第十話
お待たせしました。第十話です。どうぞ
体が焼けるような熱さで支配されていく中、俺は奥の手である『アレ』を使う事を決断した。
その『アレ』を作り出すため俺は右手の甲のみに魔力を注ぎ込んだ。
すると右手の甲に、一つの魔法陣が浮かび上がり、それが極彩色に輝く。
この魔法陣こそが『アレ』の正体である。
「う、おああああああっ!!」
俺は『アレ』を発現させた右手を振りかざし、俺を飲み込み、焼き殺そうとする炎に触れた。
次の瞬間、俺を包んでいた炎は跡形も泣く消え去り、熱となって空気中に溶けていった。
青山団長の顔が驚愕に染まる。
「へぇ……どうやったの?それ。」
「残念ですけど……今の俺には手の内をさらけ出せるほど、余裕はないんですよ!!」
そう叫ぶなり俺は左手で地面をに触れ、魔力を込めた。
すると、地中に含まれていた砂鉄が、俺の左手に吸い寄せられるように集まった。
俺は、砂鉄がある程度集まった所で、『アレ』を発現させた右手で、その砂鉄の群れに触れた。
すると砂粒状の小さな鉄たちは、一つの塊となり、刃渡り1メートルの鉄剣へと姿を変えた。
この力こそが俺の奥の手である「物質変化魔法」だ。
普段は隠れているが、俺の右手の甲には特殊な術式が組み込まれており、そこに魔力を注ぎ込む事で、極彩色に輝く魔法陣が出現する。
気体、液体、固体といった、さまざまな物体を構成しているあらゆる物質にその状態の右手で触れることで、対象の物質の形状や性質を自由自在に変化させることができるのだ。
さっきの炎も同じ事で、あれは、炎―――正確には燃焼を引き起こしている空気中の酸素の性質を変化させ、一時的に「燃えない気体」へと変貌させたために起こった現象だ。
そして、いま右手に持っている鉄剣だが、これは電撃魔法との応用である。
電撃系魔法を使って、擬似的に磁力を発生。地中の砂鉄を大量に自分の元へ引き寄せた所で、この右手で触れる事によって、大量の砂鉄たちの一粒一粒の形状を変化させ、一つの鉄の集合体にし、後はそれを剣の形に変化させて鉄剣が完成する、というわけだ。
「行きますよ!!」
俺は鉄剣を両手で握り、団長へ踊りかかった。
左上から鉄剣を袈裟斬りに振り下ろす。
「っ!」
咄嗟に背後へ飛び退いた団長だったが、鉄剣の切っ先がタンクトップを掠め、生地をわずかに切る。
「らぁっ!」
「うおっ!」
それとタイミングを同期させて信司、悠斗の2人もそれぞれ剣とグローブを構え、あるいは出現させ、俺と同じように団長に挑みかかる。
「ちぃっ!」
団長は右手で悠斗のグローブを、左手で信司の剣の刀身をそれぞれ掴んで止めた。
これで団長の両手は塞がった。
「今だ誠ぉっ!」
「やべっ!」
俺はさらに砂鉄を集め、得物の姿を鉄剣から槍へと変化させた。
両手でしっかりと握り、矛先を団長に合わせて一気に駆け出す。
「うおおおっ!」
団長の体が槍の射程内に入った瞬間、思い切り前へ突き出す。
だが、
「仕方ねぇ、代わってやるよ。」
その言葉が発せられた直後、団長から炎が溢れ出し、爆風が闘技場内に吹き荒れる。
踊りかかった俺たちは、一矢報いることすら許されず瞬く間に吹き飛ばされ、壁に背中をぶつけた。
「ぐ、はっ!」
「い、一体何が!?」
混乱する俺たち3人。遠目でわからないが、30メートルほど先にいる健太も同じような状態なのだろう。
「っ!おい、アレ見てみろ!」
悠斗が爆炎の中心を指差して叫ぶ。炎の中に人型のシルエットがあったからだ。
しかもそのシルエットは、腰より下を覆う筒状の布のようなものを身に着けているように見える。
「(スカート……?)」
炎がおさまり、爆風が止み、煙が晴れ、先程まで団長がいた場所には、
「な……っ!?」
一人の美女がいた。
闘技場にいる誠の周囲から黒い粉のような物が大量に集まる。
それらは誠を取り囲むように集合すると、魔法陣が展開していない左手に集中した。
「あの粉は……砂鉄か!」
副団長がいちはやくその正体に気づく。
「それって確か地面に含まれる鉄の粉ですよね?」
「正確には岩石の中だがな。」
「……どうやって集めたんだろう?」
「おそらく彼の扱う電撃魔法は、磁力も操れるんじゃないか?」
磁力とは、磁石や電流が発生させる磁場により、磁石や電流が流れている導体の間に発生する引き寄せ合うような力である。
確かにそれらを操ることができるならば、あのような芸当も可能だ。
「あ!集まった砂鉄が……!」
見てみると、誠の左手に集中した砂鉄が棒状に展開し、魔法陣が発現している右手がそれを軽く叩くように触れる。
次の瞬間、一箇所に集っていた砂の粒同士が引かれ合うように収束し、鉄の剣と化した。
「今度は剣に!?」
「もうワケがわからん!」
次々起こる不可解な現象について行けない皆が混乱しているとき、眼下では同じく目の前の現象に対応が追いつかない団長が、知らず知らずの内に追い詰められている。
「オイオイ、これひょっとするとヤベーんじゃねぇのか?」
と副団長が心配そうな声を出した直後、
「行けぇみんな!やっちゃえ!!」
大声を上げ、両手に拳を作り、目を爛々と輝かせながら雫が全力でエールを送っていた。
「雫、キャラが崩壊してるわよ……。」
「仕方ないんじゃないか?昼食代がかかっているんだし。」
副団長の言葉に全員が「あー……」と納得してしまった。
「今よ誠くん!その槍で一気に―――あ。」
「ん?どうしたの雫。」
突然エールが途絶えたので、何事かと皆が雫を見る。
雫は膝からその場に崩れ落ちると、悲しそうに言った。
「お、終わった……。」
「???」
ますます分からなくなっていた皆が視線を戻すと、昇が爆炎に包み込まれていた。
これを見るなり皆は合点がいったといった表情を浮かべた。そして直後、雫を哀れみの目で見つめるのだった。
悲しみに打ちひしがれる彼女の肩をそっと叩き、副団長が優しく言った。
「まぁ、うん……ドンマイ。」
先程まで青山団長がいた場所には、長身の女性がいた。
スッと伸びた鼻筋に、コバルトブルーに輝く瞳。
髪型は、長く艶やかな青い髪の内、前髪以外の髪を後頭部へ持っていきまとめたもので、俗に言うアップスタイルという奴だ。
服装は俺たちと同じデザインの軍服に、ダークグリーンのフレアスカート。黒いニーハイソックスに同色の革靴。
どこか青山上級大尉を彷彿とさせる美女がそこにいた。
「ふぅ、やっと私の出番ね。」
美女は張りのある凛とした声でそう呟いた。
「なんだ……なんだありゃ!?」
俺の言葉に反応した信司たちも状態を起こし、目の前の美女を食い入るように見つめた。
「なんだあの美人……」
「綺麗だ……」
「美しい……」
三者三様の、それでもほぼ同じような反応を示している。
美女は俺たちにコバルトブルーの凛々しい瞳を向けながら言った。
「初めまして、って言ったほうがいいのかしら?」
「アンタは……アンタは一体何もんだ!?」
俺の言葉に、やっぱりといった表情を浮かべたあと、美女は自らの存在を明かした。
「私は彼の中に存在するもう一つの人格。本来ならば生まれるはずのない「もう一人の青山昇」。」
それだけで、俺は目の前の美女が何者なのかを悟った。
「そうか……そうだったのか……!」
健太が言っていた情報、青山昇という人物、戦女神と呼ばれる称号、そして目の前の美女。
これらが全てパーツとなって組み合わさり、俺の中でひとつの結論が出た。
「青山団長……貴方……貴方は……!」
「魔女化能力者か!」
テスト一週間前に入りました。
勉強に集中するためかなりの間更新がストップします。
一応ですが次の投稿予定日は10月15日を予定してます。




