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【祝24万PV】転生式異世界武器物語 〜剣闘士に転生して武器に詳しくなるメソッド〜[月水金17:30更新・第二部完結済]  作者: 尾白景
上位闘士編

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05話 匠の働き方改革

「はい! ご主人様、質問です!」

「はい、オドリー」


「なぜ、日没前に仕事を止めるのですか?」


「それは二人にもっと人間らしい休憩や娯楽の時間を取って欲しいと思ったからです」


「私はもっとご主人様のために働きたいです!」


「うーん……その気持ちは嬉しいけど、ちゃんと休憩したほうが仕事の効率も上がるんだよ?」


「じゃあ休憩の時間にお掃除してもいいですか?」


 名案だと言わんばかりのニコニコ顔で提案をしてくるオドリー。この少女はいつからワーカホリックになってしまったんだろう。


 上位闘士への昇格が決まった俺は、この機会に家内奴隷のオドリーと門番ティミドゥスの待遇を改善する事にした。

 “働き方改革”というやつだ。

 そこで、二人に今後の働き方についての説明を始めたわけなのだが……


「ヘリオン様、よろしいでしょうか」

「はい、ティミドゥス君」


「奴隷に休日はありません。休日は訓練所で訓練を受ければよろしいですか?」


「それは休日とは言わないんじゃないかな?」


「では門番をしていてもよろしいでしょうか」


 お前もか、ティミドゥスよ……



 古代ローマは“不定時法”という法で時間が決まっている。

 日の出から日没までを12に分割してAM(午前)とし、日没から日の出までを12に分割してPM(午後)とするというものだ。

 広場には大きな日時計が屹立しており、市民は日時計を目安にして暮らし、生活に区切りをつけている。


 比較的自由を満喫しているクロネリア市民とは違い、奴隷は休憩を挟みつつも、日に10時間ほどの労働が課せられている。

 そして多くの場合、奴隷に休日はない。


 この世界の家族である二人には、少しでもホワイトな労働環境を用意してあげたいと思うのが親心というもの。まして、二人はまだ子供だ。


(それがまさか、労働者側の二人から反対されるとは思いもしなかったなぁ……)


「とりあえず、お茶でも淹れて休憩にしようか」

「ただいまご用意しますね!」


 新たな仕事を得たオドリーは、ルンルンと楽しげにキッチンへ向かう。


 じゃあ、ティミドゥスと近況の話しでも……などと考えて視線を向けた矢先「では!私も門番の仕事に戻ります!」と礼儀正しく一礼して、彼もそそくさと退出してしまった。


 これこれで、かなり寂しいんですけど?

 主従関係というのはなかなかに厄介だ。



 オドリーが淹れてくれた“ドルツォ”(大麦コーヒー)の芳ばしい香りをゆっくりと楽しむ。


 帝国でお茶といえば、一般にはハーブティを指す。

 ハーブティの種類は驚くほど多様だが、残念ながら紅茶と緑茶の茶葉である“チャノキ”やコーヒー豆は存在しない。


 帝国で唯一、コーヒーに似た風味を味わえるのがこの“ドルツォ”、1936年のスペイン戦争時には不足したコーヒーの代用品とされていただけあって、少し薄いがコーヒーを飲んでいる気分にはなれる。

 ノンカフェインなのが物足りないが、うちの可愛い娘のオドリーが淹れてくれたドルツォだ。

 不味いわけがない。


 オドリーと二人、好きなお茶やお菓子について談笑を交わす休日のひととき。

 生活費の心配が解決した事で心から楽しいと思えた。



「ヘリオン様! お客様がいらっしゃいました!」


 玄関口からのティミドゥスの呼びかけで、のんびりとした時間は終わりを告げた。

 それにしても、この家をわざわざ訪ねてくるお客さんなんて心当たりがない。

 ダモンさんやパティアなら、ティミドゥスはわざわざお客様とは言わないだろうから。


「名前は聞いたかい? 知っている人かな」


「あっ! すいません。お客様がいらっしゃるのは初めてだったので聞き忘れました」


 まぁ、職場の新人にはありがちなミスだ。

 そこはひとまず置いておこう。

 失敗を謝れるだけティミドゥスは偉いのだ。


「次からは名前を聞くようにね。不審者でないならお通ししてくれ。その方の格好や年齢は?」


「以後、気をつけます。そうですね、立派な身なりのご老人で…強そうでした。背は低いです!」


 いまいち要領を得ないが、とりあえず危害は無さそうだ。久しぶりの訪問客にオドリーが緊張してソワソワしているのがわかる。先に指示を出しておこう。


「オドリー、お客様にお茶を用意してもらえる? ドルツォじゃなくてハーブティにしよう」


「わか、わかりました! お任せを!」


 つんのめりながらキッチンに走り去って行くオドリー。ちびっこくて愛らしいが、接客となると不安しか感じないな……


 軽く身なりを整えて俺が玄関口にでると、そこにいたのは、ずんぐりとした屈強な体躯の老爺。

 刺繍の施された上品なチュニックの上には“サガム”と呼ばれる鮮烈な赤いマントをつけている。

 サガムは帝国軍人の証だ。

 腰に下げているのはグラディウスではなくスパタ(長剣)か。


 髪は綺麗に撫でつけられて清潔感があった。

 そしてなにより印象的なのが、全身の傷跡……


 え?


「まさか…ゴズウェル?!」


 堂々とした立派な身なりではあるが、この世界で最初にであった命の恩人を見間違えるはずがない。

毎週、月・水・金の週3回17時30分投稿。

次回は5月29日(金曜)です。


お読みいただき、ありがとうございます。

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引き続き、『武器物語』をよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
オドリーちゃんとティミドゥスがワーカーホリックすぎるw でも大好きなヘリオンのためだから、尽くしたくなっちゃうんですよね〜きっと! 可愛すぎる二人にほっこりしました☺️
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