意外な1面
「コウヘイって……この前カラオケで会った奴だよね?なんか感じの悪い奴らといた人。」
先輩が不思議そうな顔で呟く。
「そう!……どうして彼がミスターコンに……?」
「桃ちゃん的に、茨木浩平は『ファンクラブ』と『被害者の会』どっち側だと思う?」
疑問を口にする私に、遥が別の疑問をぶつけてくる。
浩平さんは朱天君を真似るほど執着していて……一方で朱天君を傷つけた男だ。
「中間、だと思う。恨みもあるし憧れもある。」
私が推測を述べると、遥は「1番面倒だな」と頭を抱えた。
「茨木浩平の目的は恐らく……悪意と同一視の最終形、『成り代わり』だ。」
遥の言葉を聞いて、私と加賀魅先輩は顔を見合わせる。
「……あー……かなり推測が混じるけど。茨木浩平は鬼丸にスタイルを似せていることがピンスタから確認できる。つまり鬼丸に『なりたい』側。
同時に鬼丸やその周辺の話を聞く限り、桃ちゃんに接触したり、かなり悪意のある行動にも出てる。」
「あ、分かった!『なりたい』に悪意が混じると『友達を奪いたい』とか、『こいつが勝つはずだった功績が欲しい』に変わる。
だからコウヘイって奴は茂木さんに接触したり鬼丸が出るミスターコンに出ようと思ったんだ!」
加賀魅先輩の補足に、遥は笑顔で「そうです!流石!」と褒めた。
そして「奴は恐らく加賀魅先輩が勝つなんて思っちゃあいない。はなから鬼丸が勝つことを想定して動いてる。……妨害する気か……或いは加賀魅先輩を舐めてるかのどっちかだと思う。」と続ける。
「それなら、加賀魅先輩が勝てば浩平さんも倒せて朱天鬼丸被害者の会も成仏できるからやることは同じじゃない?」
私が言うと、遥は難しい顔で「そんな単純な話で終わればいいけど。」と不穏な言葉を吐いた。
……
――翌朝、私は徹夜してなんとか追加の制御札を完成させる。
(見た目はダサいけど、効果は本物!これなら加賀魅先輩の魅了は抑えられるはず!)
何も入ってこない頭で何とか授業を終え、空き教室で待つ遥と加賀魅先輩に合流した。
「はい、どうぞ!」
私が加賀魅先輩に自信満々で2つの制御札を渡すと、加賀魅先輩はそれを見て目を細める。
「ど、どうかしました……?」
「ここの式間違ってる、これだと逆に魔力が外に出ちゃうかも。」
加賀魅先輩はそう言ってから2つの制御札を1つの腕輪に変えてしまう。
(ああ……それができるならこの人、制御札も自分で作れたんじゃ……)
少し落ち込んでいると、加賀魅先輩が「あ……ごめんね!直すくらいなら初めから作れって話だよな!……1から作るのは俺にも無理なんだ、書き換えるのはできるけど……!」
と焦ったように弁解してくれる。
「い……いいんですぅ……言われた物を作ってくれなかった私に非がありますので……」
肩を落としながら言う私に、遥が「そうそう!先輩は桃ちゃんのミスを直しただけですからなーんにも悪くないですよ!」と笑顔で刺してきた。
(うっ……容赦ない……!)
金色の光沢ある腕輪には、くっきりと隈が浮かんだ私の顔面が反射されている。
(……みっともないな……知識も実力もなくて。)
そう思っていた時、急に目元に冷たい指が触れた。
少し顔を上げると、加賀魅先輩がこちらに手を伸ばしていることが分かる。
先輩は私の目元をなぞり
「ごめん、きっと一生懸命頑張ってくれたんだよね。」
と口にした。
瞬間、じわりと目元が温かくなり……腕輪に再度目線を落とすと、隈は綺麗に無くなっている。
「凄い……!こんなこともできるんですか!?」
笑顔で言う私に、加賀魅先輩は優しく微笑み
「うん。簡単な治癒魔法だけど……良かった、やっぱり茂木さんは笑ってる時が可愛いよ。」
と言った。
「……!」
心臓が跳ねて、目眩が襲う。どうやら魔力を吸われているようだ……
「せんぱーい?早く腕輪付けた方がいいかも〜。イケメンによわよわでざこの桃ちゃんが倒れちゃうよ。」
遥が低い声で言うと、加賀魅先輩は焦ったように私から腕輪を奪い身に着ける。
その時体に少しだけ魔力が戻っていくのを感じた。
「あっ……危なかった……!」
「タスカッテヨカッタネー。行くよ桃ちゃん、校門でビラ配りしないと。」
遥は言いながら私の耳を引っ張る。
「わ、ちょっと引っ張らないで!」
私は不機嫌な遥に校門へと連行された。
……
「あ、朱天君もいる。」
遥と加賀魅先輩、私の3人が校門まで移動すると、校門付近に朱天君の姿を見つける。
朱天君は多くのキラキラ男女に囲まれており、楽しそうに話していた。
(うむ、これが正しい光景である。朱天君に距離を置かれたのは悲しかったけど、あるべき場所に戻ったと見るべきね。)
そんなことを考えながら呆然と眺めていると、かなり遠巻きから見ていたというのに朱天君と一瞬目が合ってしまう。
思わず顔を逸らし、加賀魅先輩の後ろに隠れた。
(私を見てた……?いや違う、きっと加賀魅先輩と遥を見てたんだ!オーラあるもんね!)
朱天君に続き、加賀魅先輩もビラ配りを始める。
「投票お願いします」と声を掛けただけで、女子は狂喜乱舞していた。
(この様子だと、女子の票は安定しそう。男子は面白くないだろうな、票が望めないかも。)
そう思っていると、またもキラキラとした上級生らしき男たちが加賀魅先輩を見て
「あれ?祐輔謹慎解けたの!?」
と話しかける。
(あ、まずいかな……)
「ううん、奉仕活動の一環でミスターコンの活動だけ許されてるの。」
加賀魅先輩が答えると、男たちは「だよな、結構やらかしたらしいし。」と言って笑う。
男たちが嘲笑しに来たものと思い止めに入ろうとした時、男の1人が「あれだろ?人体模型魔改造してホバー移動できるようにしたんだっけ。」と口にした。
(…………えっ)
私はトンチキな噂を口にする男を見て呆然としてしまう。
すると、隣で見ていた遥が
「あの1件、教師側から口止めされてるみたいだよ。ほら、夢魔が暴走したとか外部にバレたら大変だからって。
鬼丸にだけは事情を話してるみたいだけど。」
と説明してくれた。
そう言えば、遥も以前生活指導の先生とそんな話をしていたような気がする。
「違うよ、誰もいないと思って廊下でシャトルランしてたのが見つかっちゃったんだ。」
(それにしたってもっとマシな嘘つけばいいのに。)
「お前……またかよ!」
(前科あるの!?)
男子たちはくすりと笑いながら「お前ってホント……おもしれーヤツ。」
「なんか困ったことあったら言えよ、危なっかしいんだから。」
と先輩に声をかけた。
(……何……?あの、甥っ子を見るような目は……)
「言ったろ、先輩は普段同性には甘えがちなの。大勢の父性をくすぐり皆の弟みたいな存在として認知されているらしい。」
「ああ……朱天君だけが世話焼いてるわけじゃないんだ……」
しかし、これはいい兆候かもしれない。
加賀魅先輩は私が思っているより男子に嫌われていないようだ。
勝ち筋が見えて喜んでいると、急に校門で加賀魅先輩を眺めていた女子たちが騒ぎ始める。
「……?どうしたんだろう?」
それを不審に思ったのか、遥は何かに気付いたようにスマートフォンを見た。
「見て、学校の掲示板の通知が荒れてる。」
私が遥に身を寄せスマートフォンの画面を覗き見ると、学校の掲示板に
「加賀魅祐輔は魔者で夢魔。全校生徒を魅了したので謹慎処分を受けている」と書き込まれている。
「やられた……どうやってこの情報を嗅ぎつけたんだか。」
遥は眉間にシワを寄せながら、悔しそうに言い放った。
活動報告にて挿絵リクエスト(私が描いても良いもの)を募集しています。
良ければご参加お願いいたします。
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