微かに残るもの
「退魔部の創設メンバー!?」
他でもない私が、1番その言葉に驚いていた。
しかし、テスコードのやりとりを思い返せば筋は通る。メッセージでは「今日の活動」等のワードが散見された。
「……てことは、こんな部活茂木さんくらいしか作らないだろうし、当然君は茂木さんに誘われてこの部に入ったんだよね。」
加賀魅先輩が猿方先輩に尋ねると、彼はゆっくりと頷く。
「茂木さんとは委員会が同じで……そこからたまたま仲良くなったから、同好会を作ろうって話になった時に数合わせで参加したんだ。」
「付き合ってたの!?」
麗華さんの無邪気な質問に、猿方先輩のみならずその場にいた男子全員が咳き込む。
「つ、付き合ってない!何聞いてんだよお前!」
顔を真っ赤にしながら言う猿方先輩を見て、麗華さんは「調査だよ調査〜、必要な情報だったんだもん。」とヘラヘラ笑っていた。
(嘘だな、絶対楽しんでる。)
「ねえ、猿方君ってまだ退魔部員なの?もしそうなら調査手伝ってよ~!悪魔を退治したら、ももちゃんが記憶取り戻すかもしれないし!」
その言葉を聞いて猿方先輩は「まだ部員だけど、辞めるのが面倒だっただけで……どうでもいいから。」と口にする。
なぜかその言葉を聞いて寂しくなった。式神の態度やメッセージのやりとりでわかる。猿方先輩と私は恋愛関係になかったとしても、仲のいい友人ではあったはずだ。
(どうでもいいとか言われちゃうと、ちょっと堪えるな。……ん?まて、今重要なヒントを見逃がしたような……)
「あー!式神!」
突如私が大きい声を出したものだから、部員たちの体がびくりと震える。
「何だよ急に大きな声出して!」
朱天君が言うので、私は「ごめん」と謝った後「式神がね、猿方先輩のこと覚えてたんです!もう一回呼んだら何かわかるかも!」と言い放つ。
「マジ!?超重要な情報じゃん!もしかしたら悪魔が誰なのかも知ってるかも……!」
「……なんか、いいヒントがあったみたいで良かったね。僕がいなくても問題ないかな?それじゃ……」
目を輝かせる麗華さんとは対照的に、おずおずと去ろうとする猿方先輩を見て、加賀魅先輩が「どこ行くの?一緒に聞いたらいいじゃん。当事者が全員いたほうが話が早いでしょ。」と釘を刺した。
(なんか……珍しく気が立ってる?加賀魅先輩。)
私はノートの紙を一枚千切ると、適当な形に形成して式神を呼び寄せる。すると紙が浮き上がり、猿方先輩を見るなり「鳴海先輩だ!」と声を上げた。
「なるみ……せんぱい……?」
朱天君が呟きながら後ろにいた猿方先輩の方に振り向く。
「ひっ……!な、なんだよ!俺の下の名前だけどなんか文句ある!?」猿方先輩は朱天君におびえながらもそう威嚇する。
(強気なのか弱気なのか……震えててチワワみたい。)
「ね、ねえ式神!その人知ってるんだよね!?どんな関係だったとか教えてくれない?」
そう頼み込むも、式神は「えー?」と唸りながらくねくねしたのち「なんかなあ、そういう個人的なこと聞いて距離縮めてくる人って苦手なんですよねえ。」と答えた。
「ぐぬ……!私あんたの作者なんですけど……!」
「出た出た、親だからって偉そうにして言うことなんでも聞いてもらえると思ってる大人。私はそういった権威には屈しませんよ。」
半笑いでいう式神を握りつぶそうかどうか考えていると、加賀魅先輩が式神に軽く触れて「必要なことなんだ、教えてくれない?」と言う。
すると式神は1秒も待たず「わ……私で良ければお役に立ちます!」と嬉しそうに答えた。
(なんか……恥ずかしい。私ってはたから見たらこんなかんじなのかな……)
式神は私の方を向くと、「何が知りたいんですか?」と尋ねてくる。
「猿方先輩が私とどんな関係だったか教えて欲しいの。お願い。」
「うーん……まあ、間違いなく仲は良かったと思いますよ。付き合ってはいなかったみたいですけど。」
式神の返答を聞くなり、加賀魅先輩と朱天君が胸を撫で下ろした。
「えっと……私、今猿方先輩のこと覚えてないんだけど!何が原因か知ってる?」
「え?普通にあなたが記憶力皆無なだけでは。」
式神に言われ、私は再びこいつを握り潰そうかと手を前に出す。
すると麗華さんが止めに入り、「退魔部って、元々何人グループだったの?」と尋ねた。
「うわ、ギャルだ……まぶし……まだ当時は同好会でしたけど、メンバーは恵子と桃子、あと鳴海先輩の3人です。恵子は名前だけ貸してるだけで、ほぼ活動に出てませんでしたね。顧問の先生なんか1度も顔見せしませんでした。」
それを聞いて私と麗華さんは顔を見合わせる。私の知らないもうひとりの部員がいて、私の記憶を奪ったとか、そういうことではないみたいだ。
「ありがとう、もういいよ。」
言うと、式神は力無く床に落ちる。
「恵子ちゃん?って、知り合い?」
麗華さんが尋ねる。
「はい、私の数少ない友達です。数合わせでこの部に入ってくれた凄くいい子で……」
「一応その子にも話聞いてみようか。朱天君に加賀魅君、君たちももちゃんの使い魔なんだよね?悪魔調査に協力してくれない?」
麗華さんの呼びかけに、二人は「勿論!」と元気よく答えた。……一歩で、猿方先輩はずっと悲しそうに俯いている。
しかしそこに容赦なく「猿方君も手伝ってね、退魔部メンバーだし。」と言いつける麗華さん。
猿方君先輩は思いもよらぬ言葉に本気で動揺しながら「はい!?なんで!?」と声を上げた。
「……猿方君が手伝うなら、さ。茂木さんと猿方君の2人チームになって、記憶を思い出せるように色々試してみるっていうのはどう?一緒に見たものとか、言った場所とか、もう一度共有したら思い出すかも。」
加賀魅先輩が言うと、猿方先輩の眉がピクリと動く。
「……それ、いい案だね!猿方君のこと思い出したら、記憶が消えた原因事思い出せそうだし!残りメンバーで別調査したら無駄がないね!どう?猿方君。手伝ってくれない?」
麗華さんが尋ねると、また縮こまって嫌がると思っていた猿方先輩が「いいよ」とすんなり了承した。
(あれ、なんか最後だけやけに素直だな……)
「よーっし!あとは遥君にも協力してもらえれば完璧なんだけど……今日はいないね。いつもそうなの?」
麗華さんの問いかけに、朱天君が「いや……遥がいないのはだいぶ珍しいです。」と答える。
(遥……轟鬼との戦いでだいぶ無理してたし、心配だな。)
一度解散してから、私は麗華さんとの帰り道で遥に【大丈夫?今日、来なかったじゃん。】とメッセージを送った。
すると既読がついてから数分後くらいで【一日僕が見れなかったぐらいで騒ぐなよ。こっちだって忙しいの。】と淡白な返事が返ってくる。
空はもう灰色になっていて、もう少ししたら降り出しそうだ。
(確かに、毎日参加しなきゃいけないわけでもないし……お節介だったかな。)
そう思ってスマートフォンをスリープにしようとした瞬間、遥から【僕のことはほっといて】と追加でメッセージが来る。
それを見て私はいてもたってもいられず、麗華さんに「ちょっと遥の様子見てきます!」と断ると、全速力で駆け出した。
新着欄を荒らしたくないのでまとめて投稿してます。お時間のあります時に読み進めていただけますと幸いです。




