第六話 テスタスの計略 聖女リーシア2
目的の書店に到着しリーシアが物色しているあいだ、俺も何か面白いものはないかと探して待っていた。
ふと目についたのはやたら装丁が豪華な神話の本。
手に取り見てみると、大昔に神が異世界より勇者を召喚し魔王を倒したという英雄譚のようだ。
これは作り話なのか、それとも歴史書の一端なのか。何かの参考になるかと思い、買ってみることにした。
もう欲しいものは探し終えたかとリーシアの元へ行くと、何冊かの本を持ったまま、背伸びをしながら本棚の上段へ手を伸ばしているところだった。
目当ての本が取れないのだろうか。
「言ってくれれば俺がとったのに。」
そう言って手を伸ばす。俺の身長なら難なく手に取ることができた。
「え?あ、テスタスさん?あ、きゃ・・・。」
しまった、せめてもっと遠くから一声かければよかっただろうか。
どうやら驚かせてしまったようでリーシアは姿勢を崩す。
なんとか支えようとするが俺も本を手に持っていたし、リーシアの持っている本も落とさないようにと考えていたらバランスを崩してしまった。
ドン! バササッ!
一瞬何が起きたのか、わからなくなる。さっきの音の感じだと結局本は落としてしまったようだ。だが体に柔らかい重みを感じる。
リーシアの下敷きになるくらいのことはできたのだろうか。
「リーシア大丈夫か?」
言いながら目を開けると視界には見覚えのある純白の景色が広がっていた。
そしてほのかに香る甘いような甘酸っぱいような匂い。
これはまさか。
「いたた、ご、ごめんなさい、テスタスさん。ちょっとビックリしてしまいました。・・・あれ?テスタスさん?」
「リーシア、下だ。」
「え?・・・きゃ、あ、ご、ごめんなさい。」
リーシアはすぐに飛びのいて頭を下げる。その顔が真っ赤に染まっているのは転んだことに驚いたというだけではないだろうことは明白だ。
俺はすぐに立ち上がり、何事もなかったかのように振舞う。
「急に手を伸ばしてすまなかった。怪我はないか?」
「あ、だ、大丈夫です。テスタスさんが守ってくれましたから。」
「そうか、ならよかった。」
あまり引きずってもリーシアに恥をかかせることになるだろう。
慎み深い彼女にそのような辱めは似合わない。
しかし何がどうなってあのようなことになったのか。
リーシアを支えようとしただけで、なぜ俺の顔面にリーシアの尻が乗ったのか。
全くもって皆目見当もつかない。
いくつかの店に行き、目的の本を一通り買い終えた俺たちは宿に戻ることにした。
「今日はありがとうございました。」
「それはこちらこそだよ。俺もいい買い物ができた。ところでそろそろ昼だしどこかで食事していくか?」
そこでドヤネンのことを話そう。そう思ったのだが。
「いえ、荷物もありますし一度帰りたいです。」
断られてしまった。
荷物のほとんどは俺が持っているのだがな。
いや、彼女の性格を考えると、だからこそなのかも知れない。
「それでその、もし良かったらなんですが、最近新しい料理に挑戦してまして、もし良かったらなんですが・・・。」
「もしかしてご馳走してくれるのか?」
「は、はい。もし、良かったら。」
「それは楽しみだな。リーシアの作る料理は美味しいから。」
「ふふ、お上手ですね。」
「お世辞なんかじゃないよ。」
「そう言っていただけるのは嬉しいです。でも私、本当は料理が特別好きというわけではないんですよ?」
「え?てっきり好きなんだと思っていたよ。よく練習しているみたいだったから。」
「実は・・・テスタスさんに美味しいって言ってもらいたくて練習しているんです。」
そう言うとリーシアは踊る様に前に出た。
僅かに見えた横顔が赤く染まっていたような気がしたが、気のせいだろう。
リーシアは仲間想いだからな。
やはりリーシアは素敵な女性だ。そう思った矢先
「きゃ・・・。」
目の前でリーシアが転んでしまった。
自分で自分の足に躓き、足がもつれて。
そして俺の眼前には最早見慣れた純白の布と大きなお尻が露わになっていた。
今日はこれで何回目だろう。
そう言えば前回の買い出しの時はひたすら胸を押し付けられたな、と思い出す。
「ご、ごめんなさい・・・。」
リーシアは顔を真っ赤にしながら立ち上がり、スカートを直す。
「お見苦しいところを・・・。」
リーシアは恥ずかしそうに恐縮してるが、ほとんどの男はリーシアの下着を見て嫌な気分になる者などおるまい。むしろ内心では喜んでしまう者の方が多いだろう。
「怪我は?」
「あ、だ、大丈夫です。」
「俺も今日は随分疲れてしまった。宿に帰って休むとしよう。」
「は、はい・・・。」
宿に帰る道中、リーシアは顔を赤くしたまま目を伏せていた。
俺としてはリーシアの下着などはもう見慣れてしまったし、今日に限って言えばドヤネンの顔より多く見ている。一々気にするものでもないが、当人にとってはそうはいかないのだろうな。
しかし今日はこれ以上リーシアと話をするのは難しいかも知れない。
これ以上一緒にいようとすると今日中にあと何回下着を見せられるかわからないし、そうなってはリーシアも会話どころではないだろう。
リーシアのこの体質?は生来のものなのか、それとも神の加護の弊害のようなものなのだろうか。
真実はわからないが、もしそうだとしたら神はなんと無慈悲な試練を科すのだろうか。




