第2話:ファーストキルとその成果
転送ノイズが晴れ、代わりに鼻腔を突いたのは
焦げた鉄の匂いと湿った泥とコンクリートの匂いだった。
「転送完了だ!さあさあ、お宝は何処かな~!!!」
少し興奮気味のRINを横目に
ステータス画面を開き、改めて装備を確認する。
紙装甲という言葉は私の為にあるのではないかと錯覚するくらいの
頼りないという言葉すら持て余すくらいの装備だ。
「.....もう少し安い銃にすべきだったかなぁ。」
「アッハハ!後悔先に立たずってね~!
初期費用が頭になかったのは私もだしぃ......」
そうRINが言葉を紡いでいる最中
私の視界を真横から切り裂くように、赤い光の線が走り抜ける。
「.......ぇ」
「伏せろォ!!!」
RINは私を引き寄せ近くの壁に身を隠す、その瞬間
ドガガガガ!と連射音と共に遮蔽である壁を砕く音が響く。
「ひゃぁ.....」
「ハッハー!さっそく敵のお出ましかい!」
正反対のリアクションをしながら、二人で敵を探す。
40....50mだろうか、離れているところの車の陰に
1人のプレイヤーが隠れながら銃を撃っているのが見えた。
「約45m、敵はソロかにゃあ?
このRIN様にケンカ売るたあいいご身分じゃあねーの!」
興奮気味のRINはお返しと言わんばかりに『M60E4』を乱射する。
こちらも相手の銃に負けないほどの音を発しながら
ガガガガガと相手の遮蔽物を削る音が微かに聞こえる。
「AOちゃん、このゲームの鉄則は?」
「.......え、今?」
「そ、今!さあ答えはぁ!?」
ハイテンションで機関銃を乱射するRINに私は答える。
「シュート、ルート、アンド・タイム・トゥ・スクート....?」
「せいか~~~い!!!!
なら、シュートしてルートするぜぃ!!!」
RINはバッと遮蔽物から出て
変わらず相手の遮蔽へ銃を撃ち続ける。
「やることはたった一つ!
私が抑制している間にAOが倒そう!」
「えぇ!?で、できるかな......。」
「忘れたのかいぃ!?私とAOの銃の特性をよぅ!」
思い出す、かなり聞き流していたので曖昧だが......
私の銃は15m以内なら基本ブレず相手に当てやすい。
RINの銃は敵に近い壁に当てるとデバフを付与....だっけ。
「.....そういうこと!?」
「理解したみたいだねぇニュービー!
次に私が撃ち始めたら作戦開始だよ!」
そう言いながらRINは遮蔽に戻りながら、リロードをする。
「『抑圧効果』のデバフはあくまでも、相手の視界を
すこ~しだけ揺らしてアシストをすっこ~~~しだけ弱くするだけ。
でも、その少しは一瞬で決まる戦闘において致命傷!だぜ!」
話しながら手際よくリロードを済ませ、RINは射撃体勢に入る。
私もそれに合わせて銃のグリップを握りなおし、走る準備を始める。
「さあ作戦開始だぜ!ドジんなよAOちゃん!」
「....そーやってプレッシャーかけるのよくないと思う。」
RINは指でカウントダウンする。
3.......2.......1............『0』
2人で遮蔽から再び飛び出す、その瞬間敵の銃弾がRINに当たるが
関係ないと言わんばかりにベストとヘルメットで弾き、乱射する。
「オラオラァ!そんな軽い弾数発じゃ効かねぇぞ!!
私を倒したいなら対物ライフルでも持ってくるんだなあ!!!」
再び敵は遮蔽に隠れる、乱射されるLMGの弾を横眼に
私はその遮蔽物へ走るために、地面を強く蹴る。
「うぇっ.....!」
防具を着ていないに等しい私の身体は、驚くほどに軽かった。
重装甲のアーマーをガシャガシャ鳴らしながら乱射するRINとは対照的に
私の足取りは風のように軽い。
遮蔽物の陰から様子を見る敵と目が合う、その目は驚愕の眼差しだった。
「げぇっ!?速すぎだろ....!」
「オラオラァ!様子見てる暇なんてねぇぞ!」
敵が覗く度にRINが弾幕を張り、敵が反撃する隙が無い。
私は何の問題も無くSMGの有効射程、15mに到達する。
その瞬間、敵へターゲットマークが表示された。
射程距離内に入った証であり、私だけの距離。
RINの乱射が止まる、敵が遮蔽から出てくる。
私はMPXを構えなおして走りながら敵へ向けると
ロックオンマーカーが敵に吸い付き、引き金を引く。
パパパパパ!とさっきまで聞いていたのと比べたら軽めな音と共に
銃弾が敵へ目掛け飛び出す。
数発当たり、敵が遮蔽へ再び身を隠す....が
私は足を止めずにその遮蔽へ走り続ける。
隠れた遮蔽の横から私は飛びだし、再度敵へ向け射撃を続ける。
焦って銃を構えなおす敵の胸元や頭に
近接追尾の補正がかかった弾が吸い込まれるように命中する。
弾けるようなヒットエフェクトと共に相手のHPを削り切った。
「うっそぉ.....!」
敵の最後の言葉はそれだった。
その言葉を最後に倒れ、ターゲットマーカーは消え
身体の上には『Dead』のポップアップが表示される。
倒れた敵に重なるようにボックスが表示され
残された身体はしだいに消える。
「はぁ.....っ、はぁ......っ!倒せた.....!」
「ナイスキル~!!やったねAOちゃ~~~!!!」
ガシャガシャと装備を鳴らしながら駆け寄ってきたRINが
目を輝かせながら私の背中をバシバシと叩く。
「まさに狂気の沙汰!みたいな作戦だったけど
意外と刺さるもんよのぅ~!!!
おめでとう、記念すべきファーストキルだ!」
「うへ...死ぬかと思ったぁ.....。」
「殺したんだぜ、どっちかというとな!」
安堵からか、足腰の力が抜け
その場にへたり込みそうになるのを何とか耐える。
息を荒げる私を見て、RINはガハハと笑うと
地面に転がるデスボックスを指さした。
「さ、合言葉の続きを始めよう!
シュートのあとはルート!どんなお宝かにゃ~!!!」
ハイテンションなRINに釣られ、私はボックスを開く。
すると視界にはホログラムのインベントリ画面が展開され
倒したプレイヤーのアイテムと自分のインベントリが表示される。
「うわあ....色々入ってるね....。」
「これはこれは....脱出前だったのかなぁ?
欲出して私とAOにケンカ売るからこうなるんだぜぃ~.....
おっ!回路基板にぃ~ちょいと高めの医療キット~
それにコイツの装備、直しゃそれなりに使えるんじゃん?」
「ホント?よかったぁ。
この人の武器、『AR57』....って良い奴?」
「おっ、アルゴナかぁ!正式名称はAR-57(エーアール・ファイブセブン)!
この子は5.7×28mmのARでねぇ!特筆すべきはマガジン!!!
AR-15にアッパーレシーバーを付け替えてね!?
P90の弾とマグをどっちも使えるようにしてっから
大容量だし利便性もチームとしての相性もバッチシだしといった
色々とご都合の為に生まれたと言っても過言じゃない銃でねェ!!!」
「.....そうじゃなくて、値段とか...性能とか。」
「あぁ、そっちか!うっかりうっかり!
ARの中でも使いやすい方に入るんじゃないかな?
弾代はすっこ~し高いけど、反動も素直だし結構軽め!
そこそこの値段で取引されてるし持って帰って損はないぜ!」
その言葉を聞きながら自分のインベントリにAR-57を入れる。
他のアイテムもRINと分け合いながら収益を確認すれば
50万を少し超えた額になっていた。
「美味しいね~!これがあるからやめられない!
さ、最後の合言葉は~?」
「タイム、トゥ、スクートでしょ。
欲を出さずに脱出する。」
「せいか~~い!よくできた子には帰ったらご褒美じゃ!
マップを見れば緑色の脱出地点があるから、そこへ向かって行こう!」
私たちはマップを見て、一番近い脱出地点を選ぶ。
『ロスト・ストリート』での初陣はそれなりの収穫を得ることができ
焦げ臭い風が吹き抜ける街を走り出した。




