第19話:実戦演習(ウォーミングアップ)
新しい装備の購入と調整を終えた私たちは
その足でRINの個人ロビーに向かい、全員と合流する。
「お、戻ったなぁ~!!!何してたんだぁ~.....
腰にゴツいのぶら下げてんなぁ!!!【Staccato 2011】だなそりゃ!!
m1shaと選んできたのか、お前いいセンスしてんなぁ!!!!」
ロビーに入るなり、RINが目ざとく私の腰元を指す。
大型のカイデックスホルスターに収まった【Staccato 2011】
長大な7インチスライドと、先端から覗くスパイク状のストライクフェイスが
異様な存在感を放っている。
「うん、超近距離用に持っておいた方が良いんじゃないかって。」
「最初はもう少し小さくて大人しくて、実用的な銃にするつもりだったのに....
まあ十分サブアームとして機能はするだろうし、良いけどね。」
m1shaさんが背中のタワーシールドを揺らしながらそう零し
静かにたたずんでいたB0risさんへ視線を向けた。
その手には新しい狙撃銃が握られており
カスタマイズを進行形で施しながら調整をしていた。
「新しい銃ですか?今まで使ってたのは...?」
「......予選マップが先ほど、正式公開された。
聞いていた通り『ロスト・ストリート外縁部』のようだ。
今まで通りのロスト・ストリート調のマップなら、全長は短い方がいい。」
B0risさんの言葉へ被せるように、RINが言葉を続ける。
「って訳で提案したのがソイツだ!!!
名前は【Desert Tech SRS-A2 Sport】!!!
全長16インチという短さで街中だろうが室内だろうが取り回し抜群!!!
ブルパップ構造だから機関部が後ろに配置されてて威力は申し分なし!!
そして【ポリマー製M-LOKハンドガード】を採用してるから軽量!!!
弾は【.308 Winchester】を採用してっからマズルフラッシュすげーけど...
サプレッサーを付けてるからある程度は改善できるだろ!!!」
まるで自分の銃かのように自慢するRINを、私たちは受け流す。
B0risさんは「聞き飽きた」と言わんばかりの目でRINを見ている。
「.....サイトはワンピースマウントを付け高さを出し
【Kahles K318i 3-18×50i】を付け、オフセットで等倍を用意している。
近中遠、どの距離だろうとカバーする準備は出来ている。」
「って訳だ!!!ボルトアクションだが、B0risの腕なら
この程度のカスタムだろうが十分...つーか
これ以上は邪魔になるんじゃねぇかな!!!」
「はぁ......ま、使えるなら良いんじゃない。
B0risはどう?その銃は。」
B0risさんは試しに色々な形で構え、納得したように銃を背負う。
「.....いい感じだ、余計なパーツが無く使いやすい。
銃身が短いのはまだ違和感が拭えないが....1回でも撃てば慣れる。」
「フン、ならいいわ。
それでこの後はどうするの?」
B0risさんは静かに頷き、ホログラムウィンドウを出し
先ほど言っていた『公開された大会情報』を大きく表示する。
「....先ほども話したが、予選マップは『ロスト・ストリート外縁部』だ。
......詳しいマップ情報はまだ出ていないが、名前から予想をするならば
ビルが建ち並ぶ場所と開けた場所が混在するマップだろう。」
「めんどくさいマップ構成になりそうね。
ならロスト・ストリートで適当に合わせながらチェックする?」
「......そうだな、それでいこう。
.....大会まで1週間を切っている、4人連携の最終調整と
装備の感触確認を、これから時間と弾が許す限り行う。
.......準備は出来ているな。」
「はい!」「勿論だ!!!」「言われなくても。」
三者三様の反応が部屋の中に満ち、私たちは
『ロスト・ストリート』へ向かうのだった。
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私達は『ロスト・ストリート』の路地裏にスポーンした。
「周囲に敵影、銃声共に無し.....隊列組んで進むわよ。」
m1shaさんの短い号令と共に
この1週間で身体に叩き込んだフォーメーションを展開する。
先頭には重圧なバリスティックシールドと【PP-2000】を構えたm1shaさん。
そのすぐ斜め後ろに【M60E4】を担いで不敵に笑うRIN。
最後方には【SRS-A2】を抱え、狭い路地でも引っ掛かることなく
流れるような足取りで背後のクリアリングを行うB0risさん。
そして私は、【MPX-K】を胸元に引き付けるように構え
前衛と後衛の間を自在に動く遊撃手の位置に着く。
「進行方向を12時としてクロックポジションを意識して。
この1週間である程度理解はしてると思うけど、改めて意識して。」
「「了解...!」」私とRINの脳内で進行方向に12時の針が固定される。
今までは2人で何となくで済ませていた報告が、この1週間で
まるで本物の軍隊にいるんじゃないかと
錯覚するくらいにまで叩き込まれている。
路地を前進中、先頭のm1shaさんがピタリと足を止めた。
そのまま拳を突き上げ『停止サイン』を提示する。
「11時方向、廃ビル2階.....敵影3。
.......ッ!!こっちに気付いてる!!」
その直後.........
ババババババッ!!!
と甲高い破裂音が鳴り響き、雨を切り裂いて頭上から弾雨が降り注ぐ。
m1shaさんは間髪入れずにバリスティックシールドを斜めに据え
身をかがめた。
ガガガン!ガン!
容赦のない掃射が盾を叩き、激しい金属音と火花が散る。
だが頑強なレベルⅣシールドは揺らがない。
「チッ....m1sha!射線開けろ!!!」
「言われなくても!右にスライドする....今!!!」
m1shaさんがあってを前方に押し出しながら右へ滑るようにステップし
後ろのRINへ完璧な射線を開ける。
待ってましたと言わんばかりにRINがM60の銃身を盾の脇から突き出した。
「お返しだぁ!!!頭が高いぜお前らぁ!!!!!」
ドガガガガガガガガ!!!!
大口径である7.62×51mm AP弾が吐き出される凄まじい咆哮と
周囲の空気が振動するほどの音圧。
M60の威圧的な重連射が廃ビル2階のコンクリートをバリバリを削り取り
敵の射撃を強引に中断させて、物陰へと押し戻す。
「......アイツら多分、横の細道から降りて巻き返す気。
ニュービー!出番よ!!!」
m1shaさんの指摘通り、窓枠から退避した敵の1人が
弾幕の死角を突こうと、右側の暗い路地へ駆けこんでいく影が見えた。
「.......右へ走れ、誘導しろ。」
「はいっ!」
私はその指示に従い、敵が駆け込んだ路地の前まで駆けだす。
あえて隙を見せるように軽くステップを踏めば
敵が私を路地に引きずり込もうと飛び出してくる。
その瞬間、最後方にいたB0risさんが即座に隊列の一歩外側へ踏み出し
前衛の肩越しにすっと長大な射線を通した。
バスッ.........!!
サプレッサーの掠れた風切り音と共に.308 Winchester弾が
路地から飛び出してきた敵の膝上を寸分の狂いも無く穿つ。
「があぁッ....!?」
「はあぁ....っ!!!」
体勢を激しく崩した敵に対し、私は一気に距離を詰めてMPXを構えた。
装填されているのは、新しく購入した9mm高圧弾【SGD 115gr +P+】
パパパパパパパパッ!!!
高調子な発射音と共に吐き出された軽量高圧力弾が
吸い込まれるように着弾する。
初速が早く直進性に優れる+P+は、強烈なストッピングパワーで
相手の防弾ベストを叩き、強引に後ろへとノックバックさせた。
しかし、一気に削り切ろうとし引き金を引き続けた瞬間.....
ガギィン!!!と強烈な振動と共に連射が止まる。
(........っ!?排莢不良.....ジャム!?)
「ジャムったか!!!貰ったぁ!!!」
距離はわずか2m弱、胸元を撃たれながらも踏みとどまった敵が
死に物狂いで銃を向けようとしてくる、その一瞬の隙。
私は迷わずMPXから手を離した、だらんとスリングに吊るされる。
右手で腰のホルスターから【Staccato 2011】を抜き
思いっきり右腕を敵に突き出す。
「うああぁあぁぁあ!!!」
全身の体重をかけて、敵の胸元へ突き刺すように叩きつける。
ガツンッ!と手に伝わる重い打撃感、だが【ストライクフェイス】のおかげで
激しく押し当てられてもスライドは1mmも後退しない。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!!!
「がはっ......!?」
ゼロ距離で何度も叩き込まれる衝撃が、敵の身体を激しく吹き飛ばし
視界の中で一瞬にしてDeadのマークが浮かび上がる。
「なっ.....!?撤退だ!撤退だああぁ!!!」
「逃がすかよ!!!」
1人が瞬殺されたことでパニックを起こし
路地裏から逃げ出そうとした残り2人の敵。
だがそこへ、m1shaさんのタワーシールドを先頭に
M60を抱えたRINが怒涛の勢いで路地になだれ込む。
「m1sha!!!固定!!!!」
「押さえた!!!!」
m1shaさんが盾を地面に突き立て壁を作り
その背後からRINのM60と、B0risさんのSRS-A2の追撃が炸裂する。
逃げ場を失った敵チームは、わずか数秒のうちに完全に淘汰された。
デスボックスに変わる敵をよそに周囲のクリアリングをし
異常がないと分かれば手早くなった手つきで物資を回収。
そしてそのまま、時間が許す限りチーム戦の練習を続けた。




