第四話 テスタスの計略 勇者ジャスティーン2
店に入るが、中はまさに混沌そのものだった。
多くの人でごった返し、テーブルの置き方も乱雑。そんな喧騒の中で多くの人が食事をしている。
どれほど味がよかろうと、こんなところが一流店とは思えないが・・・。
「わぁ懐かしいです、この感じ。やっぱり大きい町は違いますね。」
そう言ってジャスティーンは手近な椅子に腰かけた。
店員の案内もなく席に着いてもいいものなのか?このような場所の勝手がわからず、どうしていいやら困惑している俺を察したジャスティーンは
「あ、ここ座ってください。・・・ごめんなさい、テスタスさんはこういうところはあまり来ないですよね。」
そう言われ、ジャスティーン達は元々普通の村娘だったらしいということを思い出す。
「確かにあまり経験はありませんが、こういう店も活気があって良いですね。」
「ですよね!わぁ、よかったです。気に入ってもらえて。」
気に入った、とまで言ったつもりはないのだが、まぁこういうのも悪くはないかもしれない。
いつも勇者足ろうと気を張っているジャスティーンの、この笑顔を見ながら食事ができるのだから。
「よお、ねーちゃん、すげぇ美人さんだな。」
そう思った矢先に見知らぬ男が馴れ馴れしく声をかけてきた。
「え!?・・・あ、お世辞ですよね。ありがとうございまーす。」
この感じ・・・知り合い、か?
「お世辞じゃねぇよ、兄ちゃん彼氏か?いいねぇ、美男美女だねぇ。」
「え!?か、彼氏!」
「違うのか?まあいいや、邪魔したな。」
そう言って男は去っていった。何をしに来たんだ?あいつは。
用があったのではないのだろうか。どうもただ通り過ぎざまに適当に話しかけてきたように見える。それともこういう店ではこれが作法なのだろうか。どうにも勝手がわからん。
「親しげでしたが、今の方はお知り合いなのですか?」
「か、か、彼氏とか・・・、そんなんじゃ、そんなんじゃ、あれ、でも、これって、も、も、も、もしかしてデ、デデデ・・・。」
「どうかしましたか?」
「ひゃ!え、あ、あの、えっと、あの、ごめんなさい、何の話でしたっけ・・・。」
「・・・あまりお気になさらず。」
なぜあんな言葉にこれほど狼狽してしまうのか。
あまりにも純粋で、痛いほどに初々しい。
それこそがジャスティーンが神に選ばれた所以であろう。
とは理解できるが、ここまで重症だと今までどうやって生きてきたのか不思議に思う。
「で、でも、私たち他の人から見たらそう思われちゃうってことで、私なんかが、その、ごめんなさいぃ・・・。」
昼間の凛々しい顔つきとは打って変わって顔を紅潮させ、はにかんでいるジャスティーン。
これが本当の彼女なのだろうか。なんと儚く美しい。
こんな女性が戦いに身を投じなければならないとは、神も残酷なことをするものだ。
「俺は構いませんよ。むしろ光栄です。ジャスティーンのような素敵な女性と交際しているように見えるというのは。もちろん、貴女が嫌でなければ、ですが。」
「・・・。・・・・・。・・・・・・。テスタスさんは、悪い人です。」
拗ねたような顔をするジャスティーン。距離を詰めることには成功しただろう。
だがこのままドヤネンの話を切り出せるかと言うと難しいだろう。突拍子もなさすぎる。
折角好感度を上げることに成功したのだから、今日はこのまま楽しい時間を過ごすことで良しとしよう。機会はまだあるのだから。
そう思って食事を終え、会計をする際
「お会計は7820Gで、8000お預かり・・・あいよっ!おつりは180万G。」
と、店員に威勢よく古臭い冗談をやられたのでスルーしつつ小さく微笑んで店を出ようとしたら
「え?ひゃ、ひゃくはちじゅうマン!?え、っと。ま、間違ってます、計算。」
ジャスティーンはスルーできなかったらしい。
「大丈夫ですよ。ほら、おつりはちゃんと180Gです。」
「え?あ、本当だ。あ、じゃあさっきのは言い間違えてしまったんですね。」
「いや、冗談だと思いますよ。」
「冗談、ですか?」
大真面目に返されてしまっても店員も困るだろう。俺はジャスティーンに軽く退店を促した。
それにしてもジャスティーンの純粋さは逆に心配になってしまう程だ。
今までも下賤な輩、例えばドヤネンのような男につけこまれて言葉にするのも悍ましい下衆なことをされていなかったかと心配になる。
そう考えるとドヤネンは一刻も早く追放しないと危険だ。
あの下賤なドヤネンのことだ、明日にもジャスティーンを歯の浮くような言葉を並べて篭絡するつもりかも知れない。もしそうなったらあの陰湿なドヤネンの事だ、きっと卑猥なことをするに違いない。
それを阻止するためにも早くパーティーの根回しを済ませ、奴を追放しなければ。




