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スカベンジャーズ・イージス・フォルト  作者: みやなぎさん


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第1話:Shoot, Loot, and Time to scoot!

「絶対面白いから!運動神経とか動体視力とか

 マッッッッッッッッジで関係無いから!」


放課後の教室で熱弁を振るっていたクラスメイト

『蓮見(はすみ) 凛(りん)』の言葉が脳裏によみがえる。


自室、デスクの上。

そこに鎮座するのは、お小遣いとアルバイト代を惜しみなく

注ぎ込んで購入した最新型のVRヘッドギア...それとゲームカセット。


私『白坂(しらさか) 葵(あおい)』は、ごくりと唾を飲み込んだ。

普段の自分なら、こんな突拍子もない買い物なんて到底出来ない。

それでも、あの時の凛の楽しそうな笑顔と「一緒に遊ぼう!」という言葉に

どうしようもなく胸が躍ってしまった。


「.......よし」


小さく意を決して、ヘッドギアを装着する。

起動すれば視界が暗転し、次の瞬間

全身を包み込むような浮遊感と共に、世界が跳ねた。


眼前に広がったのは、世界を焼き尽くすほどの赤い光と

重圧なサイバー都市の光景だった。

肌を撫でる微風の感触、わずかに鼻腔を突く金属と焦げた匂い。

現実と見分けがつかないほどの圧倒的な臨場感に、葵は息をのんだ。


視界の端には、初期設定で登録した『AO』という名前が表示されている。

メニューを開けば、数多くの項目と共にデフォルトのアバターが表示された。

黒髪のボブカットに、アクセントとして入っている紺色のメッシュ。

黒のインナーに少し大きめのジップアップパーカー

手には滑り止めであろう薄いグローブをはめている

現実の自分を少しだけスポーティにした姿だ。


手を握り込んでみる。

驚くほど軽やかで、思った通りに指が動くことに少し感動する。


見渡す限りのプレイヤーで賑わう中央広場でおどおどと見渡していると

すぐ横から大音量の声が響いた。


「アオちゃん!?やっぱりアオちゃんだ!」


すこしびっくりしながら横を見ると、金髪のサイドポニーを揺らし

額に大きなゴーグルを装着した少女が立っている。


「.....りん、ちゃん?」


「そーだよ~!ゲーム内では『RIN』!

 こっちでもよろしくね~!!!」


私の手を握りブンブンと振るRIN、その背中には

彼女の華奢な体躯と服装には不釣り合いすぎるほどの

巨大な鉄の塊が鎮座していた。


「......それ、重そうだね。」


「ああ、コレ?これはM60E4っていって、用は大口径重機関銃!

 この重さと、7.62×51mm NATO弾をブッ放す威圧感!

 これぞ男のロマンってもんじゃあないか!私は女だけども!」


ガハハと笑うRINの勢いに圧倒されつつも

気の知れた人間がいることでAOの緊張は少しずつ解けていく。


「さ、最初にやる事は決まってるよ!

 命の恩人、もとい相棒となるメインウェポンを選ぼう!

 こっちこっち!ガンショップへれつごー!!!」


ホログラムのディスプレイ、そこにずらりと並ぶ武器。

想像した通りのガンショップが目の前に広がっている。


「このゲーム『スカベンジャーズ・イージス・フォルト』

 ...通称『SAF』のシステムは色々あってね!!」


ホログラムの画面を指さしながら、RINが得意げに胸を張る。


「まずは基本のアサルトライフル(AR)!

 これは中距離でスッと敵に吸い付く『追尾補正』が超素直!


 次にスナイパーライフル(SR)!

 遠距離で照準があうと、操作が重くなってズレなくなる

 『感度減速補正』がかかって当てやすくなるよ!でも

 近寄られたら補正も切れるし、手も足も出なくなる...。


 で、私が使ってるライトマシンガン(LMG)!

 これは個別の敵~ってよりは、エリア全体を制圧することに特化してる!

 弾が敵に近い壁に当たると『抑圧効果』っていうデバフを付けれるの!」


RINはそこで言葉を切り、くるりと振り返って私の目の前に立つ。


「初心者向けつったらこの辺かなあ、LMGは私の趣味だけど!

 AOは何か気になる武器はある?」


「.....この銃達は?」


私が指さしたのは、ウインドウの隅に表示されている

あきらかに周りより少し小さめな銃たちだ。


「その子たちはサブマシンガン(SMG)だね!

 15m以内の至近距離限定で、腰撃ちでも

 弾がバラつきにくい『近接追尾』がめっちゃ強くかかる....んだけど」


RINは少し言葉を濁し、苦笑いを浮かべながら解説を続ける。


「15m超えた瞬間、威力がガクッと落ちるし

 アシストもぜーんぶ切れてバラバラに弾が散る。


 このゲームの...物陰に隠れて中距離で撃ち合う特性上

 届かない・当たらないでだーれも使わない、一部の物好き以外はね。」


RINはARを物色しながら、私に合う武器を探している。

ただ私は、物好きの武器と称されたSMGの中のひとつに目が留まった。


「ねえRIN、この銃はどう?

 軽そうだし、小さくて扱いやすそう。」


「ん~.....ん?MPX-K?

 それ...SMGだけど、本気?」


その問いに私は頷く。


「確かに軽いし、インファイトなら無類の強さだけど...

 さっきも説明したよね、遠いと....」


「当たらないから近づこう、って事でしょ?

 ARだろうとSRだろうと、私には扱えなさそうって思っちゃって...」


RINは呆れながら天を仰ぐ。

こうなった私は頑固で止められない事を、彼女はよく知っている。

私はRINの制止を振りきってMPX-Kのウィンドウを開き、購入ボタンを押す。


「あーあー、しょうがないAOちゃんだにゃあ。

 ならその戦い方をするために大事な物も買わないと!」


そのままアクセサリーコーナーへ赴き、言われるがまま黒いスリングを購入。

胸元へ斜め掛けして長さを調整、そこへMPXを吊るす。


「うんうん、この世界の住人に見えるよ。

 持ってる武器が武器だけど...まあ、気に入ったならそれでいっか!

 さ、武器を選べば次は防具!こっちこっち~!」


RINに腕を引かれ、少し横の防具コーナーに行く。

ホログラムを操作し、ヘルメットやボディアーマーのリストを表示する。


「SAFは攻撃力もだけど、防御力も大事だからねぇ

 ガッチガチの重装アーマーなら一安心なんだけどぉ......」


そう言いながら、RINは私に所持金を表示するよう促す。

それに応じてディスプレイを表示し2人で確認をする。


「......ぇ、ぜんっぜん無いじゃん!?

 そっか!初期費用だとMPXは少し高いか!!

 っくぁ~!誤算だぜぇ!!!」


そこに表示されている金額は、文字通り雀の涙ほどしかない。

最新のVRヘッドギアを買うためにすべて消えた財布の中身が

ゲーム内にまで引き継がれている。


「ちぇ~、こんなことなら無理にでもAKMとかM16とか

 安くてそれなりに強い銃進めるべきだったなあ...。」


ブツブツ言いながら装備を見ているRINの横で

私は安価な装備のリストに目を走らせた。

選べるのは、防御力を最低限にそぎ落としたペラペラの『軽量布製ベスト』

それと頭部用の簡易的な『オープンスタイルゴーグル』くらいのものだ。


「これなら予算内、かな?」


「.......まあ、そうだけどぉ。

 防御力は無いも同然だねぇ、掠っただけで致命傷だよ。

 あとは安めでもイヤホン買ってね、私との通信用。」


RINのツッコミを横目に、私はイヤホンを含めた装備達を選択し

購入ボタンを押す。


「それじゃ着替えよ!これからフィールドに出るんだから!」


「うん、わかった。」


買ったばかりのベストをインナーの上から装備し、その上から

パーカーを羽織りジッパーを上までぴっちり上げる。

ゴーグルも額の上に装備、イヤホンを装着して準備を完了させると

横から着替え終わったRINが割って入る。


「そんなんじゃダサいよ~!もっとカッコよく行こう!

 ジッパーは開けてさ、軽装を見せて玄人感出してこ!

 物事は見た目から、ってね!」


ジッパーを下まで下げながら、私はRINの装備を見る。


「....そういうRINはゴツゴツしたの着てるね。」


ザ・ミリタリーベストという言葉が似あうほどの

肩から腰まで覆う重厚なベストを着用している。

各所には予備のマガジンとグレネードが敷き詰められている。

頭部にはヘッドセットが一体となっているフルフェイスヘルメットという

隙のない装備だ。


「ふっふ~ん!見よ、この重装甲!

 銃弾の雨が降ろうがびくとも...はするけど、動く要塞こと

 RINちゃんやでな!」


重いアーマーをガシャガシャと鳴らしながら、RINは誇らしげに胸を張る。


「さあ、武器も防具も装備した!次はいよいよフィールドだ!」


ガンショップを後にした私たちは、中央広場の奥に佇む

巨大な転移門へと向かっていた。


「銃を買ったらあとはゲーム性を確かめながらの実践に限る!

 ってことで適当なクエストをこなしつつ試射しよ~!」


「...このゲーム、何すればいいの?」


「そこからかい!って、何も言わず誘ったのは私か。

 このゲームはルート系シューターゲーム、やることは合言葉で覚えよう!」


「あ...合言葉...?」


「そ、合言葉!覚えやすいのがあるよ~!

 どのゲームでも三大鉄則とかあるでしょ、それのSAF版!」


RINに引っ張られるようにして

青白い粒子が渦巻く転移門へ足を踏み入れた。

全身を包み込む軽い浮遊感、視界が暗転し.......

足元へ伝わる泥と瓦礫の感触と共に、焦げ臭い風が頬を撫でた。


目を開ければ、そこは荒廃した高層ビルが立ち並ぶフィールド

『ロスト・ストリート』だった。


「さあ合言葉の時間だ!いくよーっ!

 『シュート!ルート!アンド・タイム・トゥ・スクート』!」


「.....すくーと?」


私が首を傾げれば、RINはニヤリと笑って解説を続ける。


「意味はと~~~ってもシンプル!

 撃って、漁って、用が済んだら秒でトンズラこく!


 敵倒して漁って、美味しい思いをしても欲を出さずに逃げる!

 欲は出せば出すほど反発が強くなるからね~!


 特にAOちゃんが選んだMPXは近距離特化だし装備も軽いし

 欲出して突っ走ったら一瞬でイカれるよ~!」


「はは...そうならないように頑張ります...。」


軽口を叩くRINを横目に、ゴーグルを目元に下ろす。

全財産のほとんどを使う羽目になったMPX-Kのグリップを握りしめ

私の『SAF』での最初のサバイバルが、今幕を開けた。

初投稿です。

荒いのは許してください。

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