第18話:事前準備
「これで、いい感じかな.....。」
RINの個人ロビーに集まり、私達4人は銃のメンテナンスと
大会に向けてのフォーメーションを話し合っていた。
【SIG MPX-K】のボルトを引き、軽やかな動作音を確かめた。
対抗戦が終わってから早1週間、私達は大会予選に向け連携力を高めたり
何度か通常マッチへ赴きテストして、また改善点を修正を進めていた。
学校が終わればSAF、寝てまた学校そしてSAFと
まさにゲーマー、廃人と言っても過言じゃないプレイ時間を叩きだしている。
すでに24時を回っており、眠気もかなり頭を支配している。
「........はぁ、もうこんな時間。」
「何言ってんのニュービー、「まだこんな時間」でしょ。」
「ハハ、AOちゃはンな時間までやるの
この1週間が初めてだもんなぁ。
課題だって終わってねぇし...そろそろ私も落ちようかな!」
「....なんで課題終わってないの、結構簡単だったでしょ。」
「ハァ!?AOちゃ終わってんのかよ!!!!!
教えろぉ~!!!答え見せろぉ~~~!!!!!」
これが最近の、いつもの風景となっていた。
私はその後全員に挨拶をし、ログアウトをする。
VRヘッドセット『イージスリンク』を外し机に置いて、ベッドに横になる。
「ふぅ......あと1週間かあ........。」
大会予選は刻一刻と迫ってきており、私の緊張感は日々増している。
ベッドの上で天井を見つめながら、私は自分の手を開いたり閉じたりした。
対抗戦で自分の未熟さを理解したが、それ以上に
仲間との連携がかみ合った時の、あの興奮が頭を支配する。
「よし......明日も頑張ろ。」
目を閉じると、吸い込まれるように深い眠りへと落ちていった。
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翌日の放課後、ログインして個人ロビーにいると
m1shaさんからメッセージが届いた。
『ちょっと、ツラ貸しなさい。』
端的なその文を受け私は、どこへ行けばいいのか分からないが
ひとまず手当たり次第に各所を巡り、広場へ着いた。
そこではm1shaさんが、ベンチで退屈そうに座り待っていた。
「遅い、待たせすぎ。」
「場所が書いてなかったので.....。」
「私が悪いって言いたいの?さ、行くわよ。
対抗戦からずっと思ってた物を、見繕いに。」
首を傾げる私に、m1shaさんは呆れたように溜息をつき
私の手を取って歩き出し、ガンショップに到着する。
「アンタ、近距離戦メインって息巻いておきながら
過度な超至近距離になったときちょっと足が止まるでしょ。」
「え....まあ、MPXでも『近づきすぎ』れば肉弾戦になりますよね....?
いくら取り回しが良いと言っても、手が届く範囲だと私に勝ち目がなくて。」
「それ、その一瞬が何度もあれば....大会だと負ける。
『勝つため』に準備するものは、持てないほど沢山あるけど
『負けないため』に準備するものは....持てる範囲で確実にある。」
私達はメインウェポンコーナーを抜け、サブウェポンコーナーに着く。
目の前に浮かんでいるウィンドウには、沢山のハンドガンが並んでいる。
「サブアームを見繕う、超至近距離でもパッと抜いて
数発ぶち込んで体制を整える.....そんな感じのをね。」
「パッと抜いて....体制を整えるため......。」
「ササーッと見て選びなさいよ。
知識が欲しいなら都度聞きなさい。」
私はウィンドウをスライドし、実際に手に取ってみたり
m1shaさんに仕様を聞きながら、いろんな銃を試してみる。
そんな事をしていると.....1丁の銃に釘付けになった。
「ちょっと.....その銃はダメ。」
「え....でも、すごくカッコイイし.......。」
私はその銃を呼び出して、実際に手に取ってみる。
名前は【STI Staccato 2011】すこし大きな拳銃だ。
「見て分かる通りゴツくてデカい、パワーはあるけど
パッと抜くのも引っ掛かるし.....体制を整えるってよりは
超至近距離でも関係なくブッ殺すための銃。」
「でも、これがいいです。」
「アンタねぇ..........はぁ、分かったわよ。
ならカスタマイズまで済ませるわよ、まだやる事は多いんだから。」
私は、ウィンドウを操作してカスタマイズを始める。
m1shaさんは頭を少し抱え、呆れながらもカスタマイズを手伝ってくれる。
私の手に馴染むよう、細身のスリムポリマーに変更し
スライドは7インチロングスライドへ入れ替える、側面には
シャープな肉抜き加工であるスターカットが刻まれていた。
そうカスタマイズをしていると、m1shaさんからアドバイスされ
鋭いスパイク状のストライクフェイスを取り付ける。
あえてアイアンサイトのままにすることで、引っ掛かりの問題も解決する。
「結局ゴツくなった.....まあ、相手に押し付けてもスライド後退を防げるし
コイツなら9×19mmだからMPXとも銃弾共有できるか...。」
「すごく握りやすくなりました、有難う御座います....!」
「フン、あとはホルスターと....コレ買いなさい。」
m1shaさんが指を刺したのは、金色のパッケージに入った9mm弾だった。
【Speer Gold Dot 115gr +P+】と書かれたその弾丸は
今までのより少し違ったような雰囲気を感じる。
「今までより軽量で、初速が早い。
連射時の跳ね上がりも強くなるけど.....反動の質も違う。
ホールドさえしていればリカバリーしやすいのが特徴的。」
「なるほど.....分かりました、買います。」
銃弾も新しくし、サブアームを腰に付けたホルスターに入れる。
すこし重くなった腰回りだが動きに支障はなく
頼もしい重量感だけが伝わってくる。
「そんで....私も色々やりたいことがあるの。」
m1shaさんはウィンドウを操作しSMGを取り出す。
ハンドガンのような小ささとは裏腹に、その無骨なフォルムは
確かな頼もしさを醸し出している。
「【PP-2000】私の相棒、やっとカスタム決まったの。
.......アンタは先に帰ってていいけど?」
「見させて貰ってもいいですか...?」
「.........勝手にすれば。」
銃床に予備マガジンを装着し、小型のドットサイトを装着。
フラッシュハイダーを付けてカスタムを終わらせる。
「これで終わり、余分なパーツなんて要らないの。
もともとそこまでカスタム性がある銃じゃあないけどね。」
カスタマイズを終わらせたm1shaさんは、その銃をインベントリに仕舞い
前のボロボロとした盾じゃない別のシールドを背中に背負う。
「これが大本命【レベルⅣ バリスティックシールド】
7.62×51mm NATO弾程度なら簡単に弾き飛ばせる。」
不敵に微笑むm1shaさんの姿に
私は背筋がゾクゾクするような頼もしさを覚えた。




