美男美女の休日
「どういうこと?」麗華さんが口にした瞬間、遥もハッとしたような顔をする。
「……そっか!茨木浩平は実力じゃ鬼丸に勝てない!だから自分に『茨木童子』を憑依させて鬼丸を倒すことで、自分が鬼丸を倒した事実だけを手に入れたいんだね!」
遥の推理に、加賀魅先輩は引き気味に「ダサー……」と呟く。
「要するに浩平って奴の中では伝説の鬼が装備品みたいな扱いってこと?自我を乗っ取られるかもしれないのに。」
麗華さんも理解に苦しんでいそうな様子でそう確認してきた。
「結局本人じゃなければ分からない要素は多いですが……恐らく、そうなのかと。」
私がそう答えると、全員が顔を見合せる。
それだけの執着、それだけの恨み……推理の通りならば、茨木浩平の精神状態は普通ではない。
「気になったんだけどさ、茨木童子と浩平さんの名前って似てるよね?偶然?」
私が朱天君に尋ね、彼は首を振る。
「偶然じゃないよ、茨木童子と子孫が浩平だもん。」
「「「え!?」」」
私と遥、加賀魅先輩が驚く中、朱天君と麗華さんは落ち着いていた。
「選ばれし勇者の子孫的な話とは違うよー?鬼にはよくある苗字なの!鬼のルーツは大体『酒呑童子』か『茨木童子』か『大嶽丸』か……鬼丸君の名前も『朱天』でしょ?偏りがちなんだよ。」
麗華さんの解説で、すぐに納得する。
普通の人間で言うところの「山田太郎」みたいなものか。
「でも、ルーツが同じなら相性はいいかも!憑依って簡単じゃないんだ、事故も多いの!でも先祖相手なら、乗っ取られたりすることもないかもね。」
麗華さんの解説に、私は「だから浩平さんは茨木童子を選んだんですね。」と関心した。
「どうする?これから。茨木童子を召喚されたらまずいよね?魔法妨害班とミスターコン班に分かれて相手の作戦を潰してみる?」
遥が言うと、その場にいる全員が頷く。
「遥は絶対ミスターコン班がいいよね、Pとしての適正があるし。朱天君と加賀魅先輩は当事者だから外せない。私と麗華さんが魔法を妨害するよ!」
そう提案する私に、遥が「えー、桃ちゃん……大丈夫?使い魔とも離れてるのに。」と呟いた。
(皆の前だから抑えてるけど、ようするに「できんのかよザコの癖に」……とな。)
しかし遥の心配も妥当だ。私は退魔師としてペーペーもいいところ、危ない状況に遭遇しても加賀魅先輩がいなければ何もできない。
「それならさ!呼び出し笛使うのは!?使い魔って、本来なら魔具で呼べるんだよ。私欲で使ったり、プライバシーの侵害の可能性も考慮して作るのに申請が必要になったけど。」
麗華さんが言うと、私は(そんな便利な物が!?)と目を輝かせる。
「え!茂木さんが呼んだらいつでも会えるようになるってこと!?作りたい!」
加賀魅先輩もなぜか乗り気だ、恐らく作る上で揉めることはないだろう。
「あとはどうやって阻止するかだけど……杭は結界を作るための物なんだよね?2つ以上杭を見つけられたら、結界の形から杭の位置を特定できる!」
私は麗華さんの言葉に「じゃあ、連休中は麗華さんと私で杭探ししましょうか!」と続けた。
「よし、話はまとまったね!それじゃ明日以降よろしく!今日は解散にしようか。」
遥がそう言って少しふらつきながら立ち上がる。
「あ……ごめんね遥、もしかして後ろに予定があった?」
尋ねるやいなや、遥は私の手を引き立ち上がらせ「え?」という私の声を無視し、
「せっかく新宿に来たから遊びたい!桃ちゃんの事情に付き合ってるんだし、連休の1日くらいは自由に過ごそうよ!」と勝手なことを言う。
(でも確かに、遥が付き合う理由ってないんだよな……)
私はため息をつき「そうだね……頑張ってくれてるし、付き合うか。」と口にする。
そして、まるで連鎖のように「え、私も一緒したい!新宿巡りたのしそー!」と麗華さんが立ち上がり、「ずるい!俺も茂木さんとどっか行きたい!」と立ち上がり、朱天君は「皆行くなら俺も行く!」と立ち上がった。
結局、皆で新宿探検をすることになり……私は遥の召使いとしてアパレルショップに駆り出される。
(うわ……皆見てるよ……)
私以外、顔の強い人間ばかりだ。
そんな人間がまとまって歩いているせいで、とにかく目立ってしまう。
(浮いてると思われてるんだろうな、私だけ。)
「桃ちゃん服選んで!ねーどっちが似合う?」
遥はパーカーとTシャツを当てがい尋ねてくる。
その時、妙に遥の手が青白く見えたような気がした。
(きのせい、かな?)
「どっちも似合ってしまう……強いて言うならそのTシャツに空いてる穴が挑戦的すぎて死者を出す恐れがあります。」
私が意見を述べると、遥はご機嫌に「じゃ、パーカーは外着、Tシャツは部屋着として買おーっと!」と言ってレジに並ぶ。
「遥!部屋着用のサイズ間違えてる!Lはでかすぎるから!」
後ろで麗華さんが「あの2人の距離感謎じゃない……?死者が出るって何。」と呟き、朱天君がそれに「わかんない、親バカに近いのかな。」と返した。
お次はうさこうもりのグッズがある場所に徹底的に連れ回され、「マスコット買って!予備も買って!予備は邪魔だから桃ちゃんが持ってて!」だの、「シャカシャカシールがシールがないから材料買って作って」だの、わがままに付き合わされる。
すると、麗華さんが見かねたように
「私が買ってあげよっか!どのシリーズがいい?」と介入してくれた。
(麗華さん……!なんていい人なの!)
「ねえ知ってる!?新シリーズにマシュマロカラーのうさこうもりちゃんが出たんだって!」と麗華さんが言うと、遥は目を輝かせながら「なにそれ欲しい!」と答える。
麗華さんは振り向き、「後は任せて!」と言わんばかりにウインクした。
「ありがとう」の意味を込めてグッドサインを返すと、後ろで商品を見ていた朱天君と加賀魅先輩に合流する。
フラフラとしながら「2人とも何見てるのぉ〜……」と寄っていく私に、朱天君は眉を下げながら「お疲れ、大分振り回されてたな。」と言葉をかけてくれ、加賀魅先輩が「遥って茂木さんといるとわがままなんだ。」と続けた。
「振り回されてるって思ったんなら助けてくれても良かったのに〜」
そうぼやくと、加賀魅先輩が目線を落とし「邪魔しちゃいけない雰囲気だったから。茂木さん楽しそうだったし。」と呟く。
(楽しそう……?私が……?)
「あー……!茂木、このシール可愛くない!?河童だよ河童!」
朱天君が何かを誤魔化すようにやけにリアルな河童のシールを指さす。
「えー、好きだけど可愛いは違くない?」
私が笑い飛ばすと、加賀魅先輩が「俺こっちのシールがいい!」とやけにメタリックな龍のシールを持ち出した。
「あー、かっこいいですねぇそれ!」
朱天君と加賀魅先輩の間にのみ流れる独特な空気を吸ってやっと心が和む。
平和に談笑していた時ふと、「茂木さん欲しいものある?」と加賀魅先輩が尋ねてきた。
「え!?いや、私は自分で買いますので……」
「だって遥の物買いまくってお金なくない?茂木さんのわがままも聞いてみたいなー。」
(加賀魅先輩……)
「……!じゃあ、この押すと目玉が飛び出るキモい魚のキーホルダーが欲しいです!」
私が欲しいものを持ってくると、加賀魅先輩は「ほんとだキモ!『予備』で俺も買っちゃお〜」と手に取る。
朱天君が「いいなー、俺も『予備』欲しい!先輩わがまま聞いて。」と言うと、加賀魅先輩はもう1つそれを手に取った。
この2人といる時間は平和だ。
私のことを気にかけてくれるし、プレゼントまでしてくれる。
なのに、私はふと遥が気になって店の奥にいる麗華さんと遥を見て
(遥が私以外に甘えてるとこ、初めて見た。)
なんて、そんなことを考えてしまっていた。
活動報告にて挿絵リクエスト(私が描いても良いもの)を募集しています。
良ければご参加お願いいたします。
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