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第十五話 幼馴染は勇者になりたいようです

 第十五話 幼馴染は勇者になりたいようです


 現在の戦績。


 破局〇組。


 恋愛成就十四組。


 帰還まで残り二十組。


「十四連敗かぁ……」


 私は庭園のベンチで空を見上げた。


 ここまで来ると逆に誇らしい。


 普通はできない。


 十四回連続で全力妨害して全部恋愛成就させるなど才能がなければ不可能だ。


 欲しくない才能だけど。


 その時だった。


 窓ではない。


 空だった。


 光が落ちてくる。


 女神である。


 最近出現演出が派手になった。


「十五組目です」


「帰れ」


「今日は空から来たのに」


「帰れ」


 女神は諦めた顔で資料を渡してきた。


 私は受け取る。


 読む。


 そして少しだけ嫌な顔になった。


 今回の標的は。


 勇者候補ユウト。


 そして幼馴染の村娘ミア。


 王道だった。


 凄く王道だった。


 田舎育ち。


 幼馴染。


 勇者。


 旅立ち。


 絶対後で再会して結婚するやつである。


 物語として強い。


 非常に強い。


「これは厄介」


 私は呟いた。


 女神が頷く。


 珍しい。


 今回は意見が一致した。


 しかも問題があった。


 二人ともまだ恋を自覚していない。


 つまり今潰さないと後で面倒になる。


 私は立ち上がった。


 今度こそ勝つ。


 本当に。


 多分。


 恐らく。


 自信は少ししかなかったが立ち上がった。


 翌日。


 私は村へ向かった。


 飛んで。


 最近移動手段がおかしい気がするけど気にしない。


 到着した村は平和だった。


 畑。


 家畜。


 子供達。


 老人達。


 実に牧歌的である。


 そして。


 広場にいた。


 ユウトとミア。


 仲良く笑っている。


 近い。


 距離が近い。


 十四話も恋愛妨害していると分かる。


 あれは駄目だ。


 将来絶対くっつく。


 私はまず引き離そうと思った。


 シンプルが一番である。


 私は変装能力を発動した。


 旅人。


 無難。


 完璧。


 そしてユウトへ接触した。


「王都へ行けば名声が得られるぞ」


「本当ですか!」


 素直だった。


 よし。


 引っ掛かった。


 私はさらに続ける。


「旅へ出れば世界が変わる」


「凄いなぁ」


「幼馴染など忘れる」


「え?」


 初めて困った顔になった。


 よし。


 効いている。


 すると。


 ユウトが言った。


「それは嫌です」


「あれ?」


「ミアは大切なので」


 私は固まった。


 無自覚なのに重い。


 非常に重い。


 だがまだだ。


 次の作戦である。


 私はミアへ接触した。


 今度は占い師。


 最近こればかりである。


「勇者様は旅へ出ます」


「そうでしょうね」


 ミアは笑った。


 少し寂しそうに。


 よし。


 ここだ。


「帰ってこないかもしれません」


「……」


 効いた。


 私は勝利を確信した。


 だが。


 ミアは微笑んだ。


「それでも応援します」


「なんで!?」


 思わず声が出た。


 私の心の声だった。


 意味が分からない。


 好きなら止めればいいじゃない。


 前世の私ならそうする。


 たぶん。


 いやしないかもしれない。


 恋愛経験ないし。


 混乱してきた。


 数日後。


 勇者選定の日が来た。


 私は最後の妨害を行う。


 伝説の剣を隠す。


 これで勇者になれない。


 完璧。


 私は超高速で聖堂へ侵入した。


 剣を持ち上げた。


 その瞬間。


 床が抜けた。


 何故。


 本当に何故。


 私は落下した。


 剣も落ちた。


 地下遺跡へ。


 最悪である。


 だが。


 更に最悪なことが起きた。


 ユウトが追い掛けて飛び込んできた。


 ミアも飛び込んできた。


 危険だった。


 私は反射的に二人を守った。


 怪力で壁を支える。


 飛行能力で落下を止める。


 炎で魔物を倒す。


 剣まで回収する。


 十分後。


 遺跡攻略完了。


 そして。


 ユウトが剣を抜いた。


 勇者誕生。


 おめでとうございます。


 私である。


 敗北したのは。


 するとミアが泣いていた。


 勇者になった幼馴染を見て。


 誇らしそうに。


 寂しそうに。


 そして。


 ユウトが言った。


 嫌な予感しかしない。


「絶対帰ってくる」


 やめろ。


「約束する」


 やめてくれ。


「ミアが待ってるから」


 終了。


 私は静かに壁へ頭を預けた。


 敗北だった。


 完全な。


 一年後。


 勇者は魔王軍幹部を倒した。


 二年後。


 英雄になった。


 三年後。


 帰還した。


 そして。


 村でプロポーズした。


 知ってた。


 もう知ってた。


 むしろいつするか待っていた。


 結婚式の日。


 私は現実逃避でケーキを食べていた。


 三個目である。


 そこへ二人が来た。


 嫌な予感しかしない。


「ミレイユ様!」


 笑顔。


 幸せ。


 眩しい。


「ありがとうございました!」


「違う」


 反射だった。


「旅立つ勇気をくださって」


「違う」


「帰る理由を教えてくださって」


「違う」


「私達の恩人です!」


「違う!」


 誰も聞いてくれない。


 本当に。


 そしてその夜。


 女神が現れた。


 私はクッションを構える。


 女神は盾を構える。


 もう儀式だった。


「十五組目です」


「帰れ」


「恋愛成就が」


 私はクッションを投げた。


 防がれた。


 悔しい。


 すると。


 部屋の扉が開いた。


 エリオットだった。


 最近ノックが雑になっている。


「失礼します」


 もう入ってきている。


 意味がない。


 彼はいつものように紅茶を置いた。


 そして。


 珍しく少し困った顔をした。


「ミレイユ様」


「なに?」


「もし誰かに好意を向けられていたら分かりますか?」


 私は即答した。


「分からない」


 本当に分からない。


 前世から一回も経験ないし。


 エリオットは額を押さえた。


 どうしたのだろう。


 体調が悪いのだろうか。


 心配になった私は。


 珍しく彼の額へ手を当てた。


 熱はない。


 よかった。


 そんな私を見て。


 エリオットは何故かさらに頭を抱えた。


 やっぱり体調が悪いのかもしれない。


 私はそう結論付けたのである。

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