第十一話
お待たせしました。第十一話です
テスト明け初です。
どうぞ。
魔女化能力者とは。
「魔女化能力」と呼ばれる「魔法革命」後の子供に現れた体質を持って生まれた者のことを指す。
「魔法革命」の影響で、先天的に魔力を持って生まれることが出来る様になった男性ではあるが、実際は女性の三分の一の魔力しか持つ事ができない。
しかし、その体質をもって産まれた者は、自らの肉体を男性から女性へと変化させることが出来るのだ。これにより魔女化能力者は、女性と変わらない膨大な魔力を手にすることができる。
この原因は今だ判明しておらず、生まれてくる確率は100人に1人と言われている。
「その通りよ。彼、青山昇は魔女化能力者。そして私は、そんな彼の中に生まれたもうひとつの人格。青山焔よ。」
「なんだって!?」
「団長が……魔女化能力者!?」
信司と悠斗の二人も驚きを隠せないようだ。健太が問う。
「じゃあ、青山総団長が美人だって噂も?」
「私のことじゃない?っていうかそんな噂が立ってたの!?」
「え、えぇ。「エリア12」じゃかなりの噂になってますけど……。」
途端に目の前の美女―――これからは焔さんと呼ぼう―――は右手を左肩に置き、顔を赤くしながらモジモジし始めた。
「そ、そうなんだ……あ、あははは!なんか照れちゃうなぁ……」
「「「(なにこれかわいい)」」」
と、目の前のバカ3人と焔さんがいろいろやってる間に、俺は状況を整理しようと思う。
青山総団長は女だと思われていた。
だが現実にはだらしがない青年だった。
しかし彼は「魔女化能力」を保持しており、「青山総団長は女だった」という説も間違いではない。
ん?待てよ?
「(魔女化能力者って事は「魔女」と変わらない魔力の上限を手に入れたってことだよな?いや、下手したらさっきよりも強力な魔法が出てくるかもわからんぞ!?)」
これは、ジッとしてるわけには行かない。
そう思った俺はダメージが響く体を無理やり起こすと、拳を作った。右手の甲に、再び物質変化魔法の陣を出現させる。
「っと、そういえばまだ戦いの最中だったわね。」
焔さんは両手を開き、両側に大きく広げる。
かかってこい、とでも言わんばかりに。
「あなたのその右手に輝く極彩色の魔法陣が何なのか、確かめさせてもらうわ。」
「アンタこそ、俺が女を殴ることができないだなんて思わないことだな!」
そして信司たちも各々得物を展開、戦闘態勢に移行する。
「行くぜ!」
鉄剣を握り直し、焔さんに駆け出す。
その後ろから、信司と悠斗も続いているようだった。
「「「うおおおおおおおっ!!」」」
俺を含む3人の叫び声がこだまし、俺たちと焔さんの距離が5メートルを切ったとき。
彼女は、右手の人差し指を上に跳ね上げるように動かした。
次の瞬間、俺の視界が赤に染まる。
「まさか魔女化しやがるとはな……。」
「これはもう終わりかもね~」
茜が額に汗を垂らし、戦いの尊は終わりを予言する。
「もうダメよ……おしまいよ……。」
「まぁまぁ、そんなに落ち込まないで。」
その場にうずくまり、目の前の現実に絶望している親友を慰める楓。
「しかしあの新入り達もやるな。昇の奴に魔女化……いや、焔まで出させるとは。」
青山昇は若くして第12独立魔術師団の頂点に上り詰めた天才魔術師だ。
元々、質が高いことで有名だった日本生まれの魔術師の中でも、彼は神童と謳われるほどの才能を持っていた。
今まで彼が倒してきた業魔の数は、10万を軽く凌駕する。
そんな彼を通常時と本気の境目。「第二形態」である魔女化状態。つまり青山焔出現まで追い込んだのだ。
「……新兵たちはいつまで持つか。」
秋穂はますます興味が出てきたようで、目をキラキラさせている。
その目の先では、ちょうど金髪の少年を先頭に、炎の剣を持つ少年と、氷のグローブを持つ少年が突撃を仕掛けたところだった。
眼鏡の少年は、秋穂たちの視線から見て右方向へ走り出した。おそらくは先ほど投げ捨てたアサルトライフルを回収し、背後から銃撃を食らわせる三段なのだろう。
「また突っ込むだけ。ホントに懲りないのね。」
桜花が言葉を放った直後だった。
誠たちのいた場所が突如、爆炎を吹き上げて大炎上を起こした。
焔が右手の人差し指を上げているのが見えた。
「「「「あぁ~……」」」」
「決まりだな。」
「……10秒も持たなかった」
「みんな……。」
この場の全員が、誠たちの負けを悟った時だった。
爆炎が突如として消滅し、誠と信司が中から飛び出してきたのは。
「「うおおおおおおおおおおおっ!!」」
「えっ!?」
焔は驚愕した。
先程自分が放った攻撃から考えるに、彼らには魔法陣を構える暇すら与えられていないはずである。
にもかかわらず、金髪の少年と老け顔の少年剣士は自分の炎をかいくぐってきたのだ。
3人の距離は約3メートル。誠は先ほどの攻撃で溶解してしまった鉄剣を捨て、拳を握りしめている。
「だったら!」
焔は左手に野球ボール大の火球を作り出し、誠に向けて投げつけた。
そして火球が誠へ着弾する刹那、信司が誠の前へと躍り出て、迫り来る火球めがけて愛剣を振り下ろした。
直後、爆発と轟音が闘技場に響く。巻き起こった大量の炎で会場の4分の1が支配される。
灼熱の空間の中、焔は見た。爆発の反動をで意識を失い、後方へと吹き飛んで行く信司の後ろから誠が姿を現すのを。
魔法陣を発動させた右手が炎に触れ、炎の燃焼に使われていた周囲の酸素が「燃えない気体」へと姿を変える。
自分たちを包む炎の檻が消滅し、焦げ跡が生々しく残る闘技場内に、誠の絶叫が響く。
「おらァァァあああああああああああっ!!」
両者の距離は1メートルを切っており、誠の拳の射程圏内だった。
豪腕一閃。
誠の左手に握られた拳が、焔の右頬に食い込む。
「ぐぅ……っ!」
かなりの力で殴り飛ばされた焔は、5メートルほど空中を滑空した後、2回3回とバウンドを繰り返してようやく止まった。
「今だ健太ぁっ!!」
喉から絞り出された声。焔は後ろを振り返った。
すると先ほど投げ捨てたアサルトライフル回収し、こちらに銃口を向けている健太がいた。
「終わりです!」
躊躇なくトリガーを引き絞る。
彼の創造系魔法で作り出される弾丸は、マガジンに直接補充されるのでリロードの必要性がない。
ドガガガガガガガガッ!!という音と共に弾丸たちが牙を剥く。
だが、
「あああああああああああああああああああああああっ!!」
突如響いた焔の絶叫と共に彼女の周囲に発生した熱に耐えられず、弾丸たちは彼女の体を貫く前に溶解し、無力化してしまった。
「「なっ!?」」
誠と健太は同時に声を放つ。
焔はゆっくり立ち上がると、殴られた頬に手を当てながら言う。
「よくも、よくも女の顔を……っ!!」
怒りに染まる瞳と、口から吐き出されたその言葉は呪詛のような響きを持っていた。
「許さないわ……覚悟しなさいっ!!」
そう言った焔は、手の中に炎で魔法陣を創り出すと、それを足元に落とした。
足元で消えることなく燃え続ける魔法陣を、右足で思い切り踏みつける。
すると魔法陣はたちまち巨大化し、闘技場全体をすっぽり埋めてしまった。
「「えっ……?」」
誠と健太の背中に寒いものが走り抜ける。
「許さない許さない許さない許さない許さないっ!!」
焔が再び右足を振り上げる。
2人の動きは早かった。
「信司!悠斗!」
「やばいやばいやばい!」
誠はとっさに気絶した信司と悠斗たちへと駆け寄り、倒れる2人と自分の体をなるべく引き寄せる。
残ったこ全ての魔力を総動員し、電撃魔法でありったけの砂鉄を周囲からかき集め、仕上げに物体変化魔法で砂鉄を接合。
一枚の巨大な鉄の壁を形成し、自分もその場に伏せた。
健太も同じく。残っていた魔力をすべて使い、自らの肉体に本来専攻としていた治癒系の魔法をかけ、自分の周りに微弱ながらも結界を張った。
そして焔の右足が振り下ろされ、彼女の足が巨大な魔法陣を踏み抜いた時。
闘技場が、爆ぜた。
書き溜めのストックが怪しくなってきました。
もう少し頑張ります。
次回の投稿予定日は10月17日です




