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【祝20万PV】転生式異世界武器物語 〜剣闘士に転生して武器に詳しくなるメソッド〜[月水金17:30更新・第二部完結保証]  作者: 尾白景
裁判と戦争編

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54話 リヴィアス

 タルカス・リヴィアス・トピカ元老院議員。

 皇帝に次ぐクロネリア帝国第2位の権力者クラウディ公の腹心。


 リヴィアスの一族トピカ家は代々、徴税官を担う下級貴族『騎士』の家系だったが、宮中を混乱の渦に陥れた『マクシミア虐殺事件』での功績からクラウディ公の後ろ盾を得て、元老院議員の役に就いた。


「あれからもう8年か……ゴズウェルさんも未だ、ラウラ殿を救い出せずにいる。まだまだ仕事は山積みだというのに…」


 己の裁判に無駄な時間を割いている暇などないのだが、元老院議員という立場だからこそ得られる情報や行動する為の潤沢な資金は必要不可欠だ。


「こういう時こそアルティウム君に力を貸してもらえると助かるのだが彼の後ろ盾はおそらく、あの御方に違いない。それでは公の影響力も及ばぬ……

 ここはやはり、期待の新人ヘリオン君の活躍に期待させてもらうしかないだろうね」


 軟禁されている執務室の窓から中庭を見やると、なにやら兵達が騒がしくしている。

 秘書官のティティオを通じて、クリニアスやクアレスから密かに届けられる報告によれば、裁判まではもう少し時間がかかるはずだが……


「アウロが追い詰められた結果、面倒をはぶいて私の口を閉じさせる事にしたかな?」


 邸宅を守らせていた番兵や側仕え達はリヴィアスの世話をするための最低限を除いて、屋敷から追い出されてしまった。

 荒事で最も頼りになるクアレスも側にはいない。

 存外、悪い手ではないのかもしれぬ…などと他人事のように独りごちた。


 リヴィアスは8年前まで騎士であった。

 クロネリア帝国における騎士職とは、40万セステ(1億2000万円相当)以上の財産を保有している事を条件とした下級貴族に与えられる爵位であり、地方の徴税官を主たる任務としている。

 戦場においては馬を所有している為に騎兵の役目を果たす事が多く、文武両道が求められる。


 かくいうリヴィアスも剣を学び、振るった経験はあるが、それは8年も前の話。

 近接戦を仕掛けるくらいならば、加護を受けているアースの魔法で毒を撒き散らすほうがよほど生存率が高いだろう。


 武装した兵達の騒々しい足音を聞き、緊急時の為に魔法による脱出方法を素早く思案する。


「まぁ、まずは議員らしく言葉を交わそうじゃないか」



「リヴィアス議員、元老院からの呼び出しです。中庭までご同行いただきます」


 言葉は丁寧だが無感情に淡々とリヴィアスに指示を告げる兵は、頑丈そうなロリカ・セグメンタタ(板札鎧)を着込み、兜は頬当のついた実戦式のカッシウス(金属兜)、腰にグラディウス(直剣)を帯び、ピルム(投擲槍)まで携えた完全武装。


 儀礼的な門番の武器ハスタ(長槍)ではなくピルムを持っている事からも、殺意の高さが伺える。

 戦場における重装歩兵(ホプロマクス)並の警戒した様子にリヴィアスは呆れた。


(元老院からの呼び出しと言うならば、伝令役のふりくらいできぬものか。まして中庭に呼び出しなどあるわけないだろうに……ユーモアの欠片も持たぬ相手らしい)


「ところで君、なぜそんなに物々しい格好をしているのだ?私を警護するにしても些か過剰ではないかね?」


「役目ですので」

「私の警護という任に間違いはないかな?」

「……お早くお願いします」


 にべもない。

 この手の連中が相手では中庭に着いた途端、バッサリやられてしまいそうだ。


(この状況を公がご存じないはずがない。何かしら起こしてくださるはずだ。その時に備えるとしよう)



 先導役に一人、リヴィアスを挟むようにして後ろに一人の兵が付いて黙々と中庭へ進む。


 中庭にはさらに二人の重装兵が待機していた。

 おまけに一人はリヴィアスよりも頭一つ大きい巨漢の男。

 ふと、巨漢が剣の代わりに腰に下げている武器に目が留まる。

『アペラティーキ』と呼ばれる鈍器(メイス)だ。


(鈍器とはまた珍しい。野蛮で実戦的な武器を好むのは戦争経験者か?

 そういえば、以前ヘリオン君もフレイルを振り回していたな……)


 帝国やパルテナスにおいて、原始的で無骨な鈍器を扱う者は『野蛮人(バルバロイ)』と呼ばれ、蔑みの対象とされている。

 珍しい武器を持つ巨漢に興味を持ったリヴィアスはチラと顔を向けて、兜の奥に光る瞳と視線を合わせた。


「リヴィアス殿、言い残す言葉があればお伺いしましょう」


 コホンと咳払いを一つして先導役の兵が話しかけてくる。この男は、本当に風情も何もあったものではない。


 リヴィアスを四人の重装兵が取り囲み、前方の先導役がグラディウスを抜き放つと、右側の巨漢がアペラティーキを持って構えた。

 左と後ろからもスラリと剣を抜く音が聞こえてくる。


「ならば、死出の手向けに一言だけお願いしようか…vincire(ヴィンキーレ)!」


 リヴィアスの左手から緑色の光が溢れ落ちると、左に立つ兵の腕に蛇のように巻き付く。

 一瞬、パッと強い光を散らすと緑色の残光が植物の蔦となって、兵の腕から顔までを拘束する。


「なにをっ!ぬぐぐぐ…」


 兵が瞠目し、もがいている間にも蔦は成長を続けて見る間に全身をがんじがらめにしてしまった。

 終いには鋭い棘まで生えだして兵は血まみれだ。


「ふむ、ここまで魔力を込めたつもりはなかったのだが…アース様はかなりお怒りのようだ」


「貴様!俺の部下になにを!」


 リヴィアスの正面でグラディウスを振り上げた先導役の兵が、怒りのこもった叫びと共にグラディウスを振り下ろす。


 ボゴッ!


 刹那、リヴィアスの右側にいた巨漢の兵が先導役のこめかみに向けて、兜がひしゃげる程の膂力(りょりょく)を込めてアペラティーキを叩きつけた。

毎週、月・水・金の週3回17時30分投稿。

次回は4月17日(金曜)です。


お読みいただき、ありがとうございます。

気に入って頂けましたら評価★★★★★ブクマをお願いいたします。ランキングと作者のモチベーションが上昇いたします。

引き続き、『武器物語』をよろしくお願いいたします。

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