっくりと、確実にクリアリングしていく。

角を曲がれば、ターゲットがいるであろう部屋のドアが見えてきた。


足音の聞こえ方からして、相手は二人

マップの構造も理解してなさそうなトロい動きだ。

お宝をポーチに詰め込んでニヤついてるだろう顔をハチの巣にしてやる。

不敵に笑い、俺たちは入り口のドアに集まった。


『入るぞ!続け!』


先頭の合図でドアを蹴破り、三人で雪崩れ込む。

視界を左右に素早く振り、クリアリングを始める。

物陰だらけの研究室....奥の電子キャビネットが捜索された後

この部屋の中にいることは確かなようだ。


『居たぞ!右奥のデスク裏っ........』


パパパパパパ!


その言葉と同時に、左の方からサプレッサー特有の

空気の破裂音と押し殺された射撃音が聞こえた。

先頭にいた仲間のバイザーに、吸い込まれるように弾丸が三発着弾する。


「なんだ.....っ!?」


仲間の一人が膝から崩れ落ちる。

ヒットマークがはじけ飛び、右上のUI欄にある仲間のHPバーが

ひとつ空になり、Deadマークに変わる。


「クソがっ.....隠れろ!立て直すぞ!!!」


動揺した俺たちは遮蔽物へ隠れる、サプレッサーの音がした方向に

銃口を向けようと陰から半身を出して索敵をする。


「怖いかぁ!?怖いよなぁ!!

 影から一人殺されてぇ!人数有利だったのに

 あっちゅう間にイーブンになっちまった!!」


奥から女の叫び声、そして......銃声が鳴り響く。


ガガガガガガガガガガガガ!!!!!


鼓膜が突き破られるかと思えるほどの咆哮。

部屋を満たしているのはもはや静寂なんて無く

全てを破壊せんと言わんばかりの、大口径の容赦ない掃射だった。


『ヤベェぞ!!遮蔽が持たねェ!!!』


「わぁってる!!!でもどうしようもないだろ!!!

 デバフ付いてんだから弾切れまで待つしかねェ!!!」


飛び交う大口径弾の圧倒的な火力によって、俺たちが身を隠しているデスクや

パーテーション、棚、椅子、ありとあらゆる物が粉々になっていく。


「出れねぇか!?出れねぇよなぁ!!!

 あちゅう間にハチの巣になるのが分かり切ってるもんなぁ!!!」


『言いたい放題言いやがって、あのアマ....!』


「耐えろ、どんだけ多くても120発だ!!

 後2,3秒もすりゃあのバカの弾は底を尽きる!!」


ガガガガガガガ.......ガキンッ!


激しい金属音が響き、ついに暴風のような連射が止まった。

今、部屋を包み込むのは空薬莢が床に転がる音と

激しい銃撃の後の静寂だけだ。


「弾切れだ、今だ出ろ!!!」


弾切れの隙を逃さず、俺たちは遮蔽物から一斉に飛び出し

LMGの射程軸へ銃口を向けた。

勝った....!!!撃ち切らせちまえば

あんな重い銃のリロードなんて隙だらけだ....!!!


『死ねクソアマァ!ブッ殺してや................』


パパパパパパ!


押し殺された、サプレッサーを通した銃声。

真横にいた仲間の頭にヒットマークが重なり、視界の端で

再びDeadマークが跳ねあがった。


驚愕で硬直した俺の視界の隅、物陰の暗闇から

パーカーを着て、バイザーを深く降ろした『小柄なスカベンジャー』が

静かに銃口をこちらへ向け直しているのが見えた。


(コイツ等....あの乱射も、煽りも........全部この為か........!?)


「クソッ...........」


まともな言葉も、射撃もする前に

俺の視界は真っ赤に染まり、暗転した。


【HEAD SHOT】

キル:プレイヤー『AO』 (MPX-K)


──────────────────────────────


「ふぅ........っ。」


激しい銃撃戦の余韻と、硝煙が立ち込める研究室の中

私はMPXの銃口を下ろし、大きく息を吐いた。


バイザー越しに見える床には、ベテランパーティと思われる

三人組が全員転がっている.....そして次第にボックスへ変わった。

静まり返った部屋に、私の荒い息遣いと

冷めかけた薬莢が床に転がる微かな音だけが響いていた。


「よっしゃあぁぁ~!!!!!AO/RINコンビ大勝利~!!!!!」


柱の陰から、巨大なM60を抱えたRINが豪快に飛び出てきた。


「やった!やったぜAOちゃ~!!!

 煽られて冷静さ無くしてぇ!弾切れ狙いで出てきたところをぉ!!

 AOちゃが横からパスパスッ!!!最強じゃん私達!!!!」


「うん...っ、RINが気を引いてくれたおかげだよ。

 怖かったけど、なんとか勝てたね...!」


緊張の糸が切れ、私はその場でへたり込みそうになるのをぐっと耐え

カスタムしたMPXのグリップを再び握りなおす。

反動がほとんどなく、咄嗟の飛び出しでも精度を保てたのは

間違いなくアタッチメント達のおかげだ。


「よしっ!感動に浸るのは帰ってからだよ!

 脱出まであと7分!急いでコイツらのアイテムをもらい受けようぞ!!」


RINの言葉に弾かれたように、私たちは三人分のデスボックスへ駆け寄る。


「おっほ~~~!!!!こらまたエラい装備もってますなぁ~!!!」


ボックスを開いた瞬間に、RINの興奮した声が聞こえてくる。

私もそれを聞きながら中身を見れば、見たことも無い高級なアイテムたちの

文字がずらりと並んでいた。


「上級のボディアーマーにヘルメット.....。

 この人の武器もすごいカスタマイズされてる....!

 沢山漁ったみたいだね、他のアイテムも沢山あるよ...!」


「こっちの銃は【KRISS Vector】だぜぇ!

 おっと変態とか言ってやるなよ!?このマップだけは

 SMGが猛威を振るう!それにVectorちゃんは素体だけで20万.....

 いいねぇ!!!しっかりフルカスじゃんか!これだけで70万だ!!!!」


私達は持って帰れる限界までインベントリの中に詰めた。

さっき見つけた機密データと合わせたら一体いくらになるんだろう....。


「AOちゃ~!もうパンパンだぜぇ!早く帰っちまおう!!!」


「うん、行こう!」


重量オーバーギリギリの重い身体を叩き起こし、脱出地点へ走り出した。

あんなに銃声をさせた割には周りに敵もNPCもおらず

颯爽と脱出地点へ到達した。


15.......14..........13............


緑色の枠が光る脱出地点に滑り込み、背中合わせで周囲を警戒する。

胸の鼓動が早鐘のように鳴り響くなか、画面中央のタイマーがゼロになった。

瞬間、視界がホワイトアウト....次に見える景色はRINの個人ロビーだった。


「ただいま我が家~!!!」


「ただいまぁ......!」


2人でソファに倒れ込む、直後ポップアップウィンドウに

リザルト画面が表示された。


【出撃リザルト:ディープ・フィルター】

・生存時間 17:42

・撃破数 3

・獲得経験値 3850


【持ち帰り戦利品】

・機密データチップ×1

・M4A1

・上級タクティカルボディアーマー×2

・タクティカルチェストリグ×1

・上級タクティカルヘルメット×1

・軍用医療キット×2

・5.56×45mm上級弾薬×155


【戦利品総額:3,114,000】


「さ........さんびゃく......!?たった一戦で300万C!?」


「ふっふ~ん!私たちにかかりゃこんなもん....ってわけでも無くてぇ

 これは上振れレイドだった訳だけど、それでも凄いでしょ!!!!」


今までコツコツ数十万づつ稼いで喜んでいたのが嘘みたいな

過去最高を圧倒的に超えた、単発戦利品総額だった。


「どうだった?弄った愛銃の感触は。」


RINがこっちを向いて問いかけてくる、私はそれに自信をもって答えた。


「とっても使いやすいよ、思った通りに動けるし...

 私の分身みたいに感じれた。」


その言葉を聞いたRINは、にま~っと笑って肩を組んでくる。


「その言葉が聞きたかった~!!!!

 もう立派なスカベンジャーだよAOちゃんは~!!!!!」


ゆさゆさと体を揺らしながら嬉しそうにRINは笑う。

その様子に釣られ、2人で笑いながらアイテムを整理する。


インベントリに鎮座する愛銃...MPXを愛おしく感じながら

確かな手ごたえと自信を感じていたのだった。

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