第二話 決意
「くっ!この巨体、流石に一筋縄ではいかない。」
俺たちは魔王八将軍の一人、ガフェレスの右腕であるダグララインと戦っていた。
「アリッサ!一旦下がれ!リーシア、ノコの治療が終わったらアリッサの治療を頼む。その間は俺がジャスティーンを援護する。」
ある地方を旅しているとき、俺たちは魔王軍が火山で何かを企てているという情報を入手した。
そこで様子を見に来てみると、どうやら火山の内部で爆発を起こし火山を噴火させ、町を溶岩で飲み込む作戦だったようだ。
悪魔のようなその企てを阻止することに成功し、現在は作戦指揮をしていたダグララインと戦闘になっている。
まさかこんなところで幹部クラスと出くわすとは予想外だった。
「アリッサ、しばらくは俺がジャスティーンの援護をする。今は治療を受けてくれ。」
そう言ってアリッサを下がらせ、勇者ジャスティーンの元に走り出す。
流石の勇者ジャスティーンもダグララインの猛攻を一人で受けることは難しい。
ダグララインが大きく振りかぶった一撃を放った時、ジャスティーンの体が浮いた。
「ジャスティーン!!」
まずい。
そう思ったその時。
ガッ!バンッ!
ダグララインの顔面に何かが当たった。そしてそれは爆発し、ダグララインの体勢を崩す。
その間にジャスティーンは着地し、また剣を構えなおした。
俺も無事ジャスティーンの元にたどり着けた。
ダグララインに当たった物の出何処を見てみると、そこにいたのは雑用をやっているドヤネンだった。
「ドヤネン!何をやっている!」
頭に血が上り、つい大声が出る。
「で、でも・・・。皆が危ないと思って、僕・・・。」
ドヤネンは申し訳なさそうに言い訳をする。
確かに今回は少し危なかったが、それでもドヤネンが出てこなくてもなんとかなっただろう。
ドヤネンは戦闘ができるタイプではない。そもそも戦闘能力をほとんど持っていないのだ。
小器用で色々なことができるので雑用としては優秀だが、こと戦いに関しては並みの兵士にも劣る程だ。
そんな奴がダグララインとの戦いの前線に出てくるなどは自殺行為だ。
「貴様がここにいても足手まといだと言っているんだ!お前は大人しく後ろで奇跡の石を振りかざし続けていろ!」
「あ、う、うん・・・。ごめん・・・。」
落ち込んだドヤネンは、だが動きも遅く、ダグララインに見つかってしまった。
「ドヤネン!」
俺はドヤネンの元へ駆ける。
全く、あの男は平時は役に立つが、こと戦闘に関しては全くの役立たず。
それでいて自分の能力を過信しているのか勝手な行動をする。
後始末をする俺は心労がたまって仕方がない。
・・・・・・・
・・・・・
・・・
ダグララインをなんとか倒した俺たちはリーシアに傷を治療してもらっていた。
この隙に他のモンスターに襲われたらひとたまりもない。俺は周囲を見回す。
するとドヤネンが一人ダグララインの死骸のそばに行って何かしている。
あいつは、全く。
どうして勝手に動くのだ。
もし万が一ダグララインが生きていたらどうするのか。
信じられん。
全く信じられん。
俺は怒りに任せてドヤネンの元へ詰め寄る。
「ドヤネン!何をしているんだ!」
ダグララインの死骸に蹲って何かしていたドヤネンは怒る俺を見上げながら
「素材を、剝いでるんだ。いいものが、とれそうだから。」
・・・何を言っているんだ、こいつは。
「そんなことをして何になるというのだ!」
「えっと、いい装備が作れるようになるかもしれないし・・・。」
「そんなことは専門家に任せていればいいだろう!」
「で、でも、僕が剥ぎとると質がよくなったり、量が増えたりするんだ。」
「お前がやると量が増える?そんなことが起こるわけがないだろう!」
「で、でも、そういうスキルだから・・・。」
「また訳の分からんことを・・・。第一、まだこいつが生きていたらどうするつもりだったのだ!危機感のないやつめ!」
「あ、それは大丈夫。もう死んでいるよ。ステータスをスキャンしたから、間違いないんだ。」
またまた訳の分からないことを・・・。
この調子なのだ。
すきる?だか、すてえたす?とかいうことを言って、まるで遊びの延長かのような態度でいる。
大体、この程度の戦闘力しか持たないということは今まで何の努力もしてこなかったということだ。そんな人間が選ばれし勇者や俺と肩を並べるなどはおこがましいことだ。
このまま魔王を倒した暁にはドヤネンもまた英雄の1人として数えられるだろう。
この遊び半分で戦いをしているとしか思えないふざけた男が。
低身長な上に小太りで不細工な顔の男が、共に絵巻に描かれる。仲間として。
そんなことはあってはならない。
ドヤネンは勇者のパーティーには相応しくないのだ。
そう考えた俺はドヤネンをこのパーティーから追放しようと考えた。
しかしどうやって。
ドヤネンの同行は皆に認められている。
表立って追放しようなどと言っては俺が悪者になってしまう。
いかにパーティーの和を乱さずに、それでいて皆にドヤネンを見限らせるか。
幸いにも今度立ち寄る大きな町では数日の滞在を予定している。
俺はその間に密かに根回しを行うことにした。
なに、それほど難しいことではあるまい。
ドヤネンが役立たずであるということは揺るがぬ事実なのだ。




