㉙
チームとして群雄割拠システムに参加している以上、この学園で成し遂げたい望みがあるはずだ。
それがこの長く厳しい戦いの最大のモチベーションになっているはずだ。
故に学園に通う生徒の過半数を参加メンバーに引き入れたチーム――つまり統一を果たしたチームのリーダーは、他の学生に向け、所信表明を行うことが出来る。
この学園はリーダーの言葉一つで、いかようにも変化する。
どんな事でもいい、今すぐに自分の望みを発信しろ。
この学園はお前のものだ。
でもまぁ……これといったものがないのならば、適当に決めてもいいぞ。
例えば俺がずっと前にこの学園の頂点にたった時は、思いつきで生徒全員で殺し合いをさせたりもしたな。
あんな事を無責任に口走っちゃうなんてさ、今思えば自分も尖っていたなぁと反省するばかりさ。
若気の至りってのは怖いもんだな。
烏山 炎羊
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
バラ戦争の結果、伏兵那須一与の一射により辛くも勝利を得た玉繭会は、その翌日に北カントー学園内の中央講堂には三〇〇〇を越える全校生徒を集めた。
この段取りの良さの背景には、根岸信介の存在が大きく関係し、リーダーである悟史は何一つ準備を手伝う事もなくあれよあれよと言う間に、講堂にある控え室に佇んでいた。
「悟史、準備はできたか?」
信介はどこか落ち着きがなかった。
それはおそらく先の戦いで顔面を思い切り殴られたせいで、右瞼が大きく腫れていてメガネがしっくり来ないからだろう。
「コンタクトは持ってないのか?」
「目の中に異物を入れるなど考えられない。私はメガネ一筋だ」
くいっとメガネを押さえるが、いつもより覇気が感じられない。
「……準備が出来たのなら行くぞ。もう全校生徒が講堂に集まっている」
「了解。……ところで野木さんとスーと那須さんは?」
「既に講堂にいる。私もそちらに合流するから、あとは自分でなんとかしろ。もう無線機は使えないのだからな」
バラ戦争では校舎、グラウンドを含めて学校内に多数のカメラが設置されていた。
あの戦争での出来事は全て映像に残されているので、小型の無線機を使いカンニングで玉繭会の会長の座についた事も、既に筒抜けだ。
その他にも妖虎様誘拐事件が狂言だった事も、悟史が告白を受けた事もまた、全校生徒の知るところにある。
「あの時の告白を思い出して、なに顔を真っ赤に染めてるんだ。私はずっとそうだと言っていただろうに」
「いや……そうだな。信介の言うとおりだった」
悟史は顔をパンパンとはたき、気持ちを切り替える。
あの件に関してはまた後日でいい。
「うし……もう少ししたら行くから先に行っててくれ」
信介は一度悟史を見た後、黙って控え室から出て行った。
それを確認した後、悟史はポケットにしまってあった携帯電話を取り出した。
野木胡桃からメールが届いていた。
『信介のことは私に任せろ』
絵文字も何もないシンプルな文章で、実に野木胡桃らしいメールで、思わず悟史は吹き出しそうになった。
「……悪いな信介」
携帯電話を閉じ、悟史は控え室を後にした。
登壇して初めて、悟史は自分達がしたことの凄さを実感した。
一つ高くなった位置から、三〇〇〇人ものの学生達が並んでおり、その壮大な風景に背筋に電流が走っていた。自分がこの生徒全員の頂点に立っているのか。
改めてそう考えると、その重みに押しつぶされそうだった。
ここに集まっている人は自分よりも優れた人達ばかりで、その中には王族だっている。
それなのに俺がこの場にたっていて言いのだろうかと今更ながら足がすくんでいた。
「それでは、先のバラ戦争の結果、見事ヤタガラスに勝利し、全校生徒三〇七八人の内、一五六四人をメンバーにした玉繭会の現会長――鴨志田悟史が所信表明を行います」
以前繭美ちゃんクイズの進行をしてくれた佐藤トシオなる人物が、今回もどういうわけか進行をしている。
あの時とはテンションも態度も一八〇度違っていて若干悟史は戸惑っていた。
「えーと……ご紹介に預かりました玉繭会会長、鴨志田悟史と申します」
ペコリと頭を下げると、会場は一気にザワザワと揺れ始めた。
所々から「あいつがリーダーかよ。オーラなさ過ぎ」だとか「王女様を落とした男か」だとか「鴨志田悟史……恐ろしい子」とかが聞こえる。
「この度は、どういうめぐり合わせか、私のような小市民がこの北カントー学園の群雄割拠システムの最終勝者として選ばれたことを大変喜ばしく思いつつも、自分がこのような場に立っていてもいいのかと、かなり気負っております」
こちらを見ている生徒は、そんな堅苦しい挨拶はどうでもいいんだよといった視線を悟史に送っている。
それに気が付いた悟史は一度咳払いをした。
「あぁー……とりあえずまどろっこしいのは抜きにして、皆さんが待ちに待っていると思われる、これからの学園についての話をしていきたいと思います」
全校生徒三〇〇〇人超の中に、ひときわ目立つクマの着ぐるみが目に入った。
その視線に気付いたのか、丸くて大きな頭を大きく動かし、軽く右手を前にしてガッツポーズを作った。
視線を横にずらし、クマの着ぐるみの隣にいる変態鬼畜メガネを見た。
「これからする話はあまりに荒唐無稽で、馬鹿じゃないのかと思われるかもしれませんが、それでも俺はこの言葉を伝えるためにあの戦争に向かいました。だからこれから話すことに嘘偽りは一つもありません」
その前置きは他の誰でもなく、信介だけに向けたものだとは、当の本人は全く気が付いていない。
きっとこの所信表明を聞いたら、メガネをこれでもかといわんばかりにカチャカチャ動かすだろう。
下手すりゃ末代まで恨みを買うことになるかもしれない。
それでも悟史は、ここで根岸の言いなりになるわけにはいかなかった。
珍獣使いの鴨志田悟史ではなく、一人の人間として、『友達』として付き合っていきたいからだ。
「単刀直入に言います。この所信表明が終わり次第……群雄割拠システムに参加している全てのチームを――解散させます!」
スピーカーから出る悟史の声だけが講堂内に反響し、特に語気を強めた「解散します」という言葉だけが空気を震わせていた。
「解散するって……どういう意味だ」
「解散するというのは既存のチームを全てなくし、学園にいる生徒全員が、無所属の生徒になるという意味です」
どこからか洩れた声に悟史は真摯に対応する。
「チームを全て無くすっていうのは……」
「言葉のとおり全てです。その全てにはもちろん……玉繭会も含まれます」
今度は声をあげるものさえいなくなった。
玉繭会は現在、全校生徒の半数を超える、一五〇〇人超をメンバーに持ち、そのリーダーは学園の生徒全員を従える権限を有している。
そのチームを解散するという事は、すなわち王族すら従わせることの出来る力を自ら捨てるという事だった。
「冗談だろとか思っているかもしれませんが、最初に言ったとおり嘘ではありません。私は本気で全てのチームを解散しようと思います。一応聞いておきますが、これに反対の方はいらっしゃいますか? ある方は手を上げてください。今現在チームのリーダーをやっている方とかはあげるなら今のうちですよ」
少しだけ時間を置いたが、誰一人として手を上げる者はいなかった。
「……じゃあ全員賛成ってことですね。あぁ良かった。もしここで、誰かが俺は絶対に反対だなんていう方がいたら、野木さんか狸塚さんにお願いしてフルボッコにするところでした……なんちゃって」
半分冗談のつもりで二人の名前を出したのだが、その言葉を聴いてさらにその場は凍りついた。
ここにいる者ならば、先のバラ戦争を撮った映像を見ていることだろう。
その中にはあの二人が、人間の次元を一つも二つも飛び越えた戦いをしているのも確認済みだ。あの二人を相手にするなんて考えただけでも息が詰まる。
「異論もないという事で、全チームの解散は決定という事で、次は俺がこの解散に踏み切った経緯を――」
「――ふざけるなっ!」
一瞬にして静寂を破った怒声は、野木胡桃の隣で全身を大きく震わせていた根岸信介の声だった。
「チームの解散だと……いつ私がそんな事を言えと指示を出した? どういうつもりだ悟史……」
予想したとおり信介が声をあげた。
しかも今にも悟史を殴り飛ばそうというくらいの怒りの感情を露にしている。
「悪いな信介……でもこれはもう決めた事だ」
「もう決めた事? なに一つ自分で決められない意志のない男が何をほざく? ずっと流されるがままに来たお前が今そこに立っていられるのは誰のおかげだと思ってやがる」
「もちろん信介のおかげだ。お前が誘ってくれなければ、きっと俺は他の皆のように講堂に集められた一学生でしかなかっただろうな」
「ならなんで勝手な事をこんな場で喋るんだ! お前はただ俺の言う事を何も考えないまま鵜呑みにしていけばいいんだよ。そうすりゃ悟史の望む、平穏な学生生活が過ごせるんだぞ」
そういえばそうだったと悟史は一月前の自分を思った。
小さい頃から変なやつらに追っかけ回され、その後処理をしてきた自分。
そのせいで他の皆からは変な目で見られ続けた。
さらに中学生の時には狂言誘拐に巻き込まれ、王女様を救った英雄にまでさせられた。
そんな人生に疲れきった俺は、誰もが望まずに手にしてきた平和で静かな生活を望んでいたはずだった。
「信介の言うとおりだ。俺は平穏な学生生活を望んでいた。誰も俺に干渉せず、時間がのんびりと流れていく生活を望んでいた」
「なら何故、それを拒む! このまま俺に従っていればそんな生活を過ごせるんだぞ! 現にお前は今、北カントー学園の運営に口を出せる立場にある。それをどうして放棄するような真似をするんだ!」
「それは……根岸信介という男に出会ってしまったからだ」
「……はぁ?」
信介は眉間に皺を寄せ、目を点にしてこちらを見た。
その混乱のあまり表情を作り方を忘れてしまったようだ。
「自分の利を最優先し、その為ならばどんな努力も、どんな卑怯な手も出し惜しみせず、自分を言うものを貫き通せるお前が眩しかった。客観的にみたらただのクズだけど、俺の目から見れば、最高にカッコいい男なんだよ」
人生には選択肢などない。
物心ついたころにはその概念が身体に染み付いていた悟史にとって、根岸信介はその概念を全否定する存在だった。
自分の道は自分で切り開くという、大小はあれど誰しもが持っているプライドを信介が思い起こさせてくれたのだ。
「信介がいたから俺は、ただ流されるがままの自分をかっこ悪いと思えた。いろんな可能性があるこの世界で、ただ逃げるためだけに『平穏な生活』を望み、それを平気で口にしていた自分を恥ずかしいと思えた。お前と出会ってわずか一ヶ月でだぞ? そんな短期間で俺はここまで変わることが出来たんだ」
悟史の視界には、もはや信介しか映っていなかった。
ただ自分を変えてくれた人に、感謝の気持ちと自分の思いを伝えることしか悟史の頭にはなかった。
だが、悟史にも分かっていた。
これはただの一方通行でしかない事を。
「そんなくだらない事をいうために、チームの解散だとかぬかしたのか」
信介には悟史の心境の変化などにこれっぽっちも興味を示さなかった。
どんな言葉を向けられたからといって、信介にとって悟史はただの駒、北カントー学園を統一するための手段の一つでしかないのだ。
「お前の気持ちなんてどうでもいいんだよ。私はこの北カントー学園を統一して、叶えたい望みがあった。だからこそ寝る間も惜しんで必死になった。今玉繭会がこうして全校生徒の過半数のメンバーを有するチームになったとは私が努力したからだ。それをそんな理由で壊すというのなら、私はお前を絶対に許さない」
信介は右足を一歩前に出し歩き出そうとしたが、隣にいた野木胡桃に腕をつかまれる。
「放せ……野木胡桃」
「絶対に放さないと言ったらどうする? 今のお前では私は倒せないぞ」
「それなら今度は北カントー学園統一に注いでいた力を、お前を苦しませることにだけに注いでやる。お前のパーソナルデータはもちろん、自分自身でさえ知らないことでさえ徹底的に調べ上げ、その上で、お前の中にある負の感情やトラウマを引きずり回して、いっそ殺してくれと言わせるぐらいの生き地獄を味あわせてやる」
淡々とした語り口調だが、その言葉には一瞬だけ手の力を緩めてしまうくらいの迫力があった。
その隙を見計らって信介は野木胡桃の腕を払い、人垣を分けて悟史の立つ講壇に歩き始めた。
「ちょっ……待て根岸――」
「――大丈夫だよ。野木さん」
悟史は追いすがろうとした野木を声で制した。
表情に焦りは見えず、これも想定の範囲内で収まっているようだ。
「ふっ……本当にクズだなあの男は」
野木は伸ばした手を下ろし、全てを悟史に託した。
「なぁ信介、お前は一つ大きなミスを犯している」
信介は何も答えずひたすら足を動かしている。
しかしメガネを一度おさえたので、動揺の色が見えていた。
「確かに今この玉繭会は、一五〇〇を越えるメンバーが所属している。しかしその内訳の多くは、ヤタガラスに参加した人と、元から玉繭会にいた人達で、俺と信介には彼らに対しての求心力はまるでない」
「求心力なんて今更必要はない、ただ過半数を越えていればいいんだ」
「下剋上があるからそれじゃダメだ」
「問題ない。下剋上の勝負方法は自分達で作ることが出来るからいくらでも立ち回りようがある」
「本当にそうか? どんな勝負方法を思いつこうが……相手をするのはリーダーの俺だぞ? 学力は普通以下、容姿は中の下、運動神経もなく、ネガティブ思考の小心者で、唯一の特徴をあげるならば珍獣に好かれるというヘタレな小市民……鴨志田悟史一五歳(独身)だぞ。それはお前が一番分かってるだろ?」
信介は何も答えず歩き続けたが、代わりにメガネを三回クイクイと動かした。
信介の頭の中は悟史がどんな相手にでも勝てる勝負方法を模索中のようだ。
「俺をリーダーにした時点で、この計画には無理があったんだ」
「計画に無理などない。現に悟史と私は学園の頂上に立っている」
悟史を擁立し、ここまで来るのが信介の計画だった。
ここまで来た時点でほぼ一〇〇パーセント計画は成立していたはずなのに、ここに来て悟史が自分を裏切るというイレギュラーが起こった。
自分を持たず流されてばかりの人間だからこそ、悟史をリーダーに選んだ。
奴ならば自分の言いなり人形としてふさわしい人材であるという確信があった。
しかしそんな都合のいい性格が、わずか一ヶ月で一八〇度変わった。しかもその原因が自分の極端なほどの人間のクズまっしぐらな人間性に起因しているなんて想像すらできなかった。
こいつの方がよっぽど――珍獣じゃないか。
「……お前はずっと俺の言うことを何も考えず聞いていればよかったんだ。そうすればお前はずっと欲しがっていた平穏が手に入るんだ」
「そうだな。でも今の俺はそれじゃ満足できなくなっている。だから俺は、チームの解散という選択肢を選んだんだ」
「チームを解散してまで、平穏を捨ててまで何を望む? 悟史はどうすれば満足できる?」
「それを言う為に俺はここに立っている。最後まで聞いていてくれ……そのうえで信介は選んでくれ。俺を恨みながら生きていくか……もう一度俺と一緒に立ち上がるかを」
「一緒に立ち上がる?」
きょとんとする信介を無視して、悟史は信介の隣に立ち、全校生徒に尻を向けたままの信介の向きを変えた。
「この所信表明が終わり次第、ここにいる全員は全て自分の意思を持った個人になる。そこからどう動くのかはもちろんみんなの自由だ。新たにチームを作ってもいいし、一匹狼を貫き通してもいい。以前のままがいいというのならそれでもいい、俺はもう一度同じチームを作る事を否定しているわけじゃない」
悟史の目には顔を包帯でぐるぐる巻きにした坊主頭の姿が映っていた。
「玉繭会はやっぱり、本当に繭美ちゃんを想っている人でやっていったほうがいいと思う。……やっぱり俺は玉繭会の会長って器じゃないしさ」
包帯のせいで坊主頭の表情は伺う事はできないが、「何を今更」と怒っているに違いない。
それでも自分の気持ちは伝えることが出来たから、結果、玉繭会からフルボッコにされても、甘んじて受け入れようと思う。
悟史は坊主頭に向かって頭を下げ、また正面を向いて全校生徒に語りかける。
「……もう一度、自分はどうしてこの学園に入ったのかを考えて欲しい。だってここにいるほとんどの人は、この学園に入りたくて無理矢理異名を付けたんだろ? そうまでして入ったんだから、叶えたい望みが絶対にあるはずだ!」
一年生の列を見る。
「最低学年だからとか能力や立場が弱いとかは関係ない。この学園で誰よりもヘタレな俺がここに立っている以上、誰にだって可能性はある」
二年生の列を見る。
「上と下のバランスを取る必要なんてないです。この学園の仕組みに慣れた今こそ、本領が発揮できるはず。ここでもう一度リスタートしてみませんか!」
三年生の列を見る。
「あと一年だからなんてのはは言い訳になりませんよ。入学してわずか一ヶ月でここに立っている青二才がここに立っているのがその証拠です。時間が惜しいなら今からでも遅くない、すぐに立ち上がって下さい!」
全身の毛穴という毛穴から汗が噴き出してきた。
体温は上がり、息遣いはどんどん荒くなる。
しかしそれとは逆に脳内はクリアになり、言いたい事がスラスラと浮かび上がってくる。
「ここまで言って何もしないようなら、後はもう知りません。俺はこれからすぐに立ち上がって次の戦いに備えるので精一杯なんですから」
次の戦いという言葉に、信介はピクッと肩を震わせ、悟史を見つめた。
「前も言ったけど、今の玉繭会のメンバーのほとんどは、元ヤタガラスのメンバーと、旧玉繭会の会員で構成されていて、鴨志田悟史というリーダーを認めてはいないだろう。でもそんなメンバーの中にも俺をリーダーとして認めてくれる人がいる」
悟史は言葉を切ってスーをみた。
「いつもぞよぞようるさいけど、小さい頃かずっと俺の味方でいてくれた家族」
スーは所信表明など気にする素振りも見せず、ケルとベルとじゃれあっていて、それがスーらしくて、思わず笑みがこぼれる。
次に那須一与をみた。
「俺のように、あまり優れた能力はないけど、それでも自分を高みに持ち上げようとする努力家」
自分ことだと分かったのか、那須の切りすぎた前髪まで緊張が走り、短い前髪がさらに短くなっていく。
次に野木胡桃をみる。
「俺のせいで何度も傷つけたのに、それでも手をとってくれた最高の友人」
野木胡桃は動かなかったが、変わるはずのない着ぐるみのクマが笑っているように見えた。
「――そして」
隣にいる信介の肩を叩く。
「自己中心的で、陰湿。その上、残虐非道で道徳心の欠片もない変態鬼畜メガネ……根岸信介」
根岸は何が起こっているのか分かっていないようで、目をキョロキョロを動かしていた。
「以上の五名で俺は……新しくチームを作ろうと思う。チーム名はリーダーである俺とサブリーダーである信介の苗字をとって、カモがネギをしょってCREW――通称カモネギCREWです。ダサい名前かもしれないけどこれ以上にいい名前が俺には浮かばない」
悟史は一歩前に出て、握り締めた右拳を高く突き上げた。
「今度は一五〇〇人なんてケチな事は言いません。本気になった皆さんを全校生徒をカモネギCREWに入れてやります。カモネギGREWの鴨志田悟史として俺はまた、ここに戻ってきますっ!」
――以上をもって所信表明とさせていただきます!
その瞬間、静まり返っていた講堂が喚起の声に沸いた。




