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終わりと始まりは突然に  作者: 水無月 真珠
ガラク皇国編
181/182

元凶

『んー? だってボクは、別の世界の扉を開く装置をいくつか作ったんだもん。まあ成功してるか、疑似人格のボクじゃわからないんだけど』


「……は?」


 一瞬何を言っているかわからなかった。

 でも、すぐに自分でも吃驚するぐらいの怒りが噴き上がった。


「お前がっ!!!!!!!!!」


 剣を鞘から抜き放ち、ギベオンを映し出している機械を蹴倒して叫ぶ。


「私をこの世界に連れて来たのかっ!!!!!!!!!!」


 ダメージが通るはずもない立体映像に向かって、何度も何度も思い切り剣を突き立てる。


『わっ!? わっ!? わっ!?』


 まるで剣で突き刺されるのを恐れているように、ギベオンは小さい悲鳴を上げ剣を躱そうとする。


「お前のせいで私は高校に入学すらできなかった! 何度も死にかけた! 人を殺さなくちゃいけなくなった! お父さんともお母さんとも、友達とも会えなくなった! 私の人生をよくもめちゃくちゃにしたな!!!!!!!」


「めのうさん! めのうさんっ! 落ち着いてくださいっ!」


 さくやさんに後ろから羽交い絞めにされて、機械に馬乗りになっている私を引き剥がそうとする。


「はっ……はっ……はっ……。さくやさん放して! こいつが! こいつのせいで私はこんな目にっ!」


「めのうさん! この見えているものは幻なんですよね!? そんな事をしても、無駄ではないのですか!?」


「――っ!!!!」


 この機械の事すら碌に分かっていないだろうさくやさんに図星を突かれてしまい、私は何も言い返すことが出来なかった。


「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」


 それでも、引き剥がされてしまって行き場のない怒りが私を襲い、剣で一番近くの長机を叩き斬り、全力で蹴り飛ばした。


 ウィーンという音を立てて、蹴り飛ばしたギベオンを映し出している機械が自立を始めた。

 それをさくやさんが手助けするように抱え上げる。


『さくやありがとう』


「いえ……。あの、めのうさんは一体何者なんですか?」


『やっぱり、ボクが作った装置で別の世界からやって来た女の子みたいね』


「別の世界から……?」


『うん。メノウ、メノウ?』


「なに!」


 名前を呼ばれ、私は怒り任せに振り向いて睨みつける。


『確かに装置を作ったのはボクで間違いないと思う。でも、君を選んだのはボクじゃないわよ?』


「……えっ!? どういう……事……?」


『別の世界って言ってもね? ボクもどこの位置にどんな世界があるかっていうのはわからなかったの』


「じゃあ、どうして私が選ばれたの!?」


『君が目を覚ました時に、近くに誰かいなかった?』


「……リステルとルーリがいたわ」


『他に誰もいなかった?』


「……いなかった」


 やめて。


 それ以上、聞きたくない。


『じゃあメノウ。君をこの世界に連れて来たのは、そのリステルとルーリって子の二人よ』


「……」


 カランカラン。

 手から剣がすり抜けて落ち、私は膝をついた。


「……嘘。嘘よ! そんな事あるはずが!!!!」


『残念ながら、間違いないわ。その二人が君を呼んだ。正確には、二人の望みを満たせるような人が選ばれた』


「どうして、そう思うの……?」


『ボクの装置は不十分で、世界と世界を繋ぐ力はあっても、この世界からどの世界を繋ぐかっていう選択ができなかった。で、人の強い願望を鍵にしてみたの。まあそれでも実験は失敗しまくったんだけどさ?』


「……」


『あと、勘違いして欲しくないのは、その二人がわかっててメノウをこの世界に呼んだんじゃないだろうって事』


「……え?」


『ボクの装置は心の奥底の願望を勝手に読み取って扉を開いたの。だから多分、自分達がメノウを呼んだなんて思ってもいないはずよ?』


「そう……なんだ……」


 そう聞いても、怒りは収まりきらなかった。

 今でもふつふつと煮えたぎって、何もかもを壊したくなる程には激怒していると思う。

 ただ、その怒りの向ける場所がわからなくなった。


 そして、ほんの、ほんの少しだけ落ち着いたときに、ギベオンと言う名前をどこで聞いたのか思い出した。



「キロの森の遺跡の事? ギベオンって言う子が作った、(ゲート)と呼ばれる建築物の一つね。よく似た物がどれだけあるのかはわからないけれど、オルケストゥーラ王国にもあるわ。それがさっき話した異世界研究の対象になっているの」


「いったい何のつもりでその……(ゲート)? を作ったんでしょう?」


「私はギベオンちゃんじゃないから、何を考えていたとかはわからないわ……。たぶん何がしかの力を得ようと考えていたんじゃないかしら? まあ実験に失敗したのか、ある日忽然と姿を消しちゃったのだけれど。残されたのは他の誰にも制御不可能な建造物ばかり。それが今、喪失文明期の遺跡の一つとして各地に残っているわけ」


 こんな話を精霊の棲み処で、水の大精霊ウンディーネとルーリが話していた。



「……水の大精霊ウンディーネがあなたの名前を出していた。会ったことあるんだよね?」


『あるある! え、あの子水の大精霊なんて呼ばれるまでになってるんだ? そっかー』


「ある日忽然と姿を消したって言ってたけど」


 怒りに任せて装置を壊してやろうかとも思ってしまうのだけれど、色々な真実が聞けるかもしれないと思い、怒りを押し殺してギベオンから話を聞く。


『あ、そうなんだ? まあわかってたけどボク本人の計画は上手く行ったみたいね。うむうむ流石ボク!』


「えっと、その……ギベオンさん。あなたはどうしてその別の世界? を繋げる装置なんて作ったんですか?」


『お、知りたい? えっとね。ボクはその別の世界って言うのに興味は全くなかったの。ボクは、狭間の世界の扉を開きたかったんだよね』


「狭間の……世界?」


『メノウは見たんじゃない? 七色の光の世界』


「……ちょっとだけ。すぐに気を失ったみたいだから。足元に現れた扉が開いて落ちた先が七色の光しかない場所だったと思う」


『そう! そこっ!』


「あの不気味な空間は何だったの?」


『あの空間はね? 純粋なマナだけが存在する世界だと私は思ってる。あそこを通った、もしくは七色の光を浴びた者は大いなる力が得られるの。メノウも何か得られたんじゃない?』


「……魔法が使えるようになったわ。それと、言語能力。異世界でも私が知っている日本語に聞こえるし、日本語を話していても通じるわ」


『あ、言語能力に関しては、ボクの装置のおかげよ?』


「……へ?」


『もし誰かがこの世界に来たとして、言葉が通じなかったら可哀そうかも? って思って。まあ会話できるように無理やりに装置を作ったから、魂が不安定になっちゃうのよねー』


 ギベオンが話す内容を聞いていると、感情がぐちゃぐちゃになっていく。

 怒っている所ではなくなってきたのだ。


 次々に明かさせることに、私は眩暈が起こりそうだった。


『そっかー。メノウは魔法が使えなかったのか―。それはメノウ自身に才能がなかったから? それとも、メノウの世界には魔法が存在しなかったから?』


「魔法なんて存在していない世界から来たわ」


 こいつは、このギベオンって人間は、あれだけ私が怒っていたのに謝る事もしなければ、申し訳ないというそぶりも見せない。


 ただただ起こったことの確認を、私としているだけだ。


「それでギベオンさんは、その狭間の世界の扉を開いてどうしたかったんですか?」


 さくやさんも何とか必死に話に食らいつこうと、質問をしている。


『ボクと、この世界を変えたかったんだ』


「世界を……変える?」


『そう! ボクが生きていた時代にも、マナっていうのは存在してたんだ。でも、ほんの少ししかなかった。もちろん、魔法使いって呼ばれる人もいたけど、凄く少なかった。実はね? 魔物って呼ばれる存在もいたんだけど、極々希少だったんだ』


「魔物が……希少?」


 魔物なんて、そこ辺の森に入れば嫌でも出会ってしまう程、数は多い。


『ボクはね? 世界を溢れるほどのマナで満たして、この世界を大きく変えたかったんだ!』


 自分の願望を話しているうちに興奮してしまったのか、ギベオンの瞳は怪しい光を帯びだした。


 この狂った目とそっくりな目をした人物を私は知っている。


 アルバスティア。

 八千年近くを生きている、喪失文明期からの生き残り。

 自分の望むままを行い、その過程や結果で起きる迷惑や被害なんて全く気にも留めない狂人。

 そいつと同じ目をしている。


『今この世界は、ボクが生きていた頃の十倍から二十倍のマナが辺り一面を満たしてる。ボクの実験は成功したはずだよ』


「あなたは何をしたの?」


『簡単よ! 狭間の扉を開いて、マナをこの世界に充填したのよ! その代わり、マナが一気に増えたせいで文明は滅んだはずだけど! 人間も獣も、膨大なマナに曝されると呆気なく壊れるのよ。でも生き物ってさ、意外としぶといのも知ってたし、まあ完全に人間が滅んでも、それはそれで仕方ないって感じ? まあ想定よりマナの充填度が低いみたいだから、開いた扉が維持できなかったのか、壊されたのか。まあ維持できたかったんでしょうねー?』


 ギベオンの話を信じるのなら、喪失文明期が滅んだ理由がこのギベオンの実験のせいってことだ。


「ギベオンさんご本人は、その時に亡くなったってことですか?」


『んにゃ、たぶん今も生きてると思うよ?』


「……えっ!?」


『あくまで、作られたボクの予想でしかないんだけどね。狭間の世界に飛び込んで、そこで生きてるはずよ』


「どういうこと?」


『ボクの本当の目的は……。まあ君達には関係ないから話すけど、自分の思う通りの世界を作りたかったんだ』


「……世界? 何を言ってるの?」


『ああ、世界って言っても、人が集まった集団とか、国って事じゃないわよ? 海を作り、大陸を作り、生物すらも生み出せる。ボクはそんな存在になりたかったのよ』


 私の世界では、人はそれを神と呼ぶ。


『で、この世界をまずは壊して、色々試してみるつもりだったんだろうね? でも、思ったよりマナは世界に充填されなかったし、たぶんボクもそれほどの力を得られなかった。だから、さらなる力を得るために、狭間の世界に飛び込んだはずよ。で、扉が耐えられなかったか、誰かに壊されたのかはわからないけれど扉は壊れて、ボクの本体は狭間の世界に閉じ込められているってわけ』


「じゃあ、もう出てくることは無いのね?」


 どうやら関わる事がなさそうなので、少しほっとする。


『と、思うでしょう? そこで、メノウ。あなたよ!』


「……私?」


『そう! この世界は天界と魔界っていう異界との繋がりはあったけど、その扉は狭間の世界を経由することは無かった。まあその扉を作ったのもボクなんだけど。でも、メノウがこちらに来るときには、狭間の世界を経由してこの世界に来た』


「何が言いたいの?」


『繋がりが出来たって事! この世界とメノウの世界に、メノウとリステルとルーリっていう明確な繋がり、縁が出来たの! 次はもっと簡単に、あなたの世界とこの世界を繋げられるわ!』


「繋げてどうするの?」


『……あれ!? 帰りたいんじゃないの? さっき凄く怒ってる時に言ってたことを考えたら、帰りたいんだろうなーって思ったんだけど』


「え!? 私、帰れるの!?」


『うん! まあ何処かに現存している装置が残っていればだけどねー』


「えっと、オルケストゥーラ王国にあなたの作った遺跡が残っていて、そこが異世界研究の対象になってるってウンディーネに教えてもらったわ。じゃあ私は帰れるのね!?」


『まあ全く研究は進んでないだろうけどねー。メノウ程の魔力を持ってないと、装置は反応しないから。ここもそうなんだよ? だから今まで誰も入れなかったし、ボクっていう疑似人格プログラムも作動しなかった。うん、メノウならその場所にたどり着けさえすれば、元の世界に戻れると思うよ。あーそうだ。だったらボクを連れて行けばいいわ!』


「……え? この装置ごと持って行けばいいの?」


 正直、このギベオンとは一緒にいたくない。

 楽しそうに笑顔で話すギベオンを見ていると、頭が危険だと警鐘を鳴らしている。


『ううん。ボクはここの研究室の管理を任されてるし、いろいろセンサーの類と繋がっているから無理。後でディスクを渡すよ。ボクのデータを保存したやつ。それをその王国にある装置の何処かに挿入すれば、簡単に装置の操作ができるようになるよ』


「そっか。私、帰れるんだ……」


 ……。

 怒り、悲しみ、驚愕、安堵。

 ありとあらゆる感情が一度に押し寄せてきて、笑っていいやら泣いていいやらさっぱりわからなかった。


 ふと、セレエスタで再開した時にアルバスティアが話していたことを思い出した。



「八千四百五十六年前に、人間同士の争いによって滅びた文明なのです」



 でも、さっきの話を聞いた限りだと、文明が滅んだ原因はギベオンの実験が原因だ。


「ねえギベオン。あなたが存在していた時代が八千年前に、人との争いで滅んだって言ってる子がいたんだけど、それは間違ってるって事なの?」


『え、そんな事を言う子がいるんだ? って言うか、ボクが生きていた時代から八千年経ってるんだ。……あー、文明を滅ぼしたのは間違いなくボクの装置で間違いないよ。ただ、生き残った少数で潰し合った結果、完全に滅びたって事だと思う』


「争いが絶えなかった世界だったって言っていたわ」


『……ほーん? 世界だったって事は、その子は八千年前からの生き残りか。そうだねー各国で戦争ばっかりしてたねー。研究資金を調達するのに苦労したわよー。人間の上位種を作るとかって適当なことを言って、お偉いさん達からお金を毟り取ったのよね! そしたらさ、ボクの言ったことを信じ込んじゃった連中があちこちに現れて、人間の上位種を作るって実験始めちゃってさ。馬鹿だよねー、ボクが適当に理屈っぽい事をコネて言った嘘なのに。ね、その子の特徴教えてくれない?』


「えっと、真っ白な髪に……」


『違う違う、見た目じゃなくて……』


「体の一部に刻印(エングレイブ)魔石(コア)っていう魔石を埋め込まれていたわ」


『やっぱり刻印(エングレイブ)魔石(コア)か。スペリオルの連中の失敗作ね。いや、連中にしたらそれでも成功なのかな? 人間の上位種なんて作れるわけないのにねー。人体実験で大量に人間と亜人を殺した馬鹿な殺戮集団。そっかー、運よく生き残りがいたんだー』


「あなたがそれを言うのですか!? 文明を滅ぼす切っ掛けを作ったのがあなたでしょう? どれだけの人がそれで亡くなったのですか!?」


 さくやさんが顔を青くして、ギベオンに言う。


『ボクとスペリオルを一緒にしないでよ。ボクはできることを確信していたから研究をしていたんだよ。文明を滅ぼしたのは、ほら、あれだよ。綺麗なキッチンじゃないとお料理できないでしょ? ぐちゃぐちゃなところでお料理ってしたくないし。だから綺麗にしようとしただけなんだから。ボクの適当に話したことを碌に検証もしないで実験を始める無能達と一緒にしないでね』


「人が大勢死ぬかもしれないと考えなかったんですか!?」


『さくやはごみを捨てる時に、一回一回このゴミ可哀そうって思いを馳せて捨てるの?』


「……」


 さくやさんは絶句して何も言えず、ただ信じられないといった表情を浮かべてギベオンを見た。


『さくやの言いたい事は一応わかるけどね。ボクにとってはどうでもいいことなの』


「魔力の完全物質化に関しては? それをできる人間を作りたかったようだけど」


『あーだから、それがボクが話したでまかせなのよ。そもそも、完全物質化、あれは生物が宿す魔力の性質上、無理なの。存在していられる時間を延ばすことはできるけどね。実際、魔力で生み出したものを長時間維持できる才能を持った人はいたしね。その才能を持った人は、その内マナに溶けて霧散しちゃうけど』


 確かアルバスティアの双子の姉、セリスティアが恐らくその才能を持っていたのだろう。

 そしてアルバスティアの目の前で、マナに溶けて消滅した。


 恐らくこれは、アルバスティアも知らない真実なんだろう。


『でも、メノウはできるよね? 魔力で生み出したものの完全物質化。それが、狭間の世界に触れた者の証だもの』


「……そうね。できるわね」


『どこまでできるの?』


「どこまでって、私が出来るのは水とか岩とか魔法で出したとしても、霧散せずにずっとそのまま残ってるってぐらいしか……」


 何となく、全部を話さない方が良い気がした。


『そっかー。狭間の世界をただ通るだけじゃダメなのかなー? メノウもボクの望んだ通りの力があると思ったんだけどなー』


「世界を創造するなんて、私は興味ないわ」


『まあそんなもんだよね。色々と良い情報が手に入ったわ、ありがとうねメノウ』


「……人の人生をめちゃくちゃにしておいて、せめて謝るとかしないの?」


『話をしてて、するような人間だと思った?』


 何とも楽しそうに笑って話すギベオン。


「思ってない」


 その姿にイラつきはするが、何だかもう諦めがついていた。


『あと、ここにいるボクはギベオンに似せて作った疑似人格プログラムよ? 偽物に謝られて、あなたのその怒りは収まるの?』


「……そうね」


 話しがようやく一区切りついた。

 それと同時に、私の体は疲れがどっと溢れ出して酷く重くなる。


「めのうさん、少し休まれては? 顔色が……」


 さくやさんが私の顔を心配そうに覗いていた。


『じゃあ休憩室に案内するよ』


 そう言って案内された場所は、ホテルの一室を思わせるような作りになっていた。


『……えっと。寝具寝具っと』


 ギベオンはクローゼットの前に立ち、


『ボクはベッドメイキングできないから、二人で頑張ってやってね?』


「わかりました。ギベオンさんは……お休みになられないんですか?」


『ボクはまだ起きてる……うーん、起動してるって言った方が正しいのかな? メノウから聞いたことをまとめてデータ化して、渡すディスクも作らなくちゃね。二人はだいぶ疲れてるみたいだから、ゆっくり休むんだよ』


 私達に手を振って、ギベオンは部屋から出て行った。


 寝具を取りだし二人で寝床を整えて、横になる。


「……明かりってついたままなんでしょうか?」


 煌々と部屋が明かりで照らされていて、流石に眩しい。


 大体こういうのは枕元にスイッチがあるはずと思いベッドを探す。


 つまみの様なものがあったのでそれをくるりと回すと、案の定光の強さが調整できた。


「……めのうさんは本当に別の世界から来たんですね。私、それがどういったものかも全く分かりませんでした」


「……別の世界から来た人間は、気味が悪かったりしますか?」


「まさか! めのうさんがどんな世界から来られたとしても、私を守ってくれた優しい人だと、ちゃんとわかっていますよ」


「……ありがとうございます」


「こちらこそ、皆さんと出会えたこと深く感謝しています。ゆっくり休んでまた明日お話ししましょう」


「あ、明かりはどれくらいがいいですか?」


「この、橙色っぽくなる色が良いです。真っ暗は流石に怖いですから」


「わかりました。では、おやすみなさい」


 明かりをさくやさんが言った明るさに調節して、布団に潜り込む。



 リステルとルーリが、私をこの世界に呼んだ原因だった。


 ギベオンが言っていた、二人の心の奥底に願っていた事。


 私は二人が何を望んでいたのか、すぐに見当が付いた。


 二人共、私に会う以前は孤独だった。


 リステルはハルモニカ王国の王族だったけれど、女として生まれたせいで政治の駒としてしか見られず、あまつさえ父親と大叔父の計画で、リステルを有力な貴族に犯させようとした。

 母であるクオーラさんの助けもあり、彼女はリステルという偽名を名乗り一人首都から逃げ出し、冒険者となり孤独に旅をしていた。


 ルーリは、事故で最愛の両親を亡くしている。

 それでも強く生きようとしたルーリだったけれど、彼女の才能を疎んだ人間達に嫌がらせを続けられ、目立たないように孤独に生きていた。


 そんな二人がフルールの街で偶然出会い、ルーリが出した護衛依頼をリステルが受け、キロの森の遺跡の調査へ出かけた。


 二人は思っていたはずだ。


『共に過ごせる誰かと出会いたい』と。


 そして、私が呼び出されてしまった。


 不思議と、怒りは湧いてこなかった。


 いや、不思議な訳があるか。


 怒りなんて、あの二人に起ころうはずもない。


 私は、リステルとルーリが大好きだ。


 二人だけじゃない。


 ハルルもサフィーアも大好きだ。


 このことは、私だけの心にしまっておこう。


 話してしまえばあの二人は、知らずにやってしまったこととはいえ、絶対に自分を許せなくなるから。


 早く、みんなに会いたいな……。



 ……私は人を殺した。

 これで、二人目だ。


 ルフェナは、どうしようもなかったと、そう思っている。

 死を望んだルフェナを殺すことで彼女を解放できたと、そう信じている。


 でも、二人目は……。


 助けられたかもしれない人を殺した。

 それも、敵だと言うそれだけの理由で……。


 私は……。


 元の世界に戻る資格はあるのだろうか……?


 人の血で汚れた私は、あの平和な世界にいていいのだろうか?


 きっと私は、これから敵対する多くの人を殺さなくちゃいけなくなる。


 私は。


 私は……。


 出ることのない答えを考えているうちに、私は眠りに落ちるのだった。

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