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轟鬼

「朱天君が……!?」


朱天鬼丸は意地の悪いところもあるものの、基本善良な魔者であることは今までのやりとりでもなんとなく察している。


おおよそ不良グループの親玉とは思えない。


「あ、あの……どうしてあんなグループ作ったの?今世間を騒がせてるのは知ってるよね。」


言うと、朱天君は目を丸くして

「は!?何の話?轟鬼は俺が小学生の時作ったサッカーチームなんだけど!」

と言い放つ。


「サッカーチーム!?」


……


朱天君の話を要約すると、

「轟鬼」は元々小学生で構成されたサッカーチームのようだ。

その名前で魔者枠として地域の大会に出たりしていたらしい。


「それがどうして不良グループに……」


「こっちが聞きたいわ。本当に轟鬼って名前なの?」


朱天君が困ったように眉を下げる。


(たまたまにしては、かなり特殊な読み方だしなぁ……)


「よし、轟鬼のこともう少し調べてみるよ、私!」


笑顔で言うと、朱天君が「大丈夫なの?危なくない?」と心配してくれた。


「大丈夫!私には強力な使い魔がいるの!なんでも、夢魔一族の天才なんだとか!」


得意げに言うと、朱天君は顔を真っ赤にして固まってしまう。


「……朱天君?おーい。」


目の前に手をかざすと、朱天君は突然私の手を掴む。


「ひゃっ!?」


「夢魔の天才っ……て、それ大丈夫なの!?変なことされてない!?夢魔が退魔師を騙して堕落させたとか新聞で読んだことあるし……」


急にまくし立てられ、私は肩をすくめた。


「だ、大丈夫だよ。確かに魔力吸い尽くされたりはしたけど……」


言うと、朱天君は更に顔を赤くして固まってしまう。


「俺も轟鬼の件、付き合う!茂木ってさ、悪いやつじゃないけどほんっとその辺危なっかしいのな!」


何故か怒った様子の朱天君がそう声を荒らげる。


(まあ……元々関わりがあるなら、一緒に調べてくれるのは心強いよね……?)


私が力なく「ありがとう」と呟くと同時に朱天君の携帯が鳴る。


「出ていいよ!」


私が言うと、朱天君は「わりぃ」とひとこと言ってから電話に出た。


「もしもし?……ああ、加賀魅先輩!謝りたいことがある……?えっと、今俺茂木といて……」


これは好機だ。朱天君の誤解らしきものが解けるいいチャンスかもしれない。


「いや、集まろう!どこがいい?ファミレス?カラオケ!?」


私は朱天君と加賀魅先輩を誘導し、カラオケに場所を移した。


……


「紹介します!彼が『夢魔一族の天才』である……私の使い魔ですっ!」


カラオケに集まった後、朱天君に加賀魅先輩暴走事件の一連を話してから、改めて加賀魅先輩を紹介する。


「えっ……じゃあ、その……2人は、そういう……?」


朱天君は気まずそうに私と加賀魅先輩の様子を伺う。


「どういう関係を想像してるか知らないけど、夢魔って言っても加賀魅先輩はピュアだから!変なことできないの、よく知ってるでしょ?ほら先輩、私と恋人になったらしてみたいこと言ってみて!」


「え?こ……交換日記。」


加賀魅先輩がもじもじとそう答えたのを見て、朱天君は「せめてメッセージでやりとりしろよ。」とツッコミを入れた。


「ね?健全な主従関係以外の何者でもないから安心して!」


私の一言で、朱天君は「なんだぁ……びっくりした……」と胸を撫で下ろす。


「鬼丸、この前はごめんね……俺、暴走して鬼丸に魅了かけちゃって……」


加賀魅先輩が申し訳なさそうに言うと、朱天君は笑って「いいよ。先輩のちゃんと筋通せるとこ、俺好きだぜ。」と答える。


(朱天鬼丸の言う『好き』は、変な意味ではなく純粋な好意を出力しただけっぽいわね。この前のも恐らくは好感度上がったよ!くらいの意味合いかな。)


「それより平気?この前の事件が加賀魅先輩のやったことなら、かなり重い処分下ったろ?」


加賀魅先輩は「特には。」と答えるが、私がすぐに「謹慎処分に推薦取り消し、全然『特に』ではないから。」と訂正した。


「は!?やばいじゃん!だから今日学校で見かけなかったんか……」


驚愕する朱天君に、加賀魅先輩は申し訳なさそうに「それだけのことしたし、退学にならなかったからいいよ。鬼丸ももうちょっと怒っていいんだぜ。」と言い放つ。


「怒んないよ別に。魔者が暴走したら手が付けらんないの知ってるし、俺と戦った遥が許してんなら言うことない。」


「……ありがとう、ごめんね。」


(この2人、やっぱり仲良いんだな。)


2人のやりとりを見て、そう内心で呟く。

スポッチョから思っていたが、この2人はかなり信頼し合っているように見えた。


「……丁度いいわ、2人とも聞いて。今巷を騒がせている『轟鬼』っていう若い鬼の不良グループのメンバーが、私たちの通う『鹿島高校』に在籍しているかもしれないの。

それを調査したいんだけど、協力してくれる?」


言うと、加賀魅先輩は頬を掻きながら

「うーん、俺謹慎中だから……学校の外でならいくらでも協力できるよ。」と答える。


「じゃ、学校にいる間は俺が協力するよ。俺の作った轟鬼と関係あるなら、元メンバーを洗うのが手っ取り早いだろうし。」


思ったよりもスムーズに話が纏まり、私たちは時間よりも早くカラオケルームを後にした。


すると、狭い廊下にも関わらずダベっている高校生の集団を見つける。


(うわ、邪魔くさ。)


朱天君タイプとも違う、少し素行の悪そうな集団で、部屋にも入らず大声で話していた。

よく見ると、鹿島高校の生徒が中心にいる。


彼は私たちに気付くと「すみません、盛り上がっちゃって……」と言った後に朱天君の顔を見て笑顔になった。


鹿島高校の制服を着た男は、金色の短髪に、中性的な顔立ち。

そして鬼を模したような特徴的なアクセサリーを身につけているところが、少し朱天君に似ている。


「鬼丸……!」


知り合いだろうか?とても嬉しそうにする男に対し、朱天君の顔は険しい。


「浩平か……迷惑だろ、部屋行けよ。」


浩平と呼ばれた男子は朱天君に近寄ると

「鬼丸、なんでメッセ返してくれなかったの?会いたかった!」

と口にしてから……何故かこちらを見てきた。


(なんかこの人の目……冷たい……)


「彼女?可愛いね。」


浩平さんが言うと、後ろにいた男子たちが

「うっそ、趣味悪。鹿島ってよっぽどレベル低いんだ。」とヒソヒソ呟きながらこちらを品定めするような目で見てくる。


「……ごめん、急いでるからもう行くな。」


朱天君が私の手を引いた瞬間、殺気を感じて身震いする。


「……ぐぅ。」


振り返ると、先程私を馬鹿にした男たちが倒れ込んでいるのが見えた。


「うわ!?どうしたんだよお前ら!」


浩平さんは倒れた少年たちを見て焦っている。


「……気にしないで、眠らせただけ。」


加賀魅先輩は、特に悪びれる様子もなく静かに言う。


「おっかねー……まあいっか、あんま感じのいい奴らじゃなかったし。」


朱天君は呆れたように笑った後

「……茂木、あの『浩平』って男……轟鬼の初期メンバーだよ。」と呟いたのだった。

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