見え方の違い
もし君が透明になったなら
私は君に色をつける
透き通るような綺麗な青色を
車を止めて少し歩くと
そこには目的地があり
私達は少し足を止めた
観光客もチラホラ目に映る
「なんか思っていたより地味だね」
私は思った事を彼に言う
彼も首を傾げていた
「これがモネの池と言われる場所か」
モネの絵に似ているかと言われると
そこまで似ている訳でもなく
正直期待外れではあった
「角度の問題なのかな」
彼は池を見ながら
ゆっくりと歩いている
「私には普通の池にしか見えないな」
そんな事を言いながら
彼と隣を歩く
なぜここがそう言われているのか
私には分からない
「鯉がいるね」
彼は池の中を見ながら
足を止めた
私も池の中を見てみる
「なんかさっきよりはそれっぽいかも」
鯉の色が景色に足されたからか
少し景色に立体感のような
不思議な感覚を覚えた
「水が透き通っていて
鯉の赤い色が浮き出て見えるね
日が登りきる前なら綺麗だと聞いたのだけれど」
彼はそう言いながら
この景色を目に焼き付けているようだ
早く来る理由はそれだったのか
「ここから見ると確かに似ているかな」
少し歩いた所で彼は言う
私もあとに続く
「まあ言われてみれば似てるか」
作品と照らし合わせると
少し似ているような気がしてきた
「完璧にそれではないけどまあ言われれば」
お互いにそんな事を言いながら
池を見ている
「やっぱり実際見てみるのと周りの意見とでは
結構違いがあるものだね」
私も彼もその他大勢の意見とは違った
綺麗な池ではあるが
睡蓮の中の景色とは少し違う
それが私達の感想だった
「別の物として見れば綺麗じゃないか?」
彼にそう言われると
そんな気もする
「見方を変えればいいのね」
私達の思うモネの池ではないけれど
綺麗な場所という事に変わりはない
観光に来る人達は
どう思ったりするのだろう
「周りの人達はどう考えているのかな」
私は彼に聞く
彼は池を見ながら言う
「期待通りと思う人もいれば
そうでないと思う人も多いんじゃないかな」
人の感性はその人にしか分からない
確かに実際に見ているものと話で聞いた事
少しズレていることも普段よくある事だ
「話を大袈裟に言う人もいるし難しいよね」
話を大袈裟に言う人間が周りを巻き込む事
噂がどんどん尾ひれをつけて話され
本来の物事とは全く違うものになる事
そんな事を今まで多々経験してきた
「でもこの景色は好きだな」
彼は言う
「今回はモネの池を見に来たけど
自分の中で大事なのは綺麗か綺麗じゃないか」
似ていなかったから
そう思いたいのだろうか
私は彼に聞く
「見に来て少しイメージと違ったね」
彼は池を見ながら
鯉を目で追っている
様々な模様の鯉が自由に泳いでいるのだ
そして口を開く
「違ったけどこれはこれでありだね」
彼は何を考えて何を思うのだろう
私には彼が何かを考えているように思えた
「来てよかったと思う?」
彼はケラケラと笑い
「だってとても綺麗だもの」
と言った
彼も非日常を味わいたかったのだろう
「それはよかった」
私はそんな彼と
しばらくそんな景色を見ていた
「そろそろ出ようか」
私と彼は歩き出した
そしてふと気になったことを聞く
「好きなアーティストの生まれた町に帰り寄る?」
彼は言う
「少しだけ寄ろうそちらも楽しそうだ」
帰りは彼の運転だ
私は車に乗ると煙草に火をつける
「帰りは夜になりそうだね」
そう言うと彼は
携帯を見ながらこう返す
「旅行をギリギリまで楽しめるのはいい事だよ」
ポジティブな彼を見て
私は少し安心する
戻れているのだ少しずつ昔の彼に
「やっぱり旅行はいいね」
私が彼に言うと彼は笑う
「楽しいから旅行ですから」
そう言うと彼は
好きなアーティストの生まれた街まで車を運転する
「初めて来たけどいい町だね」
彼は自分が思っていたより
栄えていた事に少し驚いるようだった
「私も少し意外だったかも」
そんな話をしながら
車で町を巡る
「それを知れただけでも収穫だね」
彼はそんな事を言いながら
移り変わる景色を楽しんでいた
「人間性を作るのは場所じゃなくて
周りの人間なのかな」
彼の好きなアーティストは攻撃的な印象が強いが
この町は穏やかな空気が流れているので
そんな気がした
「それはあるんじゃないかな
どれだけお金があっても
品性がない人もいるし」
私と彼はそのような人間をたくさん見てきた
あれは育った場所の問題ではない
周りの人間があれを作ってしまったのだろう
「そろそろ帰ろうか」
彼は満足したのだろう
私も息抜きになる旅行だった
「帰ったら今日は私がなにか作るよ」
彼は笑顔で私を見ながら言う
「珍しいね」
私も笑顔で彼に言う
「楽しかったからね」
そうして私達は旅行を終えたのだった




