再び皇都へ
瑪瑙お姉ちゃんが、全速力で崖から落ちかけているさくやの元へと走っていく。
でも、その位置からじゃ間に合わない……。
「瑪瑙! くっ! 邪魔!」
よそ見をしたリステルお姉ちゃんに容赦なく黒ずくめが剣を振り下ろすが、あっさりと躱して首を斬り裂き蹴り飛ばし、瑪瑙お姉ちゃんを追い掛ける。
だけどさくやが崖から落ちて、瑪瑙お姉ちゃんはスピードを落とすことなく、崖から落ちたさくやを追い掛けて飛び降りてしまった。
「さくや様ーーーーーーーーーーーっ!!!!」
「瑪瑙ーーーーーーっ! そんなっ! 嘘! 瑪瑙っ! 瑪瑙っ!!! いやあああああああっ!!!!」
瑪瑙お姉ちゃんを止め損ねたリステルお姉ちゃんとしらゆきが、崖下に向かって叫んでいる。
ハルルの方にも黒ずくめの集団が襲い掛かって来たので、一人、黒ずくめの首を大鎌で刎ねる。
首を刎ね飛ばされた仲間を見て怯むことは無く、大鎌を振った後の隙をしっかりと狙ってきた。
それを足の軸を変えることで躱して飛びかかり、片手で喉を掴んで握り潰して引き千切った。
ここまでしてようやくハルルから距離を取ったので、
「ファイアランス」
炎の槍を複数出現させ、二つ撃ち放つ。
炎の槍の一つは黒ずくめの顔面を貫き、もう一つは別の黒ずくめの腹を貫いた。
すぐさま焼け焦げ、絶命する。
黒ずくめ達はさらにハルルから距離を取り攻めあぐねているのを逆手にとって、ハルルはまだ崖下を見下ろしている二人の元へ駆け寄った。
「お姉ちゃん、前を向いて! まだ敵がいる!」
「ハ、ハルル……。瑪瑙が、瑪瑙が飛び降りちゃった……。あっあああ……」
「瑪瑙お姉ちゃんならきっと大丈夫だから! 今は前を見て!」
ハルルだって瑪瑙姉ちゃんの事は心配だ。
だけど瑪瑙お姉ちゃんは以前自分で空高くまで飛び上がり、無事に着地すると言う事をやってのけている。
この下は滝つぼになっていて、瑪瑙お姉ちゃんならなんとかできるはず。
何も考えが無くて、たださくやを追い掛けて崖を飛び降りたのではない……はず……。
ジワリと涙が浮かび上がってくる。
だけど、唇を噛んで堪えた。
瑪瑙お姉ちゃんは里の襲撃が始まってからずっと周りが見えていなかった。
人が無残に殺される瞬間を見たんだ。
仕方のない事ではある。
瑪瑙姉ちゃんの魔法なら崖を飛び降りずに、さくやを助けられたんじゃないかとも思う。
普段の落ち着いた瑪瑙お姉ちゃんだったらできたはずだ。
それが出来ないほど、お姉ちゃんは追い詰められていた。
ルーリお姉ちゃんも、口を押さえてへたり込んでいた。
「ハルルよ、この人数凌げるか?」
そっとハルルに近寄ってくるサフィーア。
流石に年長者なだけあって、この事態にも落ち着いていた。
「少し難しい。前衛三人が行動不能。ルーリお姉ちゃんも今はあてにならない。サフィーアとハルルだけだから。相手、結構強い」
「そうじゃのう……」
「来るっ」
どうするか考える暇もなく、黒ずくめの集団がこちらに突っ込んでくる。
「エスカッシャン・サファイア!」
サフィーアが宝石魔法を発動し、青く煌めく結界で動けなくなったお姉ちゃん達を守る。
ハルルも出現させていた残りの炎の槍を撃ち放ち、攻撃に転じるけど……。
黒ずくめの集団はハルル達には目もくれず、崖から次々と飛び降りてしまった。
「なっ!?」
普通に飛び降りただけではこの高さの崖は、いくら下が川になっていたとしても即死する高さだ。
それでも全員が飛び降りた。
そうまでしてさくやを捕まえたいのか、生死を確認したいのか。
その執念のようなものに、ハルルも少し恐怖を感じるのだった。
一度だけ大きく息を吸ってはく。
「しらゆきよ、崖の下に続く道はあるのか?」
「無いんです! ここからだと山頂へ一度登って下るしか……」
「そうか。なら妾達は逃げている里の者達を追うとしよう」
「さ、さくや様はどうするおつもりですか……? それにめのうさんも落ちたんですよ!?」
「そうじゃな」
「そうじゃなって……。サフィーアさん酷くないですか!?」
ともえがサフィーアに詰め寄る。
「サフィーア……」
リステルお姉ちゃんもルーリお姉ちゃんも、さらっと言ったサフィーアを信じられないと言った顔で見ていた。
「さくや様を守ると言ったじゃないですか! 何とかならないんですか! 皆さん強力な魔法を使えるじゃないですか!」
「できるなら、すぐにでも追っておるよ。残念じゃが、妾達は瑪瑙程の魔法は使えんでな。のうリステル、ルーリ?」
「――っ」
サフィーアの視線に、悔しそうに下を向くお姉ちゃん達。
「そんな、無責任な! ――ハルルちゃん!?」
それでも食って掛かってくるともえに、ハルルは近づいて胸倉を掴み崖の際まで引きずっていく。
「そこまで言うのなら、お前も黒ずくめ達みたいに飛び降りろ。できないならハルルが落としてやる」
「そっそんな!?」
「ハルルちゃんやめて! ともえさんを放してあげて!」
「お前達はその程度?」
「その……程度……?」
「黒ずくめ達は、自分の命を顧みずさくやを追った。で、お前達は? 心配する言葉は吐く癖に、飛び降りようとはしないの?」
掴んだともえの襟をぐいっと近づける。
「――っ!!!」
「あなただって、めのうさんを追い掛けてないじゃない!」
ともえはハルルを睨みつける。
「ん。瑪瑙お姉ちゃんは生きてるって信じてるから。さくやもちゃんと助けて、瑪瑙お姉ちゃんは逃げ切るよ。お前達と一緒にするな。そもそも、ハルル達を巻き込んだお前が――」
怒りで胸倉を掴む手に力が入りそうになった瞬間、サフィーアがハルルの肩に手を置き諫めた。
「ハルル、その辺にしておくのじゃ。リステル、ルーリよ。瑪瑙の事を好きだと、愛していると言うのなら、少しは信じてやるのじゃ。お前さん達は過保護じゃ。今までの旅もそうじゃ。わざと対人戦になりそうな依頼を避けるようにしておったじゃろう?」
「それは……。……サフィーアもハルルも心配しているのよ……ね?」
震えた声でルーリお姉ちゃんは言う。
「ルーリよ、流石に妾も怒るぞ?」
「ごめんなさいっ」
「ハルルは、飛び降りて瑪瑙を助けに行かない私達を軽蔑する?」
リステルお姉ちゃんがずっと下を向いたまま聞いてくる。
「ううん。もし飛び降りようとしてたらハルルは全力で止めたよ? リステルお姉ちゃんならなんとかなりそうな気もするけど、やっぱり心配。瑪瑙お姉ちゃんは規格外だから」
「そう、そうよね。私達は瑪瑙の凄さをこの目で何度も見てる。訪れた危機だって、跳ねのけられている……。すーはー」
パンッ!
大きく息を吸って吐いたリステルお姉ちゃんは、思いきり自分の頬を叩いた。
「ルーリ、サフィーアとハルルの言う通りだよ。ルーリだって別に瑪瑙が死んだなんて思ってないんでしょう? ただ心配ってだけなのよね?」
「……そうね、死んだなんて思ってないわ。ごめんなさい、酷く取り乱したわ」
「そうじゃな。まずは妾達がやらなくてはいけない事をやるとしようぞ」
流石にリステルお姉ちゃんとルーリお姉ちゃんは、瑪瑙姉ちゃんの凄さを間近で見ているので立ち直りは早かった。
「で、ともえとしらゆきはどうするの?」
「……本当にさくや様は無事なんですね?」
ともえはすがる様にハルル達を見る。
「私も皆さんの言うめのうさんを信じます。すみません、みっともない所をお見せしました」
しらゆきはハルル達を信じてくれるようだ。
「ハルルちゃんごめんなさい。私……酷いこと言ったわ……」
「ん。気にしてない」
少し落ち着いた後、ハルル達はお互いに怪我が無い事を確かめて、しらゆきの案内で山道を行く。
やっぱり逃げている人達にも追手がかかっていたようで、里の人達の死体と、黒ずくめの死体がいくつか転がっていた。
ハルル達は速度を上げて追いかける。
しばらく走っていると、金属がぶつかる音と人の声が聞こえてた。
『――! ――――!』
黒ずくめ三人と里の人が戦っている姿が視界に入った。
すぐさま空間収納からショートソード取りだして、上段から叩きつけるように振る。
流石にハルル達の接近に気づいてた黒ずくめは、ハルルの見え見えの上段からの攻撃を剣で受けようとするが……。
ガキィン!!!!
ハルルの怪力を受け止めきれるわけもなく、剣は折れて勢いそのままに頭を割った。
リステルお姉ちゃんは素早く相手の懐へと潜り込み、反撃する魔も与えず胴を薙いだ。
もう一人は里の人と鍔迫り合いをしている所、しらゆきが背後から近づいて首を搔き切った。
『――!』
『――?』
しらゆきが里の人と話をしている。
「ルーリさん。怪我人が何人かいまして、治癒をお願いできませんでしょうか?」
「ええ、いいですよ」
ルーリお姉ちゃんが怪我人の治癒をして回っている間、ハルル達は周辺を警戒する。
「お嬢ちゃん、助けてくれてありがとうね?」
すると、一人のお婆ちゃんが話しかけてくれた。
「言葉、話せるの?」
「少しだけね? あなた達の仲間の人が崖から落ちたって聞いて……。こんなことに巻き込んでしまって、ごめんなさいね」
酷く悲しそうに話すお婆ちゃん。
「大丈夫、瑪瑙お姉ちゃんとさくやは絶対無事だから。それよりも、少しでも助けられたのなら良かった」
「強い子ね」
「ん。ハルルこう見えて冒険者。強いよ」
ルーリお姉ちゃんの治癒が終わり、周囲を警戒しながらハルル達が登って来た道より険しい山道を下る。
どうやら追ってはかかっていないようで、明るくなる頃には山の麓まで下山することが出来た。
「しらゆきさん、瑪瑙とさくやさんが落ちた場所まで麓から行く方法ってあるのかしら?」
「ぐるっと麓を大回りしないと川には着きませんね……」
ルーリお姉ちゃんがしらゆきに話す。
その様子を、どこか不安そうに見ている里の人達。
言葉はわからないはずだけれど、ハルル達が別行動をとろうとしていることがなんとなく伝わっているようだった。
「正直、里の人達を見捨ててまで瑪瑙とさくやさんを探しにはいけないね」
「そうよね……。しらゆきさん、ともえさん、これからどうすればいいかしら」
「静がさくや様を狙っている筆頭だから、私にはもうあてが無いんです……」
ともえはすぐにそう答えた。
「……狐族。かの亜人種の集落に助けを求めることが、この場では最良かもしれません」
しらゆきが言う。
「……狐族? つばきと同じ種族?」
「あ、皆さんはつばきを知っているんですね? そうです、彼女と同じ狐族の亜人の集落です」
しらゆき曰く、狐族は戦乱の時代から続く平和論者の集団なのだそうだ。
狐族は亜人の特徴である、人より敏感な五感とは別に強い妖力を持って生まれてくることが稀にある種族。
つばきは妖力こそ持って生まれてこなかったけれど、例に及ばず鋭い嗅覚や聴覚を持っていた。
「元々狐族は、此花家……皇族と協力関係にあったんです。なのでさくや様が何かあった時に助けを求めるとすれば、狐族の長の所だと思うんです」
「狐族の集落はどこにあるの?」
「……ここから五日ほど南下した山の中腹に……」
お姉ちゃん達が眉をひそめて考え込む。
「うーむ。この大人数で移動は難しいじゃろう? ほとんどが女と子供ばかりじゃ。どこかに保護は求められんのか?」
「保護。……保護ですか。あるにはあるんですが……かなり分の悪い賭けになるかと……」
「どういうことですか?」
「皇都の中には桜花衆それぞれの拠点があるんです。静の拠点はとうや様派が主流なので当然無理なのですが……。他の……霞、墨染、天城、夢萩の何処かに保護を求められないかと……」
「でも、ともえもハルル達も皇都に入れるの? それに、霞の中にもとうや側の人間がいた。残りの三つにもいるんじゃないの?」
「……その可能性は高いです」
ハルルはこっちを不安そうにじっと見ている里の人達を見る。
その中に、さっき喋ったお婆ちゃんの姿もあった。
「皇都に行こう。ここにいても時間だけが過ぎちゃう」
ハルルは思い切って提案する。
「そうね。しらゆきさん、元々霞の人達はさくやさん派だったんでしょう?」
「……はい。そう聞いてはいたんですが。あの黒ずくめの集団の多くが霞の人間でした」
「静の長が、とうや様に与しているのは若い連中だと言っていました。霞の年長の人に接触できればあるいは……。しらゆき、あてはある?」
「皇都の霞の拠点を任されている方が、長ととても仲の良かった方ではあったのですが、間違いなく味方かと言われると……」
「それでも行ってみるしかないわね」
「……そうですね」
里の人達への説明はともえに任せて、ハルル達はしらゆきと話をする。
「瑪瑙はガラクの事は全くわからないから、さくやさんの考えた通りに動こうとすると思う」
「そうですね。だとしたらやっぱり、狐族の里に行くのが一番確かだと思います。何とか里の人達の安全を確保して、急ぎ狐族の里へと向かいましょう」
「しらゆきさん。第二皇子派の人間が次にどう動くか、わかるかしら?」
「……すみません、わかりかねます。ただ、霞の隠れ里を襲った事を考えると、他の霞の里も襲われている可能性が高いです」
「不穏分子になる可能性がある者達を真っ先に叩くか。中々苛烈な奴じゃのう」
「……狐族は襲われている可能性は?」
「……正直、無いとは言い切れません。ただ、実は私が行きたい所は狐族の中でもまたちょっと違う種族の里なんです。そこはさくや様と私と他数名しか知らないはずです。ほとんど表には出ない小さな狐族がいるんです」
「わかった。今一番の目標は、里の人達の安全の確保。それが終わり次第、その狐族の里に向かいましょう」
ともえも里の人達に説明が終わり、ハルル達はいよいよ皇都へと戻る。
里の人達二十人程を引き連れて街道を歩く。
本当は街道から外れた道を歩きたいのだけれど、子供が多いことから険しい道ではなくある程度整っている街道沿いを歩くことになった。
水も食料もほとんど足りていない。
瑪瑙お姉ちゃんとルーリお姉ちゃんが食料を分散して持ち運んでくれたおかげで、何とかなっている。
ただ、水はもうない。
水を好き勝手に出せる瑪瑙お姉ちゃんがいなくなって、水の大切さを改めて思い知ることになった。
ハルルも他のお姉ちゃんも知っていたいはずなのに、慣れって怖い。
ただ、ガラクはあっちこっちに川が流れている。
そのおかげで、水も何とかなっている。
途中、皇都から出て行く人達を見つけ、里の人が話を聞いてくれた。
ハルル達は言葉もわからないし、この格好で異国人だとすぐわかってしまう。
万が一ハルル達の情報が一般市民にも知れ渡っていたらまずい。
「……さくや様が侍従を殺して城から逃走して、今は捜索中となっているそうです」
しらゆきが、里の人が聞いて来た話を要約して話してくれている。
「私達の事は?」
「皆さんの事なんですが、商会の長を殺害した容疑で、異国人の女五人と、ともえさんが手配されているそうです。ともえさんに至っては、人相書きも出ているそうです……」
「お頭様を殺したことは間違いないから、仕方が無いわね……」
そう言うともえだけど、流石に辛そうだった。
遠目に皇都の外壁が見えてくる。
「ともえさんとサフィーア、ルーリはここに残って里の人の護衛。私とハルルは、しらゆきさんについて行って、霞の拠点までいく」
「ん」
リステルお姉ちゃんとハルルは今、ガラクの服を着て変装をしている。
普段はツインテールにしているハルルの髪の毛だけど、今は後ろで結んでお団子にしている。
リステルお姉ちゃんも一緒。
ハルル達全員ガラクでは、ちょっと珍しい部類の髪色をしているので帽子をかぶる。
珍しいとは言っても、いるにはいるのでそこまで気にしなくてもいいとは言われたけど念のため。
外門近くまで行くと、鎧を着て武器を持った兵士が街に出入りする人達を細かく調べていた。
『――。――――?』
『――、――』
兵士がハルル達を見て何かを質問してる。
言葉がわからないっていうのはとても不便だけど、疑いの目ではない事はすぐにわかるので、しらゆきの話が終わるまでハルルとリステルお姉ちゃんは、口を開かないようにぼーっとして待っている。
しらゆきが前へと進み、兵士がハルル達の後ろの人達に視線を移した。
こっそりしらゆきが手招きしてくれている。
「大丈夫だった?」
「はい。特に怪しまれている感じはありませんでした。近くの村から親戚に用があって来たと言ったら、存外すぐに通してくれました」
「みたいね」
ハルル達は呆気なく皇都に入る事が出来た。
しらゆきの後ろを歩き、あまり目立たないように周りを見渡す。
街の人達の多くが、どこか不安そうな表情を浮かべているのに気づいた。
大通りから一つ外れた通りに入ると、焦げ臭い臭いが漂って来た。
しらゆきの表情がどんどん青くなっていって。
しらゆきが足を止め、見つめるその視線の先には、焼け焦げて倒壊している建物と、それを遠巻きに眺めている人達。
駆けだして、遠巻きに眺めている人達に何やら話しかけるしらゆき。
戻って来たしらゆきの顔は、血の気が引いて真っ白になっていた。
「何があったの?」
路地裏に入って、こっそりと話す。
「……ちょとどさくや様と皆さんと逃げた夜に、酷い火災が起こったそうで……。雨が降っていたにも関わらず、火が燃え広がって倒壊したそうです。瓦礫の下から、多くの焼け焦げた死体がでたと……」
「もしかして……」
「そうです! あれが言っていた霞の拠点だったんです! 何もここまで、しなくてもっ!」
顔を押さえて蹲るしらゆき。
リステルお姉ちゃんも悲しそうにしらゆの背中をさすっている。
……だけど、ハルルと同時に武器を構えた。
ハルル達がいる路地裏に男が一人入って来たのだ。
偶然や興味本位で覗いたわけではなく、しっかりとハルル達を見据えて入って来た。
『――、――?』
少し日に焼けて黒い肌、服をゆったりと着流して、煙草をふかしているその男が
何か声をかけているけれど、ハルル達は言葉がわからない。
「……なるほど、お前さん達が手配されている異国人か。しらゆき、しっかりしろ。いつまで蹲っているんだ」
「くさぎさん!?」
「おうよ、こっち来て話をしようぜ」
「しらゆきさん、この人、信じていいの? ハルル、どう感じる? 周りにはこちらを伺う気配はないけど……」
「ん。周りに追ってはいない。こいつからも敵意は感じない」
「二人とも、私が会いたかったのはこの人です。くさぎさん、くさぎさんはさくや様派のままですか?」
「お前、俺がそうだって言って信じられんのかよ? まあいい。俺は今も変わらずさくや様を支持してる。いろいろ情報収集をしている所なんだよ」
ハルル達は顔を見合わせて、このくさぎと言う男について行くことにしたのだった。




