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【祝20万PV】転生式異世界武器物語 〜剣闘士に転生して武器に詳しくなるメソッド〜[月水金17:30更新・第二部完結保証]  作者: 尾白景
裁判と戦争編

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56話 瓦解

 帝国で最も格式高い裁判所『バシリカ・アエミリア』の貴族傍聴席。

 元老院最大派閥の長にして、議員最上位の爵位を持つシディウス・ウルタス伯は今、我を忘れるほど怒りを覚えていた。


「一体なんなのだこれは!」


 数刻前、息を切らして駆け込んできた部下の緊急報告を受けたシディウスは公邸の執務室で裁判を仕切る法務官に鼻薬を効かせた書状をしたためている最中だった。


「シディウス様! リヴィアス議員の裁判が始まっています!」


 上位者に対する最低限の礼儀も知らない闖入者に眉をひそめたシディウスだったが、咄嗟に彼の言葉の意味が理解できず呆然としてしまった。


 なにせ、シディウスの手元にある書きかけの書状こそ、リヴィアスの裁判を担当させる法務官に向けたものなのだから……


「待て! リヴィアスの裁判は余が段取りをつけている最中なのだぞ。そなたは何を言っている?」


「はい。先ほどクラウディ公が取り巻きを連れて裁判所に押しかけまして。

 リヴィアス解放の命令書を発行させる腹づもりのようです!」


「そのような動き……」


 聞いておらぬ等と口にしては沽券に関わる。

 なんとか言葉を飲み込み、代わりにあらん限りの怒りを込めて書状を握りつぶす。


 ここに至るまでシディウスは仇敵クラウディの影響力を元老院から排除する為、多くの時間と労力を割いて準備を整えてきた。


 スパルタクスの乱の初動、元老院が独断で引き起こした兵数万の被害の失策を隠す為、議員達をけしかけてリヴィアスに罪を着せて軟禁へと追い込んだ。


 次いでアウグス帝からの責任追及を逸らす為に、アウグスお気に入りのクラッスス将軍に花を持たせ、スパルタクス軍鎮圧へと誘った。


 さらにクラウディの動きを鈍らせる為、彼の手足である懐刀、クリニアス監察官を議会に呼び出して取り込みを図った。


 計画の中心人物であるアウロは優秀だが土壇場に弱い。それを見越して、事が起きるまでアウロにウェスパシア訓練所で隠遁しているよう命を出した。


 懇切丁寧に育てあげた策謀が花開き、ようやく成果を摘み取ろうというこの時になって……


「これまで一切動きを見せず、このタイミングで全てひっくり返すような暴挙……詐欺師めが!」



 取るものもとりあえず裁判所へ駆けつけてみれば、請求者であるクラウディが法務官に向けて、裁判を起こした理由を陳述しているところであった。


「余の信頼厚い唯一無二の部下であるリヴィアス元老院議員が、アウロ議員からの『今般、世間を騒がしていた反乱軍の直接的な煽動役である疑い』などという世迷い言によって不当に監禁されている事を知り、怒りを禁じ得ない。


 リヴィアス議員の名誉と安全を速やかに回復する為、当方で当事者のアウロ議員、リヴィアス議員、事情を調査したクリニアス監察官を召喚する用意がある。

 法務官は直ちに事実をつまびらかにし、リヴィアス議員解放命令書の発布を願うものである」


 クラウディの堂々とした陳述に、深々と頷く議員達。その中には先日まで彼に媚びへつらい、シディウス派を名乗っていた者も見受けられた。


(余の庇護を受けておきながら容易く掌を返す愚か者共が……いずれは思い知らせてやらなくてはならない。余はクラウディよりも恐ろしいのだとな……)


 心中で恥知らずな尻の軽い議員達に毒付き、睨みつけても溜飲が下がるわけもない。


 シディウスが準備していた裁判の眼目は『戦争の責任者』であり、生贄としてリヴィアスが断罪される段取りになっていた。

 それなのに、クラウディの超法規的措置によって即時開廷された裁判は『不当に監禁された部下の解放要求』という至極単純な求めで始められてしまったのである。


 戦争責任という重層的で複雑な案件では法務官 (プラエトル)が二の足を踏んでいたに違いない。

 クラウディの手の早さと、介入するタイミングの見事さにシディウスはもはや何度目かわからないほど激昂し、叫びたくなった。


「余の手柄をかっさらおうとする人でなしめ!」



 請求者としての要求を法務官に告げるとクラウディは壇上から退席した。

 検察官の指示で、詳しい事情を説明するための証人としてクリニアス監察官が召喚される。


「クリニアス監察官、貴殿は本件について元老院議会で法務的な相談を受けたそうですが、間違いありませんか?」


「はい。間違いありません」


「では監察官として貴殿がリヴィアス議員を拘束するように助言したのですか?」


「いえ、そのような事実はありません。リヴィアス議員に不審な動きが見られるようであれば、帝国十二表法に従い、裁判を起こす事を勧めました」


「その裁判は済んでいるのですか?」


「私の知る限りではまだのようですね」


 スパルタクスの乱が落ち着くまで待てと助言をしたのはクリニアスである。

 そのタイムスケジュールに合わせてシディウスは段取りをしてきたのだが、シディウスに懐柔され、リヴィアスを追及する役目を負った事などまるで忘れてしまったかのような堂々とした態度のクリニアス。


 この裁判は元老院議会でクリニアスが約束した要件ではないのだから当然だと言いたげに微笑み、こちらに目を向けてくる。


 クラウディとクリニアスのしたたかで悪辣な振る舞いに、シディウスは目をきつくつむり、眉間を指で押さえるしかなかった。


「一体なんなのだ……まるで悪夢ではないか……」

毎週、月・水・金の週3回17時30分投稿。

次回は4月22日(水曜)です。


お読みいただき、ありがとうございます。

気に入って頂けましたら評価★★★★★ブクマをお願いいたします。ランキングと作者のモチベーションが上昇いたします。

引き続き、『武器物語』をよろしくお願いいたします。

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