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過去の傷と後遺症

どこまでも人は強欲で

どこまでも人は他責思考で

どこまでも人は自己中だ

2人で車に乗ると

同じタイミングでタバコに火をつける


「今日の気分はこっちなんだけどどう思う?」


車の中のBGMを今日は変えてみよう

そんな気分でそんな雰囲気だと思った


「俺もそれめっちゃ聞いてたそれにしよう」


このアーティストは好き嫌いが別れる

希望がある曲がないのだ

そんな楽曲の中で

珈琲を飲み酒を飲み

落ち着く人間もいるのだ


「俺こうなるの3回目だろ?」


彼が自分から

その話をして来るとは思わなかった

最近思う事があったのだろう


「そうだね私の知る限りでは」


タバコを窓から投げ捨て

彼はヘラヘラしながら言う


「1回目も2回目も治ったふりしてたみたい」


私は何も言えなかった

気がついていたが

それを伝えていなかったのだ

彼を否定してしまう気がして

自分から言う言葉で彼が傷つくのが怖くて


「そうなの?」


気が付かなかったふりをする

それが1番いいと思ったのだ


「治ったふりしてずっと頑張ってて壊れた」


彼は窓の外を見ながら

独り言のように言う


「本当は分かってて黙ってくれたんだろ?」


彼はこういう時

相手を攻める言い方はしない

自分に優しさが向いてるのを知っているからだ


「まあね」


彼は2本目の煙草に火をつけて笑う

どこか嬉しそうにどこか恥ずかしそうに

彼の目には昨日より光があった


「ありがとうな」


「何を今更」


車中での2人の会話は

BGMに混ざり

外に抜けていくようだった

そこから彼は

3度目の今回の件について話をしてくれた


「話してくれて良かった」


そう言うと彼は笑っていた


彼の話の内容は

人からの期待に疲れてしまった彼に

今まで庇っていた人間達の裏切り

そして何も言えない彼への責任転換

そんな事に何年も耐え

壊れてしまったとの事だった


彼は疲れていたのだろう

色のない社会に


彼は揺れていたのだろう

生きる意味を探して


車から降りる

海が見える駐車場には

車が少なかった


「お前がいて良かったよ」


いつもそうなのだ

自分が無理をしても誰かの為に

それに裏切られてきた彼は何度も壊れてしまう

その度に私が治るまで見守る


「そろそろ自分の為に生きてみない?」


私が彼に本当はずっと言いたかった事だ

言いたくても言えなかった言葉でもある

彼が消えてしまいそうで

ずっと会えなくなってしまいそうで

それでも今回は口に出す事を決めた


2人の好きなタバコの匂い

彼の好きな海の見えるこの場所で

彼に今なら伝わると思ったのだ

私の言葉が真っ直ぐに

誰にも邪魔をされないこの場所なら


「ありがとう」


彼はそれだけ言うと

また煙草に火をつけた

私は彼にずっと気を使っていたのかもしれない

彼も私に気を使っていたりするのだろう

でもそれは自分には気が付かない

ほんの少しの事だったりするのだ


「落ち着くなあここは時間を忘れるよ」


彼の一言で私はハッとする


「仕事の時間やばいかも」


彼は笑いながら車に乗る

私は焦りながらエンジンをかける

仕事の時間も忘れるほど

彼に対して考え

向き合っていたのだろう


「行ってくるからまたね」


私は急いで職場へ向かう

彼は私の家へと帰って行った

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