第十一話 雑用ドヤネン1
結局、町に滞在している間の根回しには失敗した。
次の町に向かう旅路の途中、俺は悩んでいた。
やはりドヤネン追放を切り出す糸口が中々見つからない。
それというのも彼女たちは不平不満や人の悪口、陰口を言うような人間ではない。
便乗するような話し方はできないということだ。
とするとやはり俺が積極的にドヤネンを追放しようと働きかけるしかないのだが・・・。
そんなことを考えているとドヤネンとノコが会話をしているのが目に入った。
随分と会話が盛り上がっているようだ。
ああやって誰かに取り入ろうとするとはドヤネンめ、全くご苦労なことだ。
・・・いや、まてよ?
ノコと会話が盛り上がっている?どういうことだ?
ドヤネンはノコが何を言っているのかわかるのか?
一体どんな会話をしているというのか。
「――――。」
「僕もだよ。」
「――――。―――、――――――。」
「そうだね。どうしたらいいのかな。」
「―――――――――――――。」
何の話をしているのか全くわからん。
というか適当に相槌を打っているだけなのではないのか?
間違いない、きっとそうだ。そうに違いない。
そう思った時。
「何の話をしているんですか?」
ジャスティーンが二人の会話に加わろうと声をかけた。
適当に相槌を打っていたであろうドヤネンには答えられないだろう。
だがノコに答えられても結局は何の話をしていたつもりだったのかは俺にはわからん。
これまでの旅での関係を見るに、どうもジャスティーンやリーシア、アリッサ達はノコの声が聞き取れるようだ。ならばジャスティーンの反応を見て推察するか。
「うん。もっと皆と仲良くなりたいなって話してたんだ。僕は皆と違って戦う力を持っていないから。」
!! ドヤネンが答えただと?
バカな。
しかしノコの表情を見ても否定する様子はない。
ということはもしやこのドヤネンはノコの声が聞き取れるのか?
ということはこのパーティーでノコの声を聞きとれないのは・・・俺、だけ。だと?
そんな馬鹿な。
だが思い当たることがないわけではない。
町でもノコの声を聞きとれないのはほとんどが老人や年配の者達だった。
俺が、まさか・・・?
確かに俺はこのパーティーではほんの少しだけ年上ではある。
だが、まさか・・・。
狼狽する俺を他所にドヤネンたちは和気あいあいと会話している。
おのれドヤネン許すまじ。
こうなったら会話を盗み聞きして貴様の下心を暴いてやるわ。
そう思っていた矢先ドヤネンが
「ん?」
「―――――――?」
「モンスターだ。・・・近づいてきてる。」
「え!?」
何?モンスターだと?
急いで周囲を見回すがそれらしき影はない。
ただ急に周囲をグルグルと見回した俺のことを、少し遠くにいたアリッサが目を丸くして見ていたくらいだ。
おのれドヤネン。
こうして皆に要らぬ心配を与えて心労させるつもりだな。
「――――――――――。」
「見えないけど、感じるんだ。・・・どこから来るかはわからないけど、近づいてきているのは間違いないよ。」
「―――――――――。」
「ごめん、ぼんやりとしか・・・、でもいるんだ。間違いなく。」
「・・・・・・・・・。地面?皆さん!敵は地中から来ます!!」
ジャスティーンが大声でそう言った数秒後、足元が少し揺れた気がした。
注意していなければ気づかない程度だが、まさか。
そう思いながらもパーティーの皆がその場を離れた。
その瞬間!
ビシィバキッ
異様な音を立て地面が隆起し始め、ほどなくしてそこからは大きな土竜が現れた。
もし警戒が遅れていたら何人かはあの隆起した地面に巻き込まれて行動不能に陥っていたかもしれん。
「ブルゥゥゥゥゥ。オレの奇襲を避けるとは運のイイ奴等だ。だがどうせオマエたちはここで死ぬのだ。このドグバス様の手によってなぁ!」
巨大な土竜はその大きな手を地面に叩きつけ、そのまま高速で地面に戻っていった。
「皆!気をつけろ。奴はまた地面から攻撃してくるぞ。固まらずにフォローしあうんだ!」
そう声をかけ、敵がどこから出てくるかを警戒していると、ふと視界に入る者がいた。
「ドヤネン!何をしている!お前は巻き込まれない位置に下がっていろ!」
全く何をしているのだ、あいつは。ドヤネンではドグバスの攻撃を避けることはできない。
この場にいても足手まといのお荷物だ。
「で、でも・・・。僕のバフは仲間と距離が近くないと効果がなくなっちゃうから・・・。」
「何をわけのわからないことを言っている!いいからお前は後方で神力の杖を振りかざしていろ!」




