第3話 Beginning bells 壱【始まりの鐘】
お久しぶりです。
今回はちょっと時間が戻り、小山校長先生sideです。
小山side
/時は遡り湊が尋ねてくる半日ほど前/
私の名前は小山 徹。第一魔道学校校長をしている。
今日もいつもどうりの業務をこなす予定だが、ひとつだけいつもとは違う予定が入ってくる。
そもそも、魔道学校の校長と言っても大した仕事はあまりない。あるとしても生徒達が何か問題を起こした時や行事がある少し前に準備をするくらいで、その他の雑用は今隣にいる秘書の河瀬 巴がしてくれる。なので事実、学校へはただの暇つぶしに来ているようなもので、最悪私が来なくても学校は機能する。
そして今日、面白い予定が入ったと先程河瀬から連絡を受けた。
元々ここに直接来て、入学の手続きをしに来る入学予定の子が居るとは聞いていたが、昨日の今日で急にくるとは思っていなかった。事実、特に準備することは無いのだが、今の時代来ることはもっと事前に連絡を入れておくことが、暗黙のマナーとなっている。その事を聞いた時にはあまりにも社会に疎いなと思い、失笑してしまった。
IDカードも持っておらず、社会の基本的なマナーも知らない(知っててマナーを守っていないのかもしれないのだが)、今時そんな人が社会にいて、この学校に入学するというのだ失笑せずにはいられないだろう。
私がそんな事を考えていると、いつもの如く私の考えを読んでくる河瀬が苦い顔をしてこちらを見ながら話しかけてきた。
「校長、また変な事を考えてませんよね」
「失礼だな。私だってまともなことを考える事くらいあるぞ」
確かに宜しくないことを考えてしまう事はあるが、引きを誤ったことはない。その事くらい彼女は知っているのだろうに。そう言われるのはちょっと残念だ。
「そう返答する事がちょっと無いと思いますが」
「はは…そう言わんでくれ。……で、今日彼が来るのだな」
「はい。いつ来るのかは分かりませんが、今日来ると昨日電車メールによる連絡がありました。」
この時代になってもメールのように過去とあまり変わらない事も多々存在する。変に変えても、帰って不備になることが多いためだ。
いうならば、シンプル・イズ・ザ・ベストというやつだね。
「そうか。連絡元はわかったかね?」
「いいえ。相当固いセキュリティだと思われます」
「やはりか…では奴は…」
「ええ、発狂をしていてとても荒れていました」
こちらをじろりと睨むように見てくる。
本当にこういうのを見るとどっちが上司なのかが分からなくなる。
元々、連絡先を掴めるように奴に手をまわさせていたが、案の定駄目だったようだ。
奴は相当悔しがっているだろうが、元々駄目元だったのでこちらとしてはなんの問題もない。
奴は腕こそはそこそこだが、扱いが難しいという難点があり、こちらとしても手を焼いているのだ。扱いが難しいという難点があるのには大きな事情があるのだが、その事情を知っていたとしても奴の扱いは溜まったものでは無い。なので、大抵の人には扱いが困難な故に主に河瀬達が“管理”している。
「ははっ…すまんな」
思わず噛んでしまいそうになったが、無理矢理抑え込む。
「話を変えますが、彼、郡山 湊は明日学校に来るとしか連絡にはありませんでした。詳細を伺おうと思いましたが、返信不可能でした」
「返信不可能…か。済まないが彼に関する情報をもう一度全て説明してくれ」
元々我々が把握している情報は少ないが、一度整理してみることにした。
ここまで個人情報が分からない者が日本に在住しているだけではなく、これからこの学校に入学してくるのだ。異例中の異例である。そして、もし彼が我々にとって不利益なことがあれば、全力で排除しなければならない為に彼に会う前に確認する。
「分かりました。まず、名前は郡山 湊。男性。年齢は15。生年月日は2167年8月26日。住所不明。家族構成不明。国籍不明。以前までの行動も不明。その他諸々の個人情報不明。当学校への入学理由は異能所持の為。異能の名は 陰月。以上が郡山 湊に関する現時点での全ての情報です。」
少ない。圧倒的に情報が他者に比べて少ない。どのように入国し、滞在しているのかさえ分からない。このまま彼を入学させ、何か問題でも起こせば我が校の威厳にかかる為、何としても信用の出来る情報が欲しかったのだか…
「んー…ダメだな。信用に繋がる情報がない。かと言って、何かある訳でもない。これでは入学を拒否することは出来んな…」
「そうですね。彼は異能の持ち主なので、何か怪しい情報がない限り上が入学を拒否することは許可しないでしょう」
これだから異能は厄介なのだ。そして、国は異能探しに躍起になりすぎている。現社会で魔法士の育成よりも、異能探しに力を入れた方が期待が大きいことは分かる。この学校の存在意義にも半分は異能者の育成、管理となっているからな。
それに異能は魔法と違いイレギュラーが多いが、異能の全てが強力という訳では無い。むしろ殆どが役にたたない。だが、異能の一部には使い方次第で戦況をひっくり返す様な力を持ったものもある。
例えば私の持っている異能 One thousand thousand(一騎当千)。
《One thousand thousand》
自身に殺意等の危害を加えるような感情をある程度持っている者が、自身を中心とした10000メートル以内に1000人以上いると魔力、魔法耐性、魔法威力が100倍になる。また、相手の数が1000にをきらない限り状態異常、失神、死亡になることは無い。
たが、戦闘を行う場合一人で戦闘を行わなければ効果は期待出来ない。……ect
この様にぶっ飛んでいる。100倍という数字になると、低級の魔法でさえ上級の魔法に匹敵するかもしれない。もし、その状態で上級の魔法を使用した場合、どうなってしまうのか想像しただけで恐ろしい。
だが、意図も簡単に100倍の状態にすることは出来ない。異能は魔法よりも有能であったとしても、魔法以上に以上に万能ではなのだ。
「自信に殺意等の危害を加えるような感情をある程度持っている者が、自信を中心とした10000メートル以内に1000人以上…」とあるが、この状態を作ることがまず難しい。
10000メートル以内に1000人以上、それも全員が自身に殺意等の感情を持っていなければならない。それはつまり、敵が自身のことを認知し、恨まれなくてはいけないということだ。
この異能の欠点となることは大きくわけて2つある。
1つ目は先も言ったように敵に恨まれなくてはならないことで、そのためには準備が必要になってくる。
=奴を恨む、奴に殺意を抱く=
どのようにすればこのような感情が生まれてくるだろうか。
最も簡単な方法は敵の家族や大切な仲間、友人をいたぶり殺すことで、そのようにすればほぼ確実に殺意を抱き、殺しにかかってくるだろう。そして其れを1000回程くり返しけばいい。だが、其れを成し遂げ、条件が揃わない限り異能の効力は一切現れない。そう、一切だ。
一切異能を使わず 1000もの敵を殺すのではなく恨みを作り、自身は撤退する。小山にとっても低ランクの魔法士が1000人ならば可能であるが、高ランクの魔法士が1人でもいたら不可能だ。戦場で高ランク魔法士がいるかどうかの判断をするのは戦闘を行わない限りほぼ不可能だ。かといって、賭けに出て失敗するのは、貴重な魔法士を失うこととなり、愚かな行為となってしまう。
では、どうするかと言うと答えは簡単で、溜めればいい。小さな戦闘で少しずつ敵をいたぶり、恨みを溜める。少数の部隊ならば先鋭部隊でない限り、小山が負けることはない。そして、自国ならば先鋭部隊がいることはほぼない。
自国に侵入してきた少数部隊を倒す方法でいけば、もしたまたま昔恨みを買った魔法士などが1000人揃えば異能の条件を達成することが出来る。
2つ目は効果の調節が出来ないことで、魔力、魔法耐性、魔法威力が100倍の状態で攻撃(戦闘)を行うと敵に対しては効果絶大だが、味方に対して攻撃が当たってしまう可能性がある。
例えば初級魔法である【炎創造魔法 ファイア】。この魔法は一般的に戦闘魔法で最初に習う魔法で、簡単かつ応用の幅が広い魔法だ。【炎創造魔法 ファイア】は何の応用性を引き出さないと、自身で発動した場所(発動出来る場所は魔法士の魔力、技術で異なる)から炎がでるだけで、これを魔力、魔法耐性、魔法威力が100倍の状態で小山が発動すると少なくとも半径10メートル以内にいる味方は被害を受ける。そしてこれはあくまで初級魔法【炎創造魔法 ファイア】のことで、これより強力な魔法なほど比例して威力が上がる。
上記のように異能には必ずの言っていいほど欠点が存在し、強力だが欠点が多く使い物にならないものが多く存在する。今まで発掘してきた異能のほとんどは役に立たないか、欠点が多く存在するものだが、そうではないひと握りの異能は1つで戦況を変える力を持っている持っている。
何よりこの学校の異能者を扱う目的は異能者を探し出し他国に奪われないようにすること、強力な異能の欠点を補うための訓練、欠点を解決知る方法の模索だ。
ちょっと、長くなりすぎた為ふたつに分けます。




