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退魔部、部員2人。

こちら、共通から分岐した鬼丸のルートです。

「麗華さん、加賀魅先輩、猿方先輩……!部活には参加できなくても、これからも遊んだりしましょうね!」


泣きながら全員に花を渡すと、先輩たちは笑みを浮かべ涙ぐんでいた。

二学期が始まり、各々受験の為に引退することとなる。


「変なの、桃ちゃんと一緒住んでるのに寂しいや。」と麗華さんが言い、

「そうだね、関係自体が切れるわけじゃ……ないのに。」と猿方先輩が続き、

「も゛う皆に遊んでもらえないのぉ……」と加賀魅先輩が呻く。


(なんか受験生の感想じゃないのが混じってたか?)


私は一旦過ぎった疑問を流した。そして「お元気で!」と元気に言い放ち、朱天君と拍手をしながら送り出す。


麗華さんと猿方先輩がいたのなんか3ヶ月程度の期間なのに、これから先忘れることが出来ないのがわかるほどに印象的だ。きっと、これがかけがえのない青春の思い出というものなのだろう。


――遥は、猿方先輩の件が終わってから一切姿を表さなくなった。これからは当分朱天君と2人きりだ。


先輩たちを見送った後日、私は部室で退魔部の資料を整理していた。


「猿方先輩ノート、残してていいよね?先月も皆忘れそうになったし。」


「んー……でも、グループメッセージに魚拓あるし、みんなそっちの方見てるからいいんじゃない?10年後とかにまで残ってたら、謎の先輩猿方さんって都市伝説になるかもだし。」


それもそうか、と個人的に持ち帰る為ノートをカバンに入れる。


「寂しい……本当に2人になっちゃったね。あ!2人が嫌ってわけじゃないよ!?」


「分かってるから。大勢でいた方が楽しいとか当たり前じゃん?『桃』はいちいち気にしすぎ。」


……そういえば、部員が増える前は私も大人数が不得意だった。退魔部は私を大きく成長させてくれたのかもしれない。


「あのさ、朱天君。せっかくだしこの前の返事……」


約3ヶ月前、私は朱天君に告白され「NO」と返事をした。彼を嫌いになったわけではない、寧ろかなり好きだ。


だが私は遥かへ残ったこの未練に近い何かが恋なのか、純粋な寂しさなのかにまだラベルを貼れていない。

曖昧なまま放置したくなかったからこそ、一度断ったのだ。


しかし、夏休み中皆で行った花火大会にて……


『遥と茂木の関係はよく分かってる。2人の気持ちが未消化なまま桃とどうなりたいとか思ってないし。……でも俺、やっぱり桃が好き。傍で守りたいんだ。』


と、再度告白してもらってしまった。


きっと朱天君は返事を期待していない。あれはほぼ意思表示に近い発言だったと思う。


だが人を好きでいることにはエネルギーがいるのだ。こんなに良い人を宙ぶらりんで放置するのは気が引けた。


「ごめんなさい、だろ?それ聞いても俺多分また告白するよ。無駄だから、返事しなきゃとか考えなくていいんだってば。」


「でも……いいのかな。朱天君いい人だし……」


「好きでいてもらっちゃって悪いなーって言いたいわけ?桃が俺に好かれるの無理って場合を除き、あんたは気にしなくていいの。」


相変わらずの言語化能力でキッパリ整理され、私はそれ以上何も言えなくなる。


「……よし、そろそろ俺帰るわ!戸締りよろしくな。」


朱天君は宿題を終えると、そう言って立ち上がった。


「……朱天君、前から17時前くらいに急いで帰るよね……あ、別に深い意味はないよ?今日も私一人か〜寂しいな〜とか思ってないし、話し相手が欲しかったら式神がいるし?帰れば麗華さんもいるから。」


早口でぼやく私を見て額を押さえる朱天君。そして「ちょっとこの後付き合ってよ。」と言って私の手を引いた。


……


戸締りを終え、学校を出た後に連れてこられたのは少し古びたスポーツ店。


「お袋、友達連れてきた。」


誰もいないカウンターに朱天君が声をかけたかと思うと、カウンターの下に隠れていたであろう線の細い女性がぬっと現れ「あら〜、いらっしゃい。」とこちらに微笑んだ。


「うわっ……!?どうも……」


小柄で色白だが、この特徴な的な麦色の髪は……


「朱天君の、おねえ……さん?」


私が尋ねると女性はくすくすと笑い

「やあだ〜、おに君この子凄いいいじゃない!はあい、私おに君のお姉ちゃんです!ピチピチの女子大生っ」と名乗る。


朱天君は怪訝な顔で「母親だよ、普通に40代だし……あとおに君はやめろ!」と捲し立てた。


「よん……」


昔遥のお母さんを見てても思ったが、魔者の女性は本当に年齢がわからない。吸血鬼だから若々しいのかと思っていたが、彼女を見るとそういうわけでもないようだ。


(ちょっと羨ましい……)


「うち、母さんと二人暮らしなんだけどさ。力仕事とかはきついから夕方の締め作業だけ手伝ってんの。桃も寂しいなら手伝ってよ。」


朱天君は言いながらダンボールを持ち上げこちらに差し出す。


「は!?寂しくないし!……で、私は何したらいいの?」


ダンボールをぶん取りながら口にする私を見て、ケラケラと笑う朱天君と朱天君のお母さん。


(何よ……親子揃って。)


だがその暖かい空気感に、退魔部ロスで傷ついた心が少しだけ癒されたのだった。


「よーし終わり!桃、報酬持ってくるから待ってて。」


全ての作業を終えると、朱天君はそう言って店の奥に消えていく。


「え!?いいってそんな……!」


止めたが、声は届かない。その様子を見て朱天君のお母さんは「未成年タダ働きさせちゃまずいもん、持っていって。」と言って微笑む。


(なんか……タイプは違うけど、ちゃんと朱天君のお母さんってわかるな。)


朱天君はゴム手袋をはめ、桃の入った箱を差し出してきた。中にはものすごく大きくて色鮮やかな桃が詰まっている。


「え、いいの!?これ絶対買うと高いよ!?」


私が驚きの声を上げると、「ご近所さんから桃の差し入れがあったんだけどね〜?意外と知られてないのよ、鬼にとって桃は毒なんだ。痛みやすいし持って帰って。」と朱天君のお母さんが教えてくれた。


(そう……なの!?そういえば私の名前も魔除けになるからって付けられたんだって教えてもらったな……)


遥と加賀魅先輩、猿方先輩は普通に食べていたところを見るに、日本由来の魔者にのみ効いてしまうようだ。


「そういうことなら、いただきます!ありがとうございます!」


私が帰ろうとした時、朱天君のお母さんが茶化し気味に「モテる男はこういう時、送ってあげるんだぞ〜?」と口にする。

朱天君は少しビクリと揺れてから「い、今送ろうかって言おうと思ってたし!もーお袋、店閉じたんだし部屋戻ってろよ!」と少し赤くなった顔で声を荒らげた。


(朱天君もこういう反応することあるんだ……)


朱天君の家を後にして、私は朱天君の隣を歩きながら満足げに箱の中を覗く。


「私桃大好物なんだー!独り占めしよっかな……」


ご機嫌な私に、朱天君は「今日は手伝ってくれてありがとな。」と礼を言った。


「え?……いやいいよ!結構楽しかったし。なんかさ、3人しか居なかったけど賑やかだったねー!部室にいても寂しいし、放課後は通いつめちゃおうかな。」


なんて、呑気に言う私とは対象的に、朱天君は悲しそうに俯いている。


「どうしたの?」


尋ねると、朱天君は少し悲しそうに口を開き「言いにくいんだけど……俺、近々高校辞めるかも。」と呟いた。

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