よく見てくれる人
私は加賀魅先輩に連れられ、ショッピングモールに訪れる。
可愛い服が沢山並んでいて、とても煌びやかだった。
(ここ、女の子向けの服しかないよね?こんなとこで何したいんだろ……?)
不思議に思っていると、加賀魅先輩は立ち止まり「俺、茂木さんの服選んでみたい!好きな人が自分好みの服着てくれるとか最高だもん!」と言って楽しそうにフロアを見渡す。
「え!?いやでも……!キーホルダーとはわけが違いますよ、そんな高いプレゼント受け取れません!」
「あれ、嫌なんだ。加賀魅先輩のわがままは聞きたくないの?」
加賀魅先輩のむくれ顔を見て、(そうだよね、一緒に待ってもらったりこき使った挙句に報酬らしい報酬すら渡せてないのに断るのもおかしい……)と考えを改めた。
「じゃ、じゃあ先輩が選んだのを私が買います!大丈夫、バイトしてるんで!」
意気揚々と言う私に、先輩は「茂木さんって着たくない系統とかある?」と尋ねてくれる。
「いえ、誠心誠意なんでも着用させていただきます!」
そう答えると同時に、先輩は優しく私の手を握って歩き出した。
(あ……)
「嫌?手繋ぐの。」
「いえ、嫌ではないですがその……ちょっと魔力が吸われそうだなって……!いえ大丈夫!耐えます!」
なるべく加賀魅先輩の顔を見ないようにしながら歩いていると、先輩は立ち止まり、
「こういうの好き!着て欲しいな」と服を持ってくる。
それはチェックのワンピースで、
大人っぽさと上品さが同居したデザインだった。
試着を済ませそのまま着て店を出ると、加賀魅先輩は「可愛い!抱きしめたいくらい可愛い!」と目を輝かせる。
そしてその後も小物やら靴やらを選んでもらい……最終的に、自分が少しいい女に見えるコーディネートをしてもらった。
(リア充っぽい……!服は自腹とはいえ、プロレベルのスタイリングさせちゃって良かったのかな。)
「ふふ、ずっと鏡見てる。気に入った?」
エントランスの休憩スペースで、柱の鏡面に吸い込まれる私を加賀魅先輩は近くのソファで眺めている。
「自分がいい女に見えます!メイクとかは変えてないのに……!凄いですね!」
「そんなことないって、茂木さんはずっといい女だよ?」
加賀魅先輩は立ち上がり、隣に並ぶ。
鏡越しでも分かるその圧倒的なビジュアルの良さに改めて驚いていると、先輩は少し身を寄せ
「お似合いだね、俺たち。」と呟いた。
「!?」
急に囁かれた言葉に動揺し、私の体から魔力が出ていってしまう。
「あ!ごめんね、魔力貰うつもりじゃなかったんだけど……ほら、茂木さん今日皆で歩いてる時縮こまってたでしょ?自信ないのかなって思ったからさ。」
(よく……見てくれてるんだな、私のこと。)
この人は不器用な時もあるが、人をしっかり見てそれに合った優しさを与えられる人だ。
だから夢魔だとバレてもあまり非難されないし、好かれるのだろう。
「……この格好なら、今後皆と歩いても浮かないかもしれません。」
「元々浮いてないってば。まあいっか。もう遅いし帰る?」
加賀魅先輩に尋ねられ、私は「ですね!帰りましょうか!」と答え駅の方向に歩き出した。
――帰りの電車の中で、麗華さんから【戦利品!すっごい可愛い!】というメッセージと共にうさコウモリの写真が送られてくる。
ドア近くの手すりに捕まりながら【楽しめたようで良かったです。】と返すと【うん、今日はありがと!また明日桃ちゃんの家に集まると聞いたので、よろしくね!】と返事がきた。
(わ、私の家集合だ!?聞いてないぞ遥め……!あと遥の桃ちゃん呼びが麗華さんに移ってるし。まあ、嫌じゃないからいっか。)
「すみません、麗華さんにメッセージ返してて……今日はありがとうございました、先輩!他の服もいっぱい着ますね!」
スマートフォンを鞄にしまってから言うと、先輩は「うん、また着てるとこ見せて!俺茂木さん見てる時が1番幸せだから。」と微笑む。
顔が熱くなるのと同時にまた魔力が吸われていくのを感じ、「制御札、帰ったらまた作らないと。」と呟いた。
「ごめんね、厄介な体質で……そうだ、麗華さん今日が初対面なんでしょ?いい人そうで良かったね。」
「ええほんとに……凄い速さで馴染んでたし、上手くやっていけそうです。」
答えると、加賀魅先は「分かる。なんか前から居たんじゃないかって感じしたもん!あ、鬼丸に似てるからかも。ほら、雰囲気がさ!」と口にする。
「あー……確かに。女性版朱天鬼丸……」
そこまで言いかけて、私は察してしまった。
遥が以前探していた「運命の人」の条件に、麗華さんはぴったり当てはまっている。
「……」
「茂木さん?大丈夫?」
満更ではなさそうだったし、2人で帰ったならもう、遥も気付いているかもしれない。
無理な理想に当てはまる、その運命的な出会いに。
使命から解放されたことに安堵していいはずなのに、何故か心は沈んでいる。
悪い思考にぐるぐる囚われていた時、電車が大きく揺れた。
ボーッとしていた私は大きくバランスを崩し、よろけた体を先輩が引き寄せ、支えてくれる。
(うわ、ちっか……!)
「すみません!」と言って離れようとするが、先輩はそれを拒むように手を離さなかった。
先輩との距離が近くなったことと驚きで、心臓の鼓動が早くなる。
「……茂木さんってさ……遥のこと、好きなの?」
そして至近距離から放たれたその質問に、私は絶句してしまった。




