↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/81

やっと見つけた本音

こちら、共通から分岐した遥のルートです。

最近、猿方先輩の能力の影響か、記憶が大変朧気であったが……私の頭の中にはしっかりと遥に拒絶された記憶が残っていた。


部室の扉を開けると、勿論遥はいない。


(なんだよ……あからさまに避けちゃってさ。)


「おはよー桃ちゃん!今皆で大富豪しようかって話してたんだけど、一緒にどう?」


あの後、麗華さんは正式に私の世話係としてこの学校に転入。猿方先輩も退魔部一員として参加するようになった。

2人は退魔部に馴染んで……いや、麗華さんに至ってはもう馴染みすぎていて、退魔師の仕事をこなしながら毎日顔を出している。


「あ……はい!」


促されるまま席に着いた。始めは私1人しかいなかったというのに、この部も大所帯になったものだ。


(でも……)


遥がいつも座っていた、端の席を見やる。いつもデコデコキラキラのモバイルバッテリーやら鏡やらの小物で埋め尽くされている場所に何もないと、少し寂しく思えた。


(遥、元気してるかな?魔力切れ、おこしてないといいけど。)


……


大富豪で遊んだ後、各々予定があるということで17時には解散となる。私はスクールバッグを持ち上げる朱天君に「あ……朱天君、今日この後のこと……」と声をかけた。

朱天君は少しぎこちなさそうに目を伏せてから「メッセージで言ってたやつな。付き合うよ。」と返事する。


朱天君への告白の返事を、私はずっと後回しにしていた。そして今日満を持して、朝【返事をさせて欲しい】とメッセージを送ったのだ。


私は朱天君と駅前のベンチでしばらく世間話しをしてから、大きく咳払いをする。


告白の答えは――ノーと返事するつもりだった。

というのも、私は以前加賀魅先輩が言ったように今誰が好きなのか自分でもわかっていない。


こんな中途半端な状態でとりあえず、とか朱天君がいい人だから、なんて理由で告白を受けたくなかった。


「朱天君、本題だけど――!わ、私ねっ!」


朱天君に向き直り、切り出す。朱天君の喉仏が動き、彼も息を飲むほどに緊張していることが分かった。


「もおーー!口元にチョコ付いちゃってるぅ!」

「はるくんってば大きくなっても可愛いんだから♡」


その時、そんな甘ったるい声が聞こえてきて私と朱天君はギョっと声の方を見る。


すると、成長した姿の遥が4人のとびきり可愛い女子に囲まれアイスを頬張っているさまを目撃してしまった。


「わあ……」


朱天君の声が漏れる。普段キラキラ男子に囲まれている彼でも、あの様子は異様に感じるみたいだ。


遥が通り過ぎそうなタイミングで、「遥、お疲れ。」と声をかける朱天君。遥は朱天君の方を見てから手を振っていたが、その後ろにいた私を見てゆっくり手を下げた。


「えっと……邪魔だったらごめんだけど聞いていい?何してんの……?」


朱天君に尋ねられ、遥は自分の爪を見ながら「遊んでるんだけど、見てわかんない?」と不貞腐れたように答える。


遥が本来の姿に戻ってから、元々高かった女子人気がさらに上昇したことは噂で耳にしていた。だがここまで堂々と人前で女子を侍らせるとは、その度胸だけは大したものである。


「あの……君たちは、遥の友達?」


朱天君が眉を下げながら女子たちに尋ねると、女子たちは「友達っていうか〜、お姉ちゃん?みたいな。」とやけに間延びした口調で答えた。


「はるくんってぇ、ちょっと天然さんなんですぅ〜。私たちがいないと全然だめでえ。別に女の子侍らせて遊んでる訳じゃないんですよ?」


女子の1人が潤んだ瞳で続く。


((いや、女の子侍らせて遊んでるだろ……))


朱天君の表情からも、私と同じことを考えていることが読み取れた。


(そっか、遥はもう……私だけにしか甘えない人じゃないんだ。)


そう残念に思うと同時に、先刻まで純粋な気持ちで心配していた私が馬鹿みたいに思えてきて……拳が怒りに震える。


「そういうわけだから、僕はもう行くね〜?2人とも何か話してたんでしょ。そちらはそちらでごゆっくり〜!」


遥は笑顔で言い残し、立ち去ろうとした。


「遥」


呼び止めると、遥はこちらを振り返ることなく足だけを止める。


「私、まだ遥と何にも話ついてないよ。逃げるんだ、私の気持ちも聞かないで、勝手に僕のいないとこで幸せになれよとか思ってるんでしょ。」


不満を吐き捨てる私に、遥は「何の話?こわーい。僕はお前のこと1度も意識したことなんかないし?誰とくっつこうがどうでもいいんだけど。」と反論した。


「じゃあ……何で指輪、まだ持ってたの?遥の部屋で見たんだから!赤いハートの指輪、昔お揃いで買ったやつ!遥、本当に私のことどうでもよくなったなら、なんであれを大事に持ったりしてんのさ!」


言うと、遥は突然大笑いしてからこちらに振り返り「思い出を大事にすることと現在進行形で気持ちが残ってるかどうかは別だろ。お前さ、恋人ができた同級生の写真とかいちいち捨ててんの?」と嫌味を吐いた。


「……!」


瞬間、喉が詰まってしまう。確かにそうだ、思い出と今ある気持ちは、別物……遥の中で、私はただの思い出として処理されつつあるのかもしれない。


「……何それ、可愛くない奴。」


遥の言葉には筋が通っている。だが、今それを飲み込んでしまったら壊れてしまうと思った。負け惜しみのように出てきた言葉を最後に、朱天君の手を取りながら自分から立ち去ろうとした時だった。


遥が目を大きく見開いて固まってるのが、少し視界の端に映り込んでしまう。


(何よ……やっぱりどうでもいいとか、嘘じゃん。)


私は朱天君の手を引きながら早足で駅ビルに逃げた。


(遥の馬鹿、嘘ばっかりついてさ……!もう振り返ってやんない。追いかけてもやんないんだから。

周りの女の子たちに慰めて貰えばいい。)


遥はきっと、私のことをどうでもよくなんて思っていない。「可愛くない」と吐き捨てたことで意図せずそれを証明してしまい、心臓が噛み付かれたみたいにチクチクと痛んだ。


(なんでよ。酷いこと言った罪悪感があるから?退治されてない魔者だから……!?ちゃんと話してくれたらいいのに。)


「茂木!ちょっと、大丈夫!?」


朱天君の声で、私はハッと我に帰る。


「ご……ごめん!勝手に連れてきちゃって!」


急いで彼から手を離す私。朱天君はそれを見て「話、明日にする?」と言ってくれた。


(それじゃ、朱天君に悪いし。)


朱天君に向き直ると、大きく息を吸う。もう、逃げてはいけない。


先程遥と話したことで、やっと自分の気持ちがわかった気がする。

私は――


「朱天君、ごめん。」


大きく頭を下げた。朱天君は何も言わず黙り込んでいる。


「私……私ね、遥が好きなんだ。」


頭を上げ、そう言い放った時。朱天君はやけに穏やかな顔で微笑んでいた。

新着欄を荒らしたくないのでまとめて上げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。