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第十四話 魔王の娘は普通に恋がしたいようです

 第十四話 魔王の娘は普通に恋がしたいようです


 現在の戦績。


 破局〇組。


 恋愛成就十三組。


 帰還まで残り二十組。


「十三連敗」


 私は遠い目をした。


 ここまで来ると芸術である。


 もはや才能だ。


 恋愛妨害の才能ではない。


 恋愛成就の才能だった。


 欲しくなかった。


 本当に。


 その時だった。


 窓が光る。


 反射でクッションを投げる。


 ガシッ。


 女神が掴んだ。


 最近強くなっている。


 悔しい。


「十四組目です」


「帰れ」


「今回は大物です」


 私は資料を受け取った。


 そして。


 固まった。


「魔王の娘?」


 資料にはそう書かれていた。


 エリシア。


 魔族領の姫。


 元魔王の娘。


 現在は平和条約により人間側との交流も行っている。


 そして恋の相手は。


 王立図書館勤務の司書。


 平民。


 名前はノア。


 剣も魔法も大したことがない。


 普通の青年だった。


「なんで?」


 私は首を傾げる。


 魔王の娘と平民。


 接点がなさそうだった。


 だが調べてみると。


 出会いは図書館。


 本好き同士。


 趣味一致。


 会話が弾む。


 終わりである。


 強い。


 こういうカップルは強い。


 趣味が同じというだけで強い。


 私は前世の同僚達を思い出した。


 推しの話で結婚していた。


 意味が分からなかった。


 今も分からない。


 だが強いことだけは知っている。


「今回はどうするんですか」


 女神が聞く。


 私は笑った。


「本をどうにかする」


「嫌な予感しかしません」


 私もそう思う。


 翌日。


 私は図書館へ潜入した。


 変装能力発動。


 司書見習い。


 完璧だった。


 本当に便利である。


 犯罪以外に使っていない気がするけど。


 そして。


 発見した。


 二人である。


 静かな読書席。


 並んで本を読む二人。


 距離が近い。


 嫌な予感しかしない。


 私は本棚の整理を始めた。


 ついでに。


 こっそり本を移し替える。


 恋愛小説を撤去。


 歴史書へ変更。


 これで恋愛ムードは終わりである。


 完璧だった。


 だが。


 翌日。


 二人は歴史書を読んで盛り上がっていた。


「この時代面白いね」


「分かる」


 駄目だった。


 趣味が一致していた。


 最悪だった。


 私は第二作戦へ移行した。


 貸出禁止作戦である。


 二人が通う理由を消す。


 そうすれば自然と会わなくなる。


 天才の発想だった。


 私は超高速で蔵書を別室へ移動させた。


 結果。


 翌日。


 館内が大騒ぎになった。


 司書総出で本探し。


 利用者も総動員。


 なぜかノアとエリシアも参加。


 そして。


 二人きりで地下書庫へ向かうことになった。


「あれ?」


 嫌な予感。


 とても嫌な予感。


 案の定だった。


 地下書庫で事故発生。


 棚が倒れる。


 私は慌てた。


 咄嗟に飛行能力で突入。


 怪力で棚を止める。


 ついでに全部整理する。


 完璧。


 だが。


 二人は棚の陰で見つめ合っていた。


 やめろ。


 その空気をやめろ。


 本当にやめろ。


「君が無事でよかった」


 ノアが言う。


「私も」


 エリシアが顔を赤くする。


 終了。


 私は静かに帰った。


 まだ諦めてないけど。


 でも少し泣きたかった。


 そして数週間後。


 最後の妨害を行う。


 魔族領との交流祭。


 ここで二人は会う予定らしい。


 ならば。


 会場を壊せばいい。


 私は天才だった。


 だが。


 組み立て途中の舞台が崩れた。


 私のせいではない。


 多分。


 恐らく。


 あまり自信はない。


 ともかく私は飛び出した。


 怪力で支える。


 柱を直す。


 装飾も設置する。


 照明も整える。


 最後に花まで飾る。


 結果。


 祭り史上最高の舞台が完成した。


 なんで。


 本当に何で。


 その夜。


 その舞台の上で。


 ノアが告白した。


 満月。


 花。


 歓声。


 祝福。


 拍手。


 そして。


 当然成功。


 私は座り込んだ。


 もう慣れた。


 最近は敗北にも慣れてきた。


 成長である。


 したくなかったけど。


 数か月後。


 婚約発表。


 そして恒例行事。


「ミレイユ様!」


 やっぱり来た。


 エリシアだった。


 満面の笑み。


 恋する少女である。


「ありがとうございました!」


「違う」


 反射。


「図書館でも」


「違う」


「お祭りでも」


「違う」


「私達を支えてくださって」


「違う!」


 全然支えていない。


 むしろ崩そうとしていた。


 本当に。


 その夜。


 女神が現れた。


 私もクッションを構えた。


 女神も盾を構えた。


 いつもの流れである。


「十四組目です」


「帰れ」


「恋愛成就が」


 私はクッションを投げた。


 防がれた。


 悔しい。


 その時だった。


 コンコン。


 ノック。


 エリオットが入ってきた。


 最近もう自分の家みたいに来る。


「どうぞ」


 言ってしまった。


 自然に。


 エリオットは少し嬉しそうだった。


 なぜだろう。


 不思議だった。


 彼はいつものように紅茶を置く。


 私の好みの茶葉。


 私の好みのお菓子。


 最近全部把握されている。


 優秀な部下である。


 本当に。


 女神が隣で頭を抱えた。


「もう駄目かもしれない」


 何か言っていたが、私は紅茶を飲んでいたので聞いていなかったのである。

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