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【祝20万PV】転生式異世界武器物語 〜剣闘士に転生して武器に詳しくなるメソッド〜[月水金17:30更新・第二部完結保証]  作者: 尾白景
裁判と戦争編

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57話 被害者の証言

「つい先ほどクラウディ公の護衛官が被害者を保護いたしました。検察官殿、被害者であるリヴィアス議員が証言を希望しています」


 クリニアスの言葉に傍聴席がどよめいた。

 監禁されていた被害者の証言。物見高い見物人達は、刺激的な展開に好奇心を露わにする。


 法務官と検察官はヒソヒソと言葉短な相談を交わし、クリニアスに問いかけた。


「被害者陳述を行う事ができるならより状況を深く理解できるでしょう。ですが、リヴィアス議員の体調や精神状態は問題ありませんか?」


「付き添いは必要かと存じますが、受け答えは問題ないように思います」


「それでは本件の被害者であるリヴィアス議員の召喚を許可します」



 出廷したリヴィアスの姿に一同は騒然とした。

 元老院議員らしい高価な衣服は切り裂かれ、泥にまみれていたからだ。

 ところどころに散った赤い染みが、決死の脱出劇を想像させる。屈強な大男の肩を借りて現れたリヴィアス議員を聴衆は拍手で迎えた。


 裁判を取り仕切る年長の法務官は、場が落ち着くのを待ってリヴィアスを気遣うように声をかける。


「リヴィアス元老院議員、まずはご無事でなによりでした。だいぶお疲れのようですが証言は可能ですか?」


「はい。法務官殿、お気遣いに感謝いたします」


「では、陳述の前に宣誓をお願いします」


「かしこまりました。私、タルカス・リヴィアス・トピカがこれから述べる証言は真実であり、全てであり、偽りを述べない事を、大神と加護を拝受する古の竜アースに誓います」


 リヴィアスの宣誓が終わり、法務官の合図で検察官が質問を始める。


「本件の請求者であるクラウディ公の訴えによるとリヴィアス議員、貴方はひと月以上に及ぶ長期間、自宅に軟禁され、一切の外出及び外部との連絡を絶たれていた。間違いありませんか?」


「間違いありません」


「命の危険は感じましたか?」


「当初は感じませんでしたが本日、複数の兵士に呼び出されて襲われました」


「なんと!」


「議員同士の殺し合いか、凄いな!」


「こりゃあ、うちの吟遊詩人に話して聞かせないと……」


 傍聴席は蜂の巣をつついたような騒ぎだ。


「静粛に!」


 法務官が大声を上げて注意するが、場は一向に収まる気配がない。

 見かねたリヴィアスがカルギスの肩をポンと叩いてニッコリ微笑んだ。


「法務官殿この場を鎮める為、私を死の罠から救いだしてくれた勇士をご紹介させてください。私に肩を貸してくれているこちらの偉丈夫。彼の名はカルギス!

 兵に取り囲まれ、振り上げられた刃が私の頭上に落ちようとする一瞬の出来事でした。

 彼は瞬きのうちに兵をなぎ倒し、私をここまで送届けてくれたのです。

 優秀で謙虚な彼に最大の感謝と賛辞を贈りたいと存じます」


 カルギスに向けてリヴィアスが頭を垂れ、拍手を贈る。それに合わせて傍聴席がワッと沸き上がり、場内は万雷の拍手で埋め尽くされた。


「laus! カルギス!」(ラウス、賞賛の意)

「viva! カルギス!」(ビバ、万歳の意)


 雲上人の議員から頭を下げられるとは思ってもいなかったのだろう。

 突然の賛辞と場内の盛り上がりに当惑したカルギスは、居心地悪そうに頭をボリボリとかいて照れている。


「静粛に! 公判は水時計が示す通りに時が決められています。カルギス殿の武勇は素晴らしいものですが、いつまでも時をかけるわけにはいきません」


「法務官殿、お時間を取らせて申し訳ありませんでした」


 一通りの盛り上がりを見せて傍聴客も満足したのだろう。ようやく静けさを取り戻し、検察官が口を開いた。


「法務官殿、そして傍聴席の皆さん! 今お聴きいただいたように、本件の被害者であるリヴィアス議員の証言で監禁だけでなく首謀者の殺意が明確となったわけです」


 検察官の鷹揚で余裕のある発言に、貴族傍聴席のシディウス伯は怒りを通り越して、頭の芯が冷え切っていた。


 周囲の目など気にする事なく、この場にいる全員を呪い殺す事ができたらどんなに気持ちいいだろう。

 気が触れたように意味不明な叫び声を上げて立ち去るだけでも、今よりよほど気分が良いに違いない。


 だが、アウロがシディウスの名を出さないという保証がない以上、どれだけ周囲から蔑まれようと見届けなくてはならなかった。


 リヴィアス殺害の指示をシディウスは出していない。アウロは目端が利き、弱者を操作する事に長けているが、その本質は小心で臆病だ。

 計画に乱れが生じ、追い詰められた末、土壇場で事に及んだ上で仕損じた結果だろう。

 何処まで奴は尻拭いをさせるつもりなのか……目をかけてやっていたが見込み違いだったかもしれぬ。


 場合によっては、たとえ多少の混乱を招こうともこの場で口を塞ぐ必要がある。

 当然、そのための準備も怠ってはいない。

 シディウスは後ろに控えた自らの護衛を務める男に目線を送る。


「クロネリアの歴史とは暗殺の歴史よ。そして歴史とは常に権力者の私物……そうであろう? ベルセリよ」

毎週、月・水・金の週3回17時30分投稿。

次回は4月24日(金曜)です。


お読みいただき、ありがとうございます。

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引き続き、『武器物語』をよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
「歴史とは常に権力者の私物」……うーぬぬ思わず唸る見事な言葉だ。 ナポレオンが似たような事を言ったらしいですが、自分もいつかこんな台詞を出してみたいですね。
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