第七話 テスタスの計略 剣聖アリッサ1
アリッサは女戦士だ。
10代の少女でありながらその力は歴戦の屈強な戦士たちより遥かに強く、剣聖と呼ばれている。
それが神の祝福なのだろう。
しかし彼女はそんなものに胡坐をかくことなく、常に鍛錬を欠かさない。
彼女は魔王討伐に必要不可欠な戦力だ。
なんとかして彼女を取り込み、ドヤネン追放に賛成してもらおう。
「やあ、アリッサ。今日も鍛錬か?」
宿の庭で1人剣を振るうアリッサに声をかけた。
「ん・・・。」
彼女はその手を止め、俺に向き直り小さく頷く。
「あまり無理はしないほうがいいぞ。昨日だってポイズンドラゴンと戦ったんだ。いくら魔法で塞いだとはいえ、傷が開いたら事だ。」
「ん。」
小さくそう呟いたきり、アリッサは剣を握ったまま立ち尽くし俺をじっと見ている。
その顔は鍛錬によるものだろうか少し紅潮していた。
口を少し開き肩で息をしながら。
汗で肌に張り付き少し透けている服のまま。
その姿に俺は不覚にも目を奪われた。
長身で引き締まった体つき。
寡黙な努力家。
彼女は人間としても、とても魅力的な女性だ。
「そんな恰好でいたら風邪をひくぞ。今日はもうこのくらいにしておかないか?」
見とれていたことを誤魔化すように気遣うような言葉をかける。
彼女のような純粋な人には嫌われたくはない。そう思うのは自然なことだろう。
それは賢者と呼ばれる俺も例外ではない。
彼女には俺の考えに賛成をしてもらいたいものだ。拒否されたら単純に悲しい。
「・・・そうする。」
「なら後で俺の部屋に来ないか?この町の特産のお茶を買ってきたんだ。」
「・・・行く。」
アリッサはそう言って宿の中に入っていく。
俺は部屋に戻ってお茶の用意をした。
アリッサは力強い戦士でありながら家庭的なことを好み、穏やかにお茶を飲むことを好む。
2人きり。
このチャンスに俺の悩みを話すという体でドヤネンのことを話そう。
アリッサはお喋りではないから俺がした話を言いふらすこともないだろうから、多少強めにドヤネンを悪く言っても問題はあるまい。
・・・しかし遅いな。ま、いつものことか。
始めて会った時、アリッサの第一印象は先ほどの通りだった。
いや、今もでそう思っている。それは間違いない。間違いないのだが・・・。




