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聞こえない声

日常の中で君達は沢山の声を聞く

その声には色がある

その声の色を君達はまだ知らない

昼食を終え

私と彼は買い物をしていた


「珍しい物があるね」


隣を歩く彼は言う

彼は料理に詳しい訳では無いが

珍しい食材について少し興味があるようだ


「なにか欲しいものでもあった?」


私は彼に聞く

今日のご飯は何を作ってくれるのだろう

そんな事を思いながら

質問をしてみたのだ


「使い方が分からないけどこれとか」


彼が持っていたのは

普段料理で使わないような物だった


「確かにこれの使い道って限られてるかも」


そんな会話をしながら

2人で買い物をする

彼は携帯で調べながら

ぼそぼそと呟き

食材を手に取り買い物かごへ入れる


「その地域の人位しか食べないのかな」


彼の言う地域と言うのは

世界の事だろう

日本だと呼び方が違うが

同じ物という事はよくある


「普通に生きていたら食べない物もあるんだろうな」


そんな事を言いながら

珍しい食材を手に取る彼は

楽しそうだった


「さっきのあの子なら分かるかもね」


先程昼食を食べた店の子を思い出す

あの子なら料理に詳しいし

彼の好きな味も分かるだろう


「あの子は好きだからな料理が」


彼もそんな事を言いながら

私の意見に同意していた

余程信頼があるのだろうあの子の料理に


「好きな事ってどんどん掘って考えるよね」


どんな事もそうである

例えば音楽を好きとして

どのようなジャンルが好きか

好きなアーティストが使っている楽器は

どこのメーカーの物か

好きになったアーティストが憧れたバンドは

ルーツはどこなのか

そのようにどんどん掘っていく

それが楽しいという事好きという事なのだ


「行く所まで行けた人を職人っていうのかな」


彼はボーッとしながら

そんなことを言う

私は昔から気になっていた疑問を

彼に聞いてみようと思った


「ラッパーってどこから

職業ラッパーになるんだろうね」


彼はケラケラ笑う

変な事を聞いたと自分でも思う

でも気になっていたのだ


「お金貰えて初めてじゃないかな」


職業と言うからには

誰かからお金を貰えるようになってから

そういう事なのだろう


「じゃあお金を貰えなければ

ラッパーになれないんだね」


彼は歩きながら少し考える

いつもより簡単に応えが出たみたいだ


「自分が将来そうなりたいから

初めからそういう人もいるんじゃないかな」


「自分にプレッシャーをかけてるって事?」


彼はそんな事を考えた事がなかったのだろう

一瞬考えたような間があったが

彼は続けた


「みんな夢を見たいんだよ自分の中で」


私はそんなことを言う彼を見て

彼の過去を思い出していた

彼は昔軽音楽の部活をしていた

音楽をやりたいという彼に彼の両親は

お金にならないから辞めなさいと

厳しく言ったそうだ


「音楽は君の夢だったもんね」


彼に言うと


「昔の事だよ」


素っ気ない返事が返ってきた

彼が見た最後の夢はアーティストだった

最後に一生懸命になれたのが音楽だった


人間はいつから夢を見なくなるのだろう

いつからか社会に出て普通に生きなさいと

そんな事を言われるようになる

周りが夢を壊す事もある

ひと握りの人達はだから敬われるのだ


「声に形があれば便利だと思わない?」


彼が言う


「声に色や形があれば人は迷う事がないと思うんだ」


私には難しい話だな

そんな事を思いながら聞く


「例えば?」


どのような答えが出てくるのか

少し気になったのだ


「好きという言葉に色が付けばどれだけ本気か

頑張れという言葉に色が付けば本当に応援しているか」


彼は続ける


「心配だと言う人が本当に心配してくれているか

それが目に見えれば人は損をしなくて済む」


やはり彼の感性は不思議だ

でもそんな考え方が私は好きなのだ


「嘘がバレるって事になるね」


私は笑う彼も笑った

買い物を済ませ車に向かって歩く


「優しい嘘もあるんだから

そこまで気持ちを覗かないであげて」


私は笑いながらエンジンをかける

彼もなるほどという顔をしながらこう言う


「見えないから綺麗な事も沢山あるもんな」


彼の言葉には変な説得力があった

沢山の経験をした事を知っている私だから

彼の言葉の重さがわかるのだろう


「今日も頼みますよ専属シェフ」


私は彼の隣で

夜ご飯を楽しみにアクセルを踏むのだった

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