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朱天鬼丸の気持ち

「サッカーグラウンド……!2人の原点を舞台にしてるんだ!」


「みたいだな、遥たちに報告すっか。」


朱天君は言いながらスマートフォンを取り出し3人に連絡する。

すると突然、「えっ」と大きな声を上げた。


「どうしたの?」


「杭を見つけて抜こうとしたら轟鬼の連中に襲われたって……!」


「ええ!?」


焦って自分もスマートフォンを取り出した次の瞬間「でも加賀魅先輩が秒で撃退したって。」という一言を聞いて力が抜ける。


(そっか……よくよく考えたらあの面子に心配とか必要ないわ。)


「……遥にピンのこと伝えたら、一旦公園で集まろうってさ。」


「分かった。」


立ち上がろうとすると、朱天君が「まだ大丈夫、昼集合だって。」と口にするので、もう一度ベンチに腰を落ち着けた。


「茂木、あのさ……ひと仕事した後だし、ちょっと杭と関係ないこと、話していい?」


「え……う、うん。」


私の顔を見ずに、珍しくどぎまぎとしている朱天君を見てこちらも緊張してしまう。

朱天君は少しだけ深呼吸した後で、

「あのさ、俺のこと……退治してくれないかな。」と言い放った。


「はい!?」


思わぬお願いに驚きの声のみが漏れる。


「ごめん、急に言われても意味わかんないと思うんだけど……俺、さ。」


朱天君はそこまで言いかけると、やっと私を見て

「茂木が好き。暫く気持ちを整理したくて黙ってたけど……やっぱり、絶対、間違いない。」

と告白した。


固まる私の沈黙と答えを待つ朱天君の沈黙が重なり、周りは風の音が聞こえるくらい静かだ。


「あ……朱天君が……?私!?な、何で……わたくしとてつもなく陰の者ですが……っ」


目を白黒させながら言う私に、朱天君は「陰とか陽とかやめてってこの前言わなかったっけ。」と言葉を浴びせる。


小さくなっていると、朱天君はため息1つしてから「たまに……さ。茂木のこと好きすぎて、冷静じゃいられなくなる時があるんだ。俺魔者だし、暴走して……その……」と、言ってから何かを思い出したように真っ赤な顔で口を塞いだ。


「?……ああ、暴走するのが不安だから、先に退治されたいってことかな。」


「あ……そ、そう!そういうこと!」


朱天君は目を泳がせながら大きな声で答える。

私はやっと納得すると、鞄から加賀魅先輩用に作っていた制御札を取り出した。


「何それ、ピアス……?」


「イヤリング。加賀魅先輩凄く身につけるものに拘るから、ダサいと勝手にデザイン変えちゃうのよ。……退治されるので本当にいいのね?私の許可がないとこの札、取れないけど。」


尋ねると、朱天君は「いいよ、付けて。」と口にしてから髪をかきわけた。


「えっと……名目上私の使い魔になるけど?」


私がもじもじしながら何度も確認したのが面白かったのか、朱天君は茶化すように「いいよ、茂木の男になる。」と笑う。


ムッとしつつも左耳にイヤリングを付けると、炎のような光が私と朱天君を包んだ。


「……に、似合うね、イヤリング。」


妙に気まずくなりぱっと手を離すと、朱天君は私を見下ろし「あのさ、茂木にずっと言ってた小言だけど。」と真剣な顔で呟く。


「は、はい……あの、私に警戒心がないとかそれ系のやつでございましょうか……」


「あれ、今思うと全部独占欲だったかも。……許してくれる?」


特に触れられたわけでもない、甘い言葉をかけられたわけでもないのに、朱天君のこちらを見下ろす目が妙に色っぽくて、心臓が破裂しそうなほどに鼓動した。


「え……あ……大……じょぶ……許しましょう。」


小さな声で答えると、「ごめんね、今日は変な感じ出すのやめる。一旦いつも通りな?」と笑って私の手を引く朱天君。


「なんで私なの?」とか、「朱天君は私でいいの?」とか、聞きたいことは沢山あったが、聞ける雰囲気でもない。


初夏だからか、私の顔も熱いし、朱天君の耳もほんのり赤くなっていた。


朱天君の肩越しに光る初夏の太陽が、私にとっての彼を現すように眩しく照らす。

……それでも、朱天君が私の手を引いて歩いてるその現状が……不思議で、仕方なかった。


途中、朱天君がふいに

「あのさ、今日じゃなくていいから……返事、欲しい。」と呟く。


「いつまでに……でしょうか。」


尋ねると、「ミスターコン終わってからは?茂木の邪魔したくないし。」と朱天君は答えてくれる。


ミスターコンが終わったら……告白の返事を……


息を飲みながら、「わかった」とだけ答えた。

思えば私、加賀魅先輩にもちゃんとした答えを出していない。


ずっと好きでいることって、カロリーも使うしストレスも感じることだ。なあなあにしてはいけない、と思ったあとで思考が停止する。


(何それ……それじゃまるで、誰かを長いこと想ったことがあるみたいじゃない。)


朱天君の背中を見つめながら、私は何故かその時、目や鼻につんと込み上げる謎の感情に耐えていたのだった。

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