第10話:『レッドコア』を求めて④
ギィ.....と湿ったような金属音を立てて、重い鉄扉を開ける。
叩きつけられるような雨と冷たい風が容赦なく顔を打ち
私とRINは身を縮こませながら屋上へと足を踏み入れた。
屋上の縁、雨に濡れながら【Orsis T-5000】のバイポットを立て
静かに下界を見下ろしている1人の影.....StriXだ。
彼は私たちが到着したことに気づき、振り返りもせず
相変わらずの不敵な口調で言葉を投げかけた。
「やあやあ、無事で何より......下は相変わらずの大惨事だねぇ。」
「ほんっと地獄絵図だぜぃ...!!!
近くで潜めたと思ったらあんな事になって、流石に固まったわ!!!」
RINが雨を払うように頭を振り【M60E4】を壁に立てかける。
私もそれに続くように【SIG MPX-K】から手を離しスリングに吊るした。
「マジでどーしたものか!持てば銃は使えねぇ!!
いっくらでも敵は湧いてきやがる!!!どーすりゃ
1,000万を持って帰れるってんだぁ!?!?」
「僕は適当にルートして三等分でも良いけど....
君たちはそれじゃ満足しないよねぇ?」
「あったりまえだこのヤロー!目の前に1,000万だぜ!
いくらここを漁って300万稼いでも『レッドコア』を持って帰ったって
金じゃ収まらねぇ称号だって手に入るんだぜぃ!!!」
RINは興奮したように地団駄を踏む。
私だって同じ気持ちだ、どうせなら『レッドコア』を持ち帰って
みんなで祝杯を挙げたいと考えている。
「でも......どうするの?
ただでさえ3対4で人数不利になるだろうし......。」
私のその言葉に、StriXはゆっくりとライフルから目を離すと
フードの陰からニヤリと口元を歪めた。
「人数不利なんて関係ないよ、1人倒せばイーブンだ。
正面からやり合えないなら背後から......脱出地点で横取りしよう。」
「よこどり......。」
思わず言葉を返す私とは別に、RINは楽しそうに言葉を返す。
「そうか!!!StriXが不意打ちで1人もってきゃ
人数不利はあってないようなモンだぜ!!!」
「そういうこと....でも同じ考えをするような奴は他にもいるはずだ。
まずはその同業者どもを掃除した後に
最高のポジションを確保しに行こう......!」
「なら急ごう、全員倒して.....勝とう!」
「おぉ!!!!!最強は私達って知らしめてやろうぜぃ!!!!!」
雨の降る中、私たちは脱出地点へ......
『特別抽出ポイント』へ静かに駆けだした。
雨水を吐き出す裏路地を抜け、冷たい雨が叩きつける
地上の廃墟街へと道を進める。
目の前には、緑色に怪しく光る特設脱出地点が見えてきた。
「あそこのビルとかいいんじゃねぇの?
上からならいい景色が見えそうだぜぃ.....。」
RINが指さしたのは、脱出地点の目と鼻の先にある
半壊した3階建ての雑居ビルだった。
しかし、物陰からスコープを覗いていたStriXは制止する。
「良いと思うけど.....やっぱり居たね同業者君は。
3階の端にスナイパー、遠くを警戒してそうだ......
推測だけど、4人組だろうねぇ。」
「だろうなぁ.....!チクショー、行く先々に居やがるなぁ......!!!」
絶好の狙撃ポジションだろう、居座られては近づくことは出来ない。
それに予想が正しければあと3人はビルの中にいることになる。
「建物近くで待機できる?僕がスナイパーを倒したら
窓から一気に突撃して、立て直す隙を与えず制圧しよう。」
「それでも中では2対3だよ、数では負けてる....。」
「だけどいつもの作戦は出来る、だろAOちゃ!!
私達なら勝てる!いつも通りぶっ倒そうぜ!!!」
RINのその言葉に少しだけ励まされながら
やるしかないんだと腹を決めて前に進み始める。
建物近くに横転している車の陰まで忍び込み
RINがStriXへ合図を送る。
「準備は出来たぜStriX、ド派手にブチかましちゃれ...!!!」
『了解、3.........2.........1...............0!』
プシュンッ......!!!!!
雨音を切り裂く、湿った重低音。
サプレッサーを通したスナイパーライフルの冷徹な一撃は
ビル3階の敵スナイパーに真っ直ぐ吸い込まれた。
『ワンダウン...!』
「........今だッ!!!!」
RINの合図と同時に、私たちは雨の降る通りを抜けて
ビルの割れたガラス窓から一気に1階内部へ飛び込んだ。
そのまま一気に階段を駆け上がるつもりだったが.....中は思った以上に複雑で
両サイドに階段があり、どちらかを制圧しても反対側から裏を取られてしまう。
「クッソ.....ここまで相手有利なビルがあるかよ.....!!!」
「ホントにね、二手に分かれる?」
2人で攻めあぐねていれば、右側の階段...2階の踊り場付近から
甲高い金属音と共に、楕円形の物体が転がってきた。
「グッ.....グレネード!!!!!」
私とRINは身を翻し近くにあった遮蔽物へ飛び込む。
コンマ数秒後、耳をつんざく爆発音と衝撃波が周りの瓦礫をまき散らした。
「ヤロー.....!!!そっちがその気ならなぁ.....!!!
AOちゃ、今から言う事よ~~~く聞いてくれよぉ.....!!!」
RINがニヤリと笑い、耳元で短く作戦を打ち明ける。
私はそれに深く頷き、足音を消して暗がりの中へ身を滑り込ませた。
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「スナイパーがやられた!同じハイエナ狙いだ!」
「1階から入って来たぞ!!!」
「右にグレネード!!!左側を固めろ!!!」
右側の階段踊り場、投げたグレネードが炸裂し爆煙が立ち込める。
男たちは左側の階段に射線を集め、固まっていた。
1人を失ってもパニックにならず、1階からの突入口をロックする。
外のスナイパーから射線を通されないように陣取り、敵が来るのを待つ。
だが、敵が来るのは正面じゃなかった。
ガガガガガガガガガガガガガ!!!!!
直後、足元の床から耳をつんざくような轟音と共に
重機関銃の無差別な掃射が突き上げてきた。
「うわぁあぁ!?崩れるぞ!!!下がれ下がれ!!!」
足元から容赦なく跳ね上がってくる弾幕とコンクリートの破片。
その激しい掃射にたまらず陣形が崩れ、2人が足を撃たれて
崩れ落ちながらハチの巣となり、デスボックスへと変わる。
「クソッ!!やりたい放題だなこりゃ....!!!」
残された1人は命からがら廊下の奥へ逃れようと飛び出すが
しばらくは来ないと思っていた右の階段から、小柄な敵が覗き込んでいた。
パパパパパ...!!!
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「これでラスト....かな?
終わったよ、2階も3階も敵は居ない。」
『敵影は見えないし、銃声を聞いて駆けつけてくるのも居なさそう。
オールクリア.....完璧だったよお2人さん。』
「おっしゃ~~~!!!見たかぁ!!!!
天井ブチ抜き作戦大成功~!!!!!」
それぞれ思い思いのリアクションで歓喜する。
軽くデスボックスを漁り
手早くリロードを済ませていたら、StriXが合流してきた。
私達はビルの3階、窓辺から脱出地点を一望していた。
「や~~っぱりいい景色だなぁ!
この景色を最後まで拝めなくて残念なこった!」
「あはは......でも、ここなら
横取り作戦は無事に出来そうだね。」
「そうだね、あとは敵が来るまで身を潜めよう。
束の間の休息ってやつだよ、警戒は怠っちゃダメだけど。」
冷たい雨が打ち付ける脱出地点を見下ろす。
遠くの街並みからは、『レッドコア』を巡る銃声が今もなお響いてくる。
マップを開けばゆっくり、でも確実にこちらへ赤いピンが近づいてきている。
「もうすこしだね、絶対に取ろう.....!」
「おうよ!!帰ったらみ~~んなに自慢してやろうぜぃ!!!」
「一躍人気者、自慢する暇も無く人が殺到するだろうね......。」
私は愛銃のグリップを強く握りなおし、息を殺す。
もうすぐ到着する、罠へと飛び込んでくる獲物を前に
私達の.....本命の獲物を前にした戦いが始まろうとしていた。




