第16話:チーム対抗戦①
食事が終わり、作戦会議時間が始まった。
私達はチームごとで部屋を分け、B0risさんと同じ部屋で
机の上にお互いの『長所』と『短所』をテーブルの上に広げていく。
「SMGの特性上...15m以上の射程は厳しいです。
なんとか20m前後までは当てれますが、決定打にはならないかと....。」
「......俺が持ってきたコイツは、中遠距離の威力と精度は保証できる。
だが...如何せんジャンクだ、次弾装填の際にボルトが引っ掛かり
どれだけ気を付けても0.5秒程のタイムラグが発生する。」
「なら中距離を基本として戦いませんか?
当たらずとも多少は隙を埋めれますし
そのまま近づいてくれれば私の距離になります。」
「.......それでいこう、良い作戦だ。」
お互いの弱点を素直に開示し、長所で補い合う作戦に決定する。
私達の極端な射程距離を補い合うために試行錯誤していれば
5分なんて準備期間はあっという間に過ぎ去った.................。
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「私がやる!M60 AP弾の掃射なら
遮蔽物なんて関係なしに、AOちゃ達諸共粉砕できる!!!」
「バカ!B0risの狙撃技術はStriXも評価するほどなの!
そんな一直線に突っ込めば、あっという間にアンタは負ける!!!
後ろで縮こまってれば私の盾で守ってあげるから、余計なことしないで!」
「そっちこそバカ言えよ!AOちゃはまだ初心者だけどよぉ!!!
機動力と発想って点なら、頭が凝り固まった私達スカベンジャーより
圧倒的に厄介になる!!!どうすんだご自慢の盾が捲られたら!!!」
一方、Bチームは怒声の嵐で部屋が埋まっている。
言い合いは次第に激しくなっていくが、1つの発言によって流れは変わる。
「言いたくなくても教えてもらうぜぃ!
あの【B&T APR308S】の射程距離とデカブツの癖は!?」
「どれだけ遠くてもアイツなら当てる!コッキング時にボルトが引っ掛かる!
0.5秒以下での次弾装填は物理的に不可能!!....そっちは!?」
「AOちゃの射程距離は長くて22mだ!それでもシステム上で
弾の威力はダンチで落ちるから脅威にゃならねぇ!!!
15mとある程度の遮蔽が無きゃあ
AOちゃはただの可愛くて速いだけの移動式ターゲットだ!!!」
「なら決まったわね、私の盾で前衛を張るから
歩く先にある遮蔽と、SRの音がしたらその方向に弾幕掃射!」
「AOちゃに仕事させねぇで、固まったところを一斉に叩く!!!」
お互いの事をまるで信用していないように思えたその作戦会議は
一番信頼している相手の事について開示し合い、決定する。
ヒートアップしていく言い合いは、5分という時間を数秒に感じさせた。
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「準備は.....バッチりみたいだね。」
私達全員の目を見て、StriXはそう言う。
対抗戦のフィールドは、主にプレイヤーたちが
模擬戦や練習試合で使うために設定されている『ロスト・ストリート中央区』
全員が見知ったマップという事もあり、特に意義はなく進行される。
「ルールは単純だ、どっちかのチームが全滅したら終了。
僕は観戦画面で楽しませてもらうから、君たちも楽しんで。」
そんな言葉を私たちに投げかけてくる。
高まった緊張感を解すようにStriXはパン!と手を打ち鳴らし
「さあ、対抗戦スタートだ!」
視界が暗転し、次の瞬間
焦げた鉄と泥の匂いが渦巻く『ロスト・ストリート』の中央区.....
マップ上では少し左側に降り立った。
「.......作戦開始だ。」「はい....!」
そんなやりとりをした瞬間、逆サイドであるRIN達のスポーン地点側から
とてつもない数の赤い光の線.........『弾道予測線』が飛んでくる。
間もなく轟音と瓦礫が崩れる音、数瞬ののち7.62×51mm AP弾の嵐が
私達のスポーン地点を無差別に、そして容赦なく襲い掛かった。
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「オラオラァ!!!AOちゃと言えど容赦はしねぇぞ!!!!!
どーしたデカブツゥ!!!AOちゃもぉ!!!来てみろォ!!!!
来れるもんならなぁ!!!!!!!!!」
「ちょっとうるさい!!!右側からばっか撃たないでよ!!!
右耳だけイカレたら責任取ってもらうからね!!!!!
一直線に進むから!!!正面を12時としてクロックポジションね!!!」
「な~~んも聞こえねぇ!!!うずうずしてたんだぁ!!!
宣戦布告を受けてから転送されるまで!!
ずっっっっっっっっとコイツで暴れたくてよぉ!!!」
ドガガガガガガガ!!!という【M60E4】の咆哮と瓦礫の崩れる音。
すでにコミュニケーション能力を失っているかのような隊列は
ぴったりと息を合わせ行く手を阻む障害物など
あたかも最初からなかったように、関係なしに破壊して突き進む。
「1時の方向!!!ビルの3階右脇から微かに反射光!!!!!
撃ってきたら即座に掃射して!!!!!!!」
「了解ィ!!!!200発の弾幕を思い知らせてやんぜぃ!!!!!」
バスッ!!!と小さいが確実な射撃音。
m1shaが手に持つ盾に、銃弾を弾いた時特有の
激しい重みと鋭い振動が同時に伝わる。
「撃たれた!!!今!!!!!」
「おっしゃあぁ!!!ビル諸共砕け散れぇ!!!!!」
RINのM60が、ビルの3階を丸ごと掃射し吹き飛ばす。
瓦礫の山となった3階部からはDeadマークは飛び出さず
まだ生きていることが想像できた。
「クッソ...生きてやんのか......!!!」
「雑に乱射し過ぎなんじゃない!?
私が撃ってれば今頃2v1でそのまま勝ち切れた!!!」
「ンだとこら.....!!!AOちゃが来てるぞ!!!!!」
ビルの狙撃位置からは逆サイド、10時の方向から
一瞬手薄になった地上への掃射を好機とみたAOが駆けだしてくる。
15m圏内、SMGを携えるAOだけの交戦距離のはずだったが......
「甘いんだよニュービー!!!
私がその程度読めてないとでも思ってんの!?」
m1shaのタワーシールドが、AOの射線を完璧に封鎖する。
一瞬の思考の後、そのまま横へまわろうとするAOへ
タワーシールドの脇から構えられた【CZ75 Auto】の射撃が開始された。
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「ッ!?」
私はとっさに後ろへ引き【MPX-K】の小さな銃身を盾として
そのまま近くの路地に入り込み、B0risさんの居るビルまで退くことにした。
さっきまで私が立っていた場所は、RINの弾幕掃射により
まさに更地へと変化していくのが退きながら見える。
「ごめんなさい....!あのタイミングならやれるかなって.....。」
ビルまで退避した私は、HPが2割ほど削れていた。
B0risさんは2階部分へ下がってきており、HPも私と同じくらいか
それより少し多く削れていた。
「......俺も完璧だと思った、よく無事に退いてきた。
しかし彼女ら...俺達の戦い方をしっかり理解しているな。」
「はい....きっと、お互いが私達の情報を共有して
どう戦ってくるか、どこを狙ってくるかって事を作戦に組み込んでます。
m1shaさんじゃなくてRINが、先に私が来てるのに気付いてました......。」
私達の間に、数瞬の沈黙が流れる。
考えていても仕方がない、分かってはいるが
どっちのチームも持っていた、お互いの最大の情報......
『1番知っている相手の戦闘スタイル』を満足に共有できていなかった。
「......俺の判断不足だ、気に病むな。
相手がそれを武器に襲ってくるなら、それすら武器にすればいいんだ。」
「........?いったいどうやって......。」
「考えてる暇はない.....来るぞ!」
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「このビルだなァ....1階と2階が吹き抜けになってら。
足場はあっから2階にいるだろうなぁ.......。」
「階段は1つだけ、私が塞げば逃げられない。
袋のネズミってやつね、B0risはどっちかと言えばクマだけど。」
「ゴリラの方が似合うんじゃねぇの?
........そうだ、良い作戦があるんだけどよォ......!!!」
RINはm1shaに耳打ちをする。
次第に2人はニヤついて、作戦を実行した。
ガン!!!と大きな音を立ててタワーシールドを地面にたたきつける。
そのまま大きい声で吹き抜けに向かってm1shaは叫ぶ。
「入り口は塞いだ!!もう逃げ場はないよネズミとクマぁ!!!
おとなしく......これで死になぁ!!!!!!!!!」
「吹き飛べェ!!!!!!!」
RINが吹き抜けに向かってグレネードを投げ込む。
1つ、2つ、3つと数が許す限り、何度も何度も投げ込む。
しばらくすれば
ドガァアアァァアアァアァ!!!!
という爆発音が何度も、無慈悲に鳴り響く。
そのままRINは、M60を天井へ...AO達の床に向かって
弾幕掃射を開始した............。
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「待ってください......!」
私はB0risさんに声をかける。
ビルの入り口...少し前までRINとm1shaさんが迫っているが
私はRINがこのビルでどう戦ってくるかが分かった。
「RINは、床ごと私達を撃ちぬくつもりです。」
「床ごと....だと.....!?
AP弾なら確かに理論上可能だが、なぜわかる?」
「『レッドコア』の時に、同じ作戦をして私たちは勝ちました。
今回違うのは、吹き抜けがあるのと.....階段が1個の事だけです。
RINは銃を沢山撃つのが好きなんです、そして成功体験もある。」
B0risは少し考えるようなそぶりをし、顔を上げる。
「分かった、それに賭けよう。
そして......その賭けに勝つことが前提の作戦だ、聞いてくれるか?」
「.....はい。」
私達は声を小さくしながら作戦を練り直す。
きっと戦闘が始まるまで30秒も無いが、その時間で十分だった。
私がやる事だけを聞き、作戦開始を待った.........その時
「ッ!!!グレネード!!!!!!」
そのB0risさんの言葉と共に、ビルを揺るがすほどの大爆発が
一度だけではなく、何度も起こる。
「ッ.....!?B0risさん....!!」
私のその声に返答はなく、その数瞬後
M60の壮大な咆哮と共に、RINからの
床ごと私達を貫かんとする弾幕掃射が始まった。




