プロ退魔師との遭遇
「憑依!?」
「魔物って、基本長く生きていられるかわりにあんまり実体っていう実体がないんだ。だから呼ぶにしたって人の依代か、人形とかに降ろす必要があるんだよ。」
加賀魅先輩は唖然とする私にそう説明してみせた。
「轟鬼は自らを魔物の依代にして何かをしようとしているのか……しかしなぜそんな危険な真似を。」
父が険しい顔で口にする。
それに関しては私にも見当が付かない。浩平さんは加賀魅先輩を貶めてまで自分が勝つことに拘った。
なのに、どうしてこんな凄い力に頼ろうとしているのだろうか?
気になるところではあるが、そこは遥や朱天君等の賢い人たちと考えた方がいいだろう。
「まあ、この杭がどんなものか分かったから良かったじゃない!加賀魅先輩って本当に天才なんですね!」
評価を改めて賛辞を贈ると、加賀魅先輩は溶けそうな笑顔で「それほどでもあるかな」と呟く。
「あのぉ……今日は一旦、ミッションコンプリートということで?私の個人的なお願いを聞いてくれませんか?」
もじもじしかながら伺うと、加賀魅先輩を差し置いて父が「駄目だ、帰ってもらいなさい。」と険しい顔で切り捨てた。
「なんでお父さんが決めるのよ!……ね、先輩いいでしょー!?」
甘える私を見て気分を良くしたのか、先輩は満更でもなさそうに
「俺のできることであれば手伝うよ」と言ってくれる。
「やったー!ちょっと待ってて!」
私はそう言って自室へ走ると、勉強机から黒い色鉛筆を取り出してくる。
「……何それ?鉛筆?」
父と先輩はそれを不思議そうに眺めていた。
「この色鉛筆の先端を撫でるとね!」
そう言って黒い色鉛筆の先端を撫でる。
すると、黒い色鉛筆は焼いた玉こんにゃくのような悲鳴を上げた。
加賀魅先輩は顔を真っ青にして「何コレ……」と呟く。父も何か深刻そうな顔でそれを見ていた。
私もこれに関してはかなり上手くできたと自負している、完成度の高さに驚いているのだろう。
父や天才も関心するほどの出来と分かるやいなや誇らしくなり、「黒色鉛筆様のファンアート……いや、ファン魔具ってやつ!?黒い色鉛筆を喋らせてみたんだ!」と得意げに言いながら、私は何度も黒い色鉛筆の先端を撫でる。
すると居間に玉こんにゃくのような悲鳴がひしめいた。
(喋ってないし……うるさい、怖い、すっごいキモい……でも本人は満足気だしな。)
加賀魅先輩は暫く渋い顔で黒い色鉛筆を眺めたあと「これがどうかしたの?俺に何かして欲しいんでしょ?」と微笑む。
「あの!今でも気に入ってるんだけど……!低いイケボで『俺以外の鉛筆削るの、禁止。』とか『桃子、頑張ったな。』とか言わせてみたいの!」
私の頼みを受けて、先輩は黒い色鉛筆に手をかざす。
黒い色鉛筆は一瞬眩い光を放ち、低いイケボで「俺以外の鉛筆削るの、禁止。」と言葉を発した。
しっかり田宮さん似のボイスを発するそれを見て、私は目を輝かせてから「ありがとうございます!」とお礼を言った。
「加賀魅先輩、魔力減ったなら少し吸いますか?」
「ううん、この程度なら寝たら戻っちゃうから。それにほら、お父様も心配してるよ?さっきから凄い睨んでくるし……」
その言葉を聞いて父の方を見ると、彼は鬼の形相で加賀魅先輩を睨んでいた。
「ちょ、ちょっとお父さんったら……!」
言うと、父は「桃子の警戒心がなさすぎるんだ!そんな怪しい男に簡単に魔力を差し出さないこと!」と反論してくる。
「じゃあ俺、もう帰りますね。また役に立てることがあったら呼んでください。」
加賀魅先輩は父に頭を下げてから、玄関に向かう。
「ありがとうございました、先輩!」
急いで見送ると、先輩ひらひらと手を振ってから家を出る。
何故かその一連の行動が、少し寂しげに見えた。
「……あの使い魔、人としては様子がおかしいが……能力はかなり優秀だね。」
加賀魅先輩を見送った後で父が呟く。
「そうだよね、イケボで喋る色鉛筆なんて作れるくらいには……」
「その程度魔力がありゃ小学生でも作れるわ!……そうじゃなくて、魔法式をあんな短時間で見破れる目があることを評価してるんだよ。」
私の言葉を遮って、父は言いながら顎に手をやる。
(なんとなく凄いくらいの認識でいたけど、加賀魅先輩ってやっぱり優秀なんだ。)
私はイケボで囁く黒い色鉛筆を見ながら、加賀魅先輩の強さを再確認していた。
「そうだ桃子、サポートの件だけど。」
ボケっとしていた私に、父がそう切り出す。
「え……?」
「言ったろ、あの夢魔の監視も兼ねてサポートを付けるって。」
(あ……そういえば言っていたような?)
「凄いぞ!京都の退魔師本部から来てくれるんだ!しかも桃子の一個上の女の子だって、歳も近くていいだろー?連休期間に合わせて来るから、明日到着するらしい!迎えに行ってあげるといいんじゃないか?」
父に言われ、私は「えっ……でも、明日はもしかしたらちょっと友達と杭のこと話し合ったりするかもだし……」と、どんどん小さくなる声で断ろうとした。
「一緒に話せばいいだろ?相手は退魔のプロなんだから。明日の9時に新宿に着くって。仲良くやれるといいな!」
父は勝手に話を進め、部屋に戻っていく。
私も自室に戻り、急に突きつけられた同世代女子との遭遇に胃を冷やしていた。
(京都ってことは……穏やかかつ笑顔で『あら桃子さんそのジャージ素敵ね』とか言ってくるタイプ?雑魚で芋で根暗な女ってバレたら笑われるかな……?)
マイナス思考は止まらず、どんどんと目が冴えていく。
遥に事情を話して気を落ち付けようともしたが、逆に【プロの退魔師なんかに会ったらお前鼻で笑われるかもなm9(৹ᵒ̴̶̷᷄ ᴗ ᵒ̴̶̷᷅৹)】と送られて深みにハマってしまう。
(だ、大丈夫!きっと優しい感じのヤマトナデシコが来るに違いない!)
そう心に言い聞かせ、来る後日。
朝私はなるべくオシャレをし、完璧にメイクをしてからお守りとしてキャップを付けた黒い色鉛筆を鞄に入れ家を出る。
新宿で相手を待っていると「桃子ちゃんってあなた?」と声を掛けられた。
顔を上げた瞬間、戦慄する。
手入れの行き届いたさらさらで銀色の髪、青いカラーコンタクトも浮かない程の彫りの深い顔、顔から分かる圧倒的な陽の気……!
「会えて嬉しいー!私京都から来た海塩麗華です!」
私はその圧倒的光を浴びて、絶望してしまったのだった。
活動報告にて挿絵リクエスト(私が描いても良いもの)を募集しています。
良ければご参加お願いいたします。
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ここで一度更新止まります。7月1日までには再開します。




