↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
7/20

第七話 氷の公女は友達になりたいようです

 第七話 氷の公女は友達になりたいようです


 現在の戦績。


 破局〇組。


 恋愛成就六組。


 帰還まで残り二十組。


「減らない」


 私は机に額をぶつけた。


 ゴン。


 痛い。


 だが心の痛みに比べれば大したことはない。


 そろそろ女神を訴えたい。


 景品表示法違反とかないのだろうか。


 神界にも。


 その時だった。


 窓が光る。


 もう嫌だ。


 見なくても分かる。


 女神である。


「七組目です」


「帰れ」


「頑張ってください」


「帰れ」


 帰らなかった。


 私はため息を吐きながら資料を受け取った。


 今回の標的は。


 公爵令嬢エレノア。


 通称。


 氷の公女。


 社交界でも有名らしい。


 無表情。


 無愛想。


 無口。


 友達ゼロ。


 婚約者候補ゼロ。


 近寄り難さ百点満点。


 そして。


 恋の相手は幼なじみの騎士。


 レオンハルト。


 なるほど。


 分かりやすい。


 長年片想いしているパターンだ。


「今回はいける」


 私は頷いた。


 女神が生暖かい目で見てきた。


 失礼な神だった。


 しかし今回は本当に簡単だ。


 二人とも感情表現が苦手。


 ならば意思疎通を邪魔してやればいい。


 勝ちである。


 翌日。


 私はさっそく行動を開始した。


 変装能力発動。


 侍女に変身。


 エレノアの屋敷へ潜入成功。


 我ながら犯罪的な能力だった。


 そして。


 私は観察した。


 エレノア。


 美人。


 凄く美人。


 だが。


 びっくりするくらい無表情。


 まるで鉄仮面だった。


「お嬢様」


 侍女が声を掛ける。


「なんでしょう」


 声も平坦。


 感情がない。


 これは楽勝だ。


 こんな子が恋愛などできるわけがない。


 そう思った。


 一時間後までは。


「レオン様から花が届きました」


 侍女が言う。


 すると。


 エレノアの耳が少しだけ赤くなった。


 私は見逃さなかった。


 さらに。


 花瓶へ花を飾る。


 丁寧に。


 ものすごく丁寧に。


 しかも少し笑っている。


 怖い。


 恋する乙女怖い。


 普段との落差が怖い。


 私は方針を変更した。


 この花を処分する。


 証拠隠滅である。


 その夜。


 私は忍び込んだ。


 加速装置発動。


 花を回収。


 そして庭へ捨てた。


 完璧。


 勝利。


 翌朝。


 大騒ぎになった。


「花がなくなっています」


「盗難だ!」


「犯人を探せ!」


 私はほくそ笑んだ。


 計画通り。


 だが。


 状況は変な方向へ進んだ。


 レオンハルトが激怒した。


 そして。


 犯人探しを開始した。


 さらに。


 エレノアも参加した。


 二人で。


 一緒に。


 毎日。


 共に行動するようになった。


「なんで?」


 私は頭を抱えた。


 花を消しただけである。


 恋愛イベント増やしてどうする。


 しかも。


 一緒に過ごす時間が増えたせいで。


 仲まで深まった。


 意味が分からない。


 私は第二作戦へ移行した。


 手紙である。


 恋文を偽造する。


 これだ。


 私は天才だ。


 レオンハルトの筆跡を真似る。


 そして。


 適当な女性へ送った。


 浮気疑惑作戦。


 完璧。


 今度こそ勝った。


 数日後。


 エレノアがその手紙を発見した。


 よし。


 来た。


 修羅場だ。


 そう思った。


 だが。


 エレノアは無言だった。


 怒らない。


 泣かない。


 叫ばない。


 ただ。


 手紙を持って外出した。


 私は尾行した。


 超視力。


 超聴覚。


 完璧。


 すると。


 彼女はレオンハルトへ手紙を渡した。


「これ」


「?」


「偽物」


「え?」


「筆跡が違う」


 終わった。


 一秒で終わった。


 レオンハルトは感動していた。


「信じてくれたのか」


「当然」


「エレノア」


「なんでしょう」


「好きだ」


 早い。


 展開が早い。


 なんで告白まで飛ぶの。


 そして。


 エレノアも言った。


「私も」


 終了。


 敗北確定。


 私は木から落下した。


 怪力のおかげで無傷だった。


 悔しい。


 数か月後。


 婚約発表。


 社交界は大騒ぎだった。


 氷の公女が笑った。


 そんな噂が流れている。


 実際。


 笑っていた。


 レオンハルトの隣で。


 私だけが納得できなかった。


 そして。


 婚約披露会の日。


 エレノアが私を発見した。


 嫌な予感しかしない。


「ミレイユ様」


 笑顔。


 超レア。


 たぶん王国に三人くらいしか見たことない。


「ありがとうございました」


「違う」


 反射だった。


「花を失くしてくださったおかげで」


「違う」


「彼と過ごす時間が増えました」


「違う」


「手紙の件でも彼を信じる勇気が持てました」


「違う」


 エレノアは本当に幸せそうだった。


 氷の公女はどこにもいなかった。


 ただ恋する少女がいるだけだった。


 私は天を仰ぐ。


 最近天に文句ばかり言っている。


 職業違反である。


 その夜。


 女神が現れた。


 最近はもう定時出勤だった。


「七組目です」


「帰れ」


「恋愛成就が」


 私は枕を投げた。


 避けられた。


 悔しい。


 そして女神がぽつりと言う。


「ところで」


「なに」


「エリオットさんがお茶会七回目です」


 私は首を傾げた。


「律儀な人だな」


 女神は顔を覆った。


 なんでそんな反応をされたのか。


 私にはまるで理解できなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。