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世界一可愛い参謀

「しゅ……朱天君に勝つ!?無理無理!私が朱天君に勝てることなんて黒色鉛筆様への愛くらいしかないよ!」


私が声を荒らげると、遥は冷静に

「何もお前が勝たんでいい、カードを仲間まで広げてみろよ。僕、加賀魅先輩、お前……この中で唯一、既に鬼丸に勝利しうる要素を持った人間がいるだろ?」

と言い放つ。


(勝利しうる……?)


「わかった!遥の殺人的な可愛さ、だね!?」


「違うよバカ。……でも惜しい。加賀魅先輩の2つ名は?」


「えっと……『学校1のモテ男』……あ。」


確かに加賀魅先輩は能力もあるものの、朱天君を押しのけて「1番」の称号を有していた。

朱天君もモテはするだろうが、加賀魅先輩と比較すると女子と距離を取っていた分劣るだろう。


「要するに、だ。『人気』という一点において加賀魅先輩は鬼丸を上回ってる。魅了の効果も多少あるかもしれないけど、先輩は黙ってれば……本当に黙っていればそのビジュアルで鬼丸に勝てる逸材だ。」


「なんで2回言うのよ……」


「僕たちが仕掛けるのは『加賀魅先輩の人気とビジュアルを使って勝てる勝負』!それならギリギリ勝機はある。」


加賀魅先輩のビジュアルを使った勝負……しかも、大勢の前で朱天君を負かすことのできるもの……


「あ!ミスターコンは!?ゴールデンウィークの前後で毎回開催されるやつ!」


言うと、遥は「いいものに目を付けたな。時期的にも、目的達成の面でも好都合だ。しかも僕はイベント実行委員でもあるから多少口が効く。」と呟く。


「でもそうするとなぁ……加賀魅先輩の謹慎がネックだよね。微妙に期間と被ってる。」


懸念点を上げると、遥は立ち上がり

「……見てろ、世界一可愛い僕の交渉術をな。」と口にした。


「……?」


……


「加賀魅君のミスターコン参加!?ダメに決まってるだろ!」


私は遥に連れられ職員室まで足を運ぶ。

分かってはいたが、遥の要望に生活指導の先生は即反対した。


「でも……きっと学校の活気に繋がりますよ。イベント実行委員として、彼に参加していただきたいなって。」


遥が上目遣いで生活指導の先生に切り返すも、先生は首を横に振るばかりだ。


「もし盛り上がりすぎて外部に加賀魅君が魔者だとバレたらどうする!しかも夢魔だぞ!?夢魔!」


「そこは、しっかり学校側が漏らさなきゃいい話じゃないですか。幸い、1番口の軽そうな生徒は真相を知りませんから。」


遥の想像より鋭い返しに、先生は1度黙り込む。


「……しかし、また暴走でもしたら……」


「大丈夫!こちらの茂木さんが制御してくれているので問題ありません!もし暴走したら茂木さんがぜーんぶ責任取ってくれるそうです♡」


「え!?あー……はは、勿論。」


先生が唸り、揺れていそうなのが分かるタイミングで、突如遥は「あ、でも加賀魅先輩はこんなイベント出ないかあ。」と言い放つ。


「は!?」


(な、何言ってんの遥!あともう一押しすればいけそうだったのに諦めたの!?)


先生は目を丸くして「出ないって……君が出したいと持ちかけて来たんだろ!」と至極真っ当な意見を口にした。


「だって……このイベントって例年大して盛り上がらないみたいじゃないですか。学校の掲示板遡っても誰も話題にしてないしぃ……あ、いっこ見つけた!『うちのミスターコン、マジで先生に言われていやいや出た男しかいないお通夜』だって!やだあ〜。」


遥が言うと、先生が痛いところを突かれたと言わんばかりに顔を歪める。


「確か理事長の趣味で始まったらしいけど?参加者集めるだけで大変みたいですね。そりゃそっか、思春期男子が『我こそは学校1のイケメンだ』なんて名乗り出るわけないもん。秋にやるミスコンに比べると、しょーもない予算泥棒のイベントですから……あの絶世のイケメンがこんなイベントに出るわけないよなー。」


遥はもったいぶったようにミスターコンの弱点を並べていく。

言葉の刃が、先生にグサリグサリと刺さるのが見えた。


「僕、加賀魅先輩と同じ部活だから頼むだけ頼んでもいいですよ?奉仕活動の一環と言えば彼も承諾するかもしれません、無理だとは思うけど……」


遥の目が、獲物を睨む蛇のように光る。


「た……頼んだ。野原君が頼めば加賀魅君も出てくれるかもしれない。」


先生がまるで降伏したかのように頭を下げながら言う。


(凄い……!許可を得るどころか出して欲しいと頼まれる形で終わった……!)


遥は「頑張りまあす♡」とひとこと言うと職員室を後にした。


「あんた、卒業したらセールスマンにでもなったら?」


廊下を歩きながら言うと、遥は無気力そうに

「そんなものになってみろ、日本経済が崩壊する。」と答える。


「確かに……可愛すぎて日本どころか世界経済まで揺るがしかねない。

……ところで遥、これからどうする?加賀魅先輩の説得に行った方がいいよね、まだ本人の意思は聞いてないし……」


加賀魅先輩を取り巻く環境的にも、彼は目立つ場所を嫌がるかもしれない。

強引に出場させるのは酷だろう。


「元々、ミスターコンには景品がある。図書カード5000円分な、モノは悪くない。

お前が必死に頼み込めば、加賀魅先輩は渋々承諾するだろ。」


それでは私への好意を餌に労働させるようなものではないか。

少し気が引けるな……


「だけど、渋々じゃー意味がないんだ。加賀魅先輩が可哀想だし、あの人は乗り気にならないと力を発揮できないタイプだからな。」


「えっ……じゃあ、どうやって乗り気にさせるの!?」


遥は振り返り、微笑んでから

「景品を変更する。……加賀魅先輩のやる気が出そうなやつ。」

と言い放った。


加賀魅先輩をカラオケに呼ぶと、遥はサラッと本題を話し始める。


「えー……ミスターコン?俺あんまり目立ちたくない。」


案の定想定していた答えが返ってきて、私は少し罪悪感に苛まれた。


(ここから乗り気で参加させるなんて、できるの……?)


「まあまあ加賀魅先輩!景品が今年から豪華になったんですよ、見てください!まず、遊園地のペアチケットでしょ……?そして!鹿島高校の卒業生で声優の『田宮ヒロト』さんのサイン入り目覚まし時計!」


「いや、俺声優さんとか詳しく……」


遥のプレゼンに加賀魅先輩が薄い反応を示した瞬間、私は推し声優の名前が出たことで興奮が喉から漏れる。


「田宮ヒロト!?黒色鉛筆様の声当ててるお方じゃない!すっごい遥、こんな人と繋がってるの!?」


「今年の文化祭に呼ぶ予定でさ、その時いただいた連絡先に問い合わせたら快諾してもらっちゃった。」


聞き慣れない名前だったのか、加賀魅先輩は動揺したように「黒色……何?」と呟いた。


「桃ちゃん、この人のファンみたいですよ?加賀魅先輩がこれをプレゼントしたら惚れ直しちゃうだろうなー。」


「!」


遥が加賀魅先輩に何かを囁いたかと思うと、加賀魅先輩は大きな声で

「やる!絶対やる!!」と叫んだ。


(何……!?急にめちゃくちゃやる気出して……!)


「よし、決まりだな。……後は……最難関、あの真面目な鬼丸をどうやってミスターコンの舞台に立たせるか……だ!」


遥はそう言って、黒い笑みを浮かべたのだった。

10万字以内と1話に書いたのですが、10万字かなりオーバーしそうです…!

20万字には収まるかと思います!

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