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第七話・ラノベの主人公とヒロイン

文化村は思っていたよりずっと大きかった。


正確に言うと、思っていたより「文化村」らしかった——一棟の建物ではなく、何棟も連なった複合施設だ。


中村が先頭を歩き、ガイドのように説明してくれる。「あっちが劇場、こっちが美術館。俺たちが行く書店はあの方向——」


「わかったわかった」と薫が遮る。「来たことあるの?」


「ない。」


「じゃあなんで知ってるの?」


「来る前に調べた」中村は振り返らずに言う。「お前みたいに、頭なしで外出すると思ってるのか?」


薫が蹴ろうと足を上げると、中村は予想していたように横に跳びのいた。俺は二人を無視して後ろを歩いた。


入り口の自動ドアが開いた瞬間、冷房の冷気が襲ってきて、新しい本とコーヒーが混ざったような匂いがした。


「一時間」中村が腕時計を見る。「一時間後、入り口で集合」


「なんであなたが仕切るの?」薫が不満そうに言う。


「俺がお前の先輩だからだ」中村が言う。「それに生徒会委員でもある。お前がこっそり学校を抜け出してガムを買いに行ったことをバラされたくなければ、素直に従え」


「冗談ですよ、先輩」薫は笑いながら中村の腕に抱きついた。


私たちは散開した。薫は漫画を見に行き(神様も彼女がいつそれにハマったか知らないだろう)、中村は哲学コーナーで難しい理論を読み漁っている。


中村は私に選書の意見を聞かせろと言い、薫は漫画コーナーに付き合えと絡んできた。


俺はこの二人のしつこい誘いを断った。本当に眠くて仕方なかったのだ。


「ふん、この意地悪。ゆっくり寝てなさいよ。私たちが帰っても起こさないから」


「そうだそうだ」中村もうなずく。二人が珍しく同じ意見で一致した。


正直に言うと、書店に来る前にそんなことは考えていなかった。俺は周りに流されるタイプで、最初はどちらかと一緒に歩こうと思っていたが、二人の好きなものには全然興味が持てなかった。


結局、店内を適当に歩き回って、どこかで居眠りすることにした。


店内の本棚はとても高かった。肩の高さまでの低い本棚ではなく、天井が見えないほどの高い本棚だ。


当てもなく歩きながら、本の背表紙に手を触れては離す。一冊抜き取っても、見もせずに戻す。


ピアノ曲が天井のどこかから流れてきた。


最初は気づかなかった——書店で音楽が流れるのは普通のことだ。邪魔にならず、耳に留まらないようなBGMだろうと思った。


本当に立ち止まって耳を澄ませるまでは。


俺はこういう人間だ。興味のないことは一分もいたくないし、好きなことには一歩も離れたくない。


神よ、あれはまさか『ワルツ・フォー・デビイ』じゃないか!


俺は動けなくなった。口をわずかに開け、突然呆けてしまった人のようだった。表情は変わらなかったが、心の中では放送スタッフのセンスを絶賛しまくっていた。


背後から手が伸びてきて、指先がそっと私の右肩に触れた。


力は強くない。しかしその手の温度がシャツの薄い布地を通して、まるで細い針が肌に刺さるように伝わってくる——痛くはないが、背筋が一瞬で張り詰めるような、明確な「誰かがいる」という信号だった。爪が肌に食い込む感触があった。


この感覚はあまりにも慣れ親しんでいた。こんな無礼な方法で挨拶をするのは、あの人物に違いない……いや、今や二人いるかもしれない。


「雪乃弥子?」私は慎重に尋ねた。まるで答えを間違えたら首をねじ切られるかのように。


「雪乃弥子って誰?」来た者の口調は冷たく、まるで見知らぬ人と話しているようだった。しかしこの声はおそらく、もう私の脳裏に深く刻まれている。


振り向くと、エヴァーランドンのあの底知れぬ灰色の瞳と目が合った。


彼女は昨日と同じフリースを着ていた。そこに貼られた星条旗がどれほど目立とうと気にせず、何も本来あるべき位置からずらそうとしない。


「雪乃弥子って誰?」彼女は一文字ずつ尋ねた。どんな口調なのか読み取れない。


「私の友達だ」私は驚いて彼女をじろじろと見た。「来たくないって言ってなかったか?」


「本を買いに来たの」


「でも本は好きじゃないって言ったじゃないか」


「詩は好きなの。ゲーテとか、シェイクスピアとか」彼女は手に持ったビニール袋を掲げた。中には確かに数冊の詩集が入っている。


変だな。高校生でそんなものを好きになるなんて。


「二人と合流しないのか?」彼女が尋ねる。その視線は手元の詩集から離れていない。


「一時間もあるし、まだ早いよ」俺はあくびをした。「それに、あの二人は俺がいないほうが好き勝手に悪口を言えるからな」


エヴァーランドンはそれに答えなかった。詩集をビニール袋に戻す。その動作はとてもゆっくりで、壊れやすいものを扱うかのようだった。


私たちは並んで歩いた。書架の間の通路はそれほど広くなく、時折向こうから来る人と体を交わす必要があった。私たちは暗黙の了解で道を譲り合った。


「ここに何か由来があるって知ってるか?」と私が尋ねた。


彼女は首を振った。


「村上春樹の一番有名なあの本、『ノルウェイの森』。主人公とヒロインがよくここを一緒に歩いてたんだ」


「渡辺徹と直子?」彼女は首をかしげた。この質問に答えられるとは少し意外で、そして嬉しかった。まさかこの女が村上春樹の作品に触れたことがあるとは思わなかった。


「そういえば、誠君の名前って渡辺徹にすごく似てるわね」彼女は微笑んだ。


私たちはそのまま静かに歩き続けた。すべての書棚を通り過ぎ、すべてのレジを通り過ぎた。まるで渡辺徹と直子のように。


書店を出ると、中村と薫はもう入り口で待っていた。


薫はしゃがんで靴ひもを結んでいるところで、中村は壁にもたれてスマホをいじっていた。私とエヴァーランドンが一緒に出てくるのを見て、薫は眉をひそめ、中村は特に反応もなくスマホをポケットにしまった。


「あら!」薫が立ち上がり、私とエヴァーランドンの間で視線を行き来させた。「あなたたち……いつそんなに仲良くなったの? まさかカップル?」


「何バカなこと言ってるんだ」俺は不満そうに答えた。「まだ一緒にいて四十分だぞ」


「四十分あればいろんなことが起こるよ」中村がにやにやしながら言う。


エヴァーランドンはこれらの会話には耳を貸さなかった。彼女はビニール袋を手に私の隣に立ち、灰色の瞳は入り口の方向を見つめていて、次の目的地はどこか考えているようだった。


「おなか空いた」薫が言う。


「俺もだ」と私。


エヴァーランドンは鼻で「ふん」と鳴らし、自分もお腹が空いていることを示した。


「いい先輩に付いて来な」中村が自信満々に言う。「渋谷で一番美味しいラーメン屋を知ってる」


店内で、私たちは二組ずつ向かい合って座った。湯気の立つラーメンが運ばれてくると、誰も話さず、すする音だけが響いた。


半分ほど食べたところで、中村が突然箸を置いた。


「なあ」声を潜める。「知ってるか? ビッグニュースがあるぞ!」


薫は顔も上げずにラーメンを食べ続け、エヴァーランドンは興味ありげに顔を上げた。


「もうすぐ文化祭だ。ちゃんとやれば、生徒会が図書館の利用を許可してくれるかもしれない」と中村が言う。


「それは良いことですね」とエヴァーランドンが言った。


「まるまる三階分だぞ!」中村の口調には興奮が混じっていた。


「文化祭?」薫がようやく顔を上げた。口元にスープがついている。「じゃあ、うちの学校の軽音楽部は大儲けじゃない? あそこは少なくとも本当に曲を作ってるからね。あんたたちの部活は何をやるの? 人にチェスのやり方やトランプゲームを教えるの?」


「そうじゃない」中村が手を広げる。「俺たちだってやれるよ。ラノベを書けばいいんだ」


「うちの部で? 美少女ゲームすらやったことないし、ラノベも読んだことないのに、よくそんなものが書けるな? 笑わせるなよ」と俺。


「本当の話だ、坊や」中村が箸で私の頭を軽く叩く。「誰がラノベを書くのにそんなものが必要だって言ったんだ? 想像力だけじゃダメなのか? このバカ」


「想像?」薫が笑う。「でたらめもいい加減にしなさいよ、先輩」


「もちろんでたらめじゃない、薫」中村は真面目な顔で言う。「異世界転生とか、恋愛喜剧とか、美少女転校生とか……見ろよ、目の前に二人いるじゃないか。お前たちなら軽ーくラノベの一冊くらい書けるだろう」


私とエヴァーランドンは顔を見合わせ、それから揃って嫌悪感を露わにした——中村に対して。


「それ、すごくまずそうね」薫は顔をラーメンのどんぶりに埋めたまま言った。


「それに愚かすぎる」とエヴァーランドンが続けた。


中村はかなり傷ついたようで、うつむいて黙り込んだ。


「ねえ」薫が箸で自分のどんぶりに残った麺を突いた。「でも真面目な話、文化祭はどうするつもりなの?」


中村が顔を上げた。表情にはまだ少し傷ついた様子があったが、目はもう輝きを取り戻していた。「だから言ってるんだ。ラノベを書くってのは考えてもいい選択肢だって」


「まだ言うのか?」俺はため息をついた。


「話を最後まで聞けよ」中村は箸を掲げ、まるで先生が授業をするように空中で点を打った。「すごいのを書けって言ってるんじゃない。賞を取ろうとかさ。ただ……ごまかしってやつだ」


「素材はどうするの?」エヴァーランドンが本当に役立つ質問をした。


「二人だよ」これで薫も中村も声を揃えた。


「どうして?」エヴァーランドンはゆっくりとした口調で尋ねた。まるで全く気にしていないかのように。


「アメリカ人の美少女転校生に、部活に、オタクな同級生。いい素材じゃないか。俺が読んできたいくつかのラノベはこんな感じだったよ」中村は嬉しそうに言った。この計画に非常に満足しているようだった。


「私に何をしろと?」エヴァーランドンは最後のスープを飲み干し、紙ナプキンを取って口を拭いた。


「ええと……もうちょっと近づくとか?」中村が顎を撫でた。


「もうちょっと近づく?」エヴァーランドンが繰り返した。灰色の瞳がまっすぐ中村を捉えている。「こういう風に?」


彼女はそう言うと、何の前触れもなく私の方へ体を傾け、そのまま私の肩に頭を預け、そして手を伸ばして私の腕を抱えた。


「近すぎる、近すぎる!」薫がちょっと慌てて手を振った。


俺は? 俺はとっくに身動きが取れなくなっていた。自分でも理由がわからない。


「じゃあ決まりだな」中村が立ち上がり、うなずいた。「素材はこの二人だ。もう友達になったんだろ? 来月の文化祭になったら書き始められる。このチャンスは絶対に掴まないとな」


薫がようやく最後の一口を頬張り、もごもごと言う。「頑張ってね。良い印象を与えなさいよ。もし気に入られたら、彼女もあなたのことを好きになるかもね」


俺はこの人が俺を好きになるとは思わないし、俺も彼女を好きになるとは限らない。


ラーメン屋を出た。渋谷の昼下がりの日差しは眩しくて目が開けられず、通りには朝よりも多くの人がうようよしていた。


「じゃあ、誠とは一緒に地下鉄に乗らない。まだ買い物があるから」と薫が言った。


「一緒に帰らないか?」と私が尋ねた。


「いやいや、誠はエヴァーランドンと一緒に帰りなよ。君は彼女を自分の家に連れて行ってあげたらどうだ? あれはラノベで一番よく使われるシチュエーションだぞ」


彼は私を脇に引き寄せた。エヴァーランドンは小さく薫と何かを話している。


「一緒に行けよ、道が同じだろ」俺は最後の抵抗を試みた。


「君たち二人だけで行け」中村は強い口調で言った。


「忘れるなよ。部のためだ。ちょっとぐらい犠牲になれ」彼はまた強調した。「もしかしたら、もしもの話だが、本当にあの娘を落とせるかもしれないだろう?」


「わかってます、先輩」と俺は答えた。


彼らは先に立ち去り、私とエヴァーランドンだけが残された。


「案内して」彼女が言った。

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