【作中補足11】 古代ローマの時計と不定時法
私たちが現代で当たり前のように使っている「1時間は常に60分」という時間のルールは定時法と呼ばれますが、古代ローマの人々はこれとは全く異なる時間感覚の中で生活していました。
それが『不定時法』と呼ばれるものです。
『不定時法』
日の出から日の入りまで(昼間)と、日の入りから日の出まで(夜間)を、それぞれ「12等分」して時間を計る方法です。
このシステムでは、日照時間が長い夏は昼の「1時間」が長く、夜の「1時間」が短くなります。逆に冬は昼の「1時間」が短く、夜の「1時間」が長くなります。
例えば、ローマにおける夏至の昼の1時間は約75分に相当しますが、冬至の昼の1時間は約45分しかありませんでした。
当時の人々にとって昼の第1時は日の出、第6時は正午、第12時は日没を指していました。
また、夜間は軍隊の歩哨の交代時間に由来する『ウィギリア(vigilia)』という区切りも一般的に用いられ、夜を4等分(第1から第4のウィギリア)して呼称していました。
『日時計』
古代ローマにおいて最も一般的に用いられていた時計です。
紀元前263年、第一次ポエニ戦争の際にシチリア島からローマへ戦利品として持ち込まれたのが始まりとされています。
広場や公衆浴場などに設置され、市民は日時計に落ちる影の位置を見て時間を知りました。裕福な貴族の邸宅には個人の日時計が置かれる事もありました。
ただし、太陽が出ている日中しか使えず、曇りの日や夜間は時間が分からないという大きな欠点がありました。
『水時計』
日時計の欠点を補うために用いられたのが水時計です。
容器の底に開けられた小さな穴から、一定の速度で水が滴り落ちる仕組みを利用して時間を計るもので、天候や昼夜を問わず使用できました。
特に裁判所や元老院において、弁論者の「発言時間」を平等に制限するために重宝されました。
後には内部に目盛りと浮きを設けて、季節ごとに異なる1時間の長さ(不定時法)に対応できる精巧な水時計も開発されました。




