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名探偵

「茂木さん?いつまで玄関にいんのさー、遥来たよ。」


そんな呼び掛けにも答えられないでいると、加賀魅先輩は業を煮やしたのか、固まって動けない私の顔を後ろから持ち上げ

「遥かに何か言われた?」と尋ねた。


瞬間、頭がくらりとして力が抜ける。

また魔力を吸われてしまったようだ。


「あ……もー茂木さん、俺の顔見るだけで魔力出てくるようになってない?」


加賀魅先輩が目を細めながら口にする。


「いや!どこが『だけ』なんですか!?めちゃくちゃ距離近いでしょうが!」


「元気出たね、良かった。で?なんて言われたの?」


加賀魅先輩は私の顔を掴んだまま尋ねてきた。


「……何浮かれてんのって……」


唇を尖らせながら言う私を見て、先輩は笑い声を零す。


「ガキには理解できなかったかもなー。大人な加賀魅先輩は茂木さんの可愛さ、いつでも理解できてるよ?」


「きゅ、急になんですか……」


照れて先輩の顔も見れないでいると、まるで救いの鐘が鳴るかのごとくインターホンが鳴った。


(朱天君だ!)


嬉々として扉を開けた先には、お菓子の箱らしきものを持った朱天君が立っている。


そして私の姿を見るなり、一度ドアを閉めた。


「あれっ、朱天君!?」


名前を呼ぶと、朱天君は恐る恐る扉を開ける。


「……やっぱり……似合わない?この服。」


肩を落としながら尋ねる私に、朱天君はお菓子の箱を差し出しながら「誰がそんなこと言ったわけ?……可愛くて心臓に悪かっただけなんですけど。」と呟いた。


私はひとまず安心して、自己肯定感を回復させてから朱天君を中に招く。


「ちなみに俺の選んだ服。」


廊下を通る途中、後ろから加賀魅先輩の囁き声と朱天君の咳が聞こえてきた。


(風邪かな……?遥も顔色悪かったし流行ってるのかも。)


……


全員が居間に揃うと、遥が気怠げに口を開く。


「じゃ、連休中の作戦だけど……午前はなるべく杭探し、午後から2手に別れて……俺たちミスターコンメンバーはチラシの準備、退魔メンバーは引き続き杭探しね。」


「午前の杭探しもチームで別れる?ほら、桃ちゃんは1人より誰かといた方がいいと思うし。」


遥の作戦に同意しつつ、麗華さんがそう提案する。

私にはほぼ戦闘力と言っていいものがない。

また浩平さんと接触でもしたら危険だ。


「じゃあここは使い魔である俺が――」


「俺が行く。茂木と俺が一緒にいれば浩平をおびき寄せられるかも!浩平は多分茂木を警戒してないから。」


加賀魅先輩が名乗り出ようとした所で、朱天君が立候補する。


「……じゃ、それで。」


遥が淡白にOKを出すと、麗華さんが「じゃ、残りは3人で行動しよっか。」とまとめて一度解散となった。


「鬼丸〜!今日の茂木さん可愛すぎるから変な虫いたらやっつけてね!片時も目離しちゃだめだから!」


加賀魅先輩の小言を聞いてから、朱天君は鹿島高校を目指し歩き出す。


お互い、杭を探していたこともあり下を向いて黙り込んでいる。

暫く探すも杭は見つからず……朱天君が「疲れたから休憩しよう」と言うので一度水分補給タイムを取ることとなった。


(疲れたってさ……体力無限の癖に無理あるでしょ。)


私にも察しが付いている、朱天君は私を気遣っているのだ。


「朱天君さ、私の服装とかまた気にしてくれてるなら遠慮しなくていいよ?見て!靴だけはスニーカー履いてきたっ!」


得意げに靴を見せびらかすと、朱天君は「茂木が気にしなくとも俺が気にするの。せっかく可愛い服着てんだしもうちょっと気遣ったら?」とさっぱり返してくる。


(ぐぬ……同い歳なのになんか余裕あるんだよなこの人。)


「……茂木ってさ、ほんと警戒心ないのな。男に簡単に服選ばせたりして。」


ふいに、朱天君がそう呟く。その時握られていたジュースの缶が少し凹んでいた。


「か、簡単にではないよ!?昨日色々振り回したお礼としてだね……!」


「そんなことしなくたって、あの人茂木といれれば幸せなんだってば。おおかた茂木が申し訳なさそうにしてたの見てられなくてわざわざ『服選びたい』って付き合わせたんでしょ。」


一言一句的中する朱天君の推測に、私はギクリと身を震わせる。


「……あ、その反応正解だな?俺だんだん茂木のこと分かってきたかも。」


からかうように言われ、私は恥を誤魔化す為まるでやけ酒するサラリーマンがごとく缶ジュースをごくごくと一気飲みした。


「そ、そんなことより!これからどうやって杭探そっか!」


話を逸らすように大声で尋ねると、朱天君は少し考えてから「……杭ってさ、何かの形になるように打たれてるんだよね?例えば五芒星とか。」と呟く。


「え?あ……そうだね、加賀魅先輩曰く結界になってるらしいから。」


「なら……杭の2個目を探すのもありだけど、前遥が言ってた『不法侵入された建物』を参考にしない?」


言いながら、朱天君はスマートフォンのマップを見せてきた。


「まさか、入るの!?」


「違うよ。ネットで被害があった箇所を調べて、ピンを打ってくの。……あ、見つけた!猫カフェの人がポストしてる。じゃあここにピンを置いて……」


朱天君の意図をやっと察すると、自分もSNSで轟鬼の情報を集める。


「ねえ、隣町の総合体育館にも侵入したって!」


「ナイス!」


件数こそ少なかったものの、やっとそれらしき図形がマップに浮かび始めた。


「欠けてるけど、形っぽいの見えてきたね!」


「ああ。」


朱天君が私が杭を見つけた学校付近にもピンを打つ。


そして、そこから想像でピンを刺していき、出てきたのは……


「……トゲトゲしてる……」


「9角形、だな。そんで……昔借りてたサッカーグラウンドを囲んでる。」


朱天君は最後のピンを刺しながら、そう口にしたのだった。

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