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第十一話 聖騎士は誓いを守りたいようです

 第十一話 聖騎士は誓いを守りたいようです


 現在の戦績。


 破局〇組。


 恋愛成就十組。


 帰還まで残り二十組。


「半分終わった」


 私は呟いた。


 すると女神が言った。


「終わってません」


「十組成立したじゃん」


「帰還条件は破局二十組です」


 私は机へ額を打ち付けた。


 ゴン。


 痛かった。


 最近毎回こうしている気がする。


 その時だった。


 窓が光る。


 反射でクッションを投げる。


 女神が普通に避けた。


 学習していた。


 悔しい。


「十一組目です」


「帰れ」


「今回は聖騎士です」


 私は思わず顔を上げた。


 聖騎士。


 珍しい。


 資料を受け取る。


 読む。


 そして。


 私は少しだけ驚いた。


 今回の標的。


 聖騎士団副団長。


 アルベルト。


 堅物。


 真面目。


 規律の塊。


 そして恋の相手は。


 神官見習いの少女。


 マリア。


 平民。


 優しい。


 おっとり。


 天然。


 危険だった。


 こういう組み合わせは強い。


 かなり強い。


 だが。


 弱点もあった。


 アルベルトは誓いを立てていた。


 生涯を神へ捧げる。


 恋愛禁止。


 結婚禁止。


 自己犠牲上等。


 つまり。


 その誓いを利用すれば勝てる。


 今度こそ勝った。


 私は確信した。


 数日後。


 私は神殿へ潜入した。


 変装能力発動。


 修道女へ変身。


 完璧。


 最近本当に犯罪向きの能力ばかり使っている気がする。


 神様は何を考えていたのか。


 私はアルベルトへ接触した。


「聖騎士様」


「なんでしょう」


 硬い。


 物凄く硬い。


 石像かと思った。


「恋愛に興味は」


「ありません」


 即答だった。


 よし。


 いける。


「女性に興味は」


「ありません」


 よし。


 勝った。


 私は思った。


 今回は楽勝だ。


 しかし。


 人生は理不尽だった。


 その夜。


 私は超聴覚で尾行した。


 すると。


 アルベルトが一人で神殿の中庭にいた。


 そこへ。


 マリアが現れる。


「こんばんは」


「こんばんは」


 空気が柔らかい。


 嫌な予感。


 とても嫌な予感。


 二人は話し始めた。


 楽しそうだった。


 凄く楽しそうだった。


 そして。


 アルベルトが笑った。


 私は固まった。


 笑うんだ。


 この人笑うんだ。


 その瞬間。


 私は理解した。


 まずい。


 かなりまずい。


 本人が自覚していないだけだ。


 恋してる。


 完全に。


 私は焦った。


 翌日。


 第二作戦開始。


 マリアを遠ざける。


 これだ。


 私は変装能力で占い師になった。


 もう何回目か分からない。


「運命の相手は別にいます」


 私は断言した。


 マリアは首を傾げる。


「そうなんですか?」


「そうです」


「へぇ」


 反応が薄い。


 もっと驚いてほしい。


「聖騎士様ではありません」


「そうなんですね」


 あれ。


 全然効いてない。


「悲しくないんですか」


 私が聞く。


 すると。


 マリアは不思議そうな顔をした。


「好きな人が誰かは占いで決まるんですか?」


 私は黙った。


 正論だった。


 悲しい。


 三日後。


 私は最後の手段を使う。


 物理である。


 恋愛イベントそのものを潰す。


 その日は星祭りだった。


 二人が会う予定。


 私は加速装置を起動した。


 会場を改造する。


 ベンチを移動。


 花を撤去。


 灯りを変更。


 景観破壊。


 完璧。


 ロマンチックな雰囲気は消えた。


 勝った。


 そう思った。


 思ったのだ。


 結果。


 道に迷った幼児が出た。


 私は反射的に保護した。


 さらに怪力で倒木を撤去した。


 ついでに橋も直した。


 最後に川へ落ちた犬も救出した。


 その様子を。


 二人が見ていた。


 嫌な予感。


 アルベルトがぽつりと呟く。


「素晴らしい人ですね」


 マリアも頷く。


「本当に」


 なぜ。


 私は恋愛妨害中だぞ。


 すると。


 マリアが言った。


「アルベルト様もそうです」


 沈黙。


 そして。


 アルベルトの顔が赤くなった。


 終了。


 私は敗北を悟った。


 祭りの最後。


 告白。


 成功。


 交際開始。


 拍手。


 花火。


 大歓声。


 お疲れ様でした。


 私である。


 数か月後。


 婚約発表。


 私の屋敷へ招待状が届いた。


 破り捨てた。


 二十枚くらい。


 同じ内容だった。


 どうしてそんなに送るの。


 当日。


 結局参加した。


 公爵家なので。


 逃げられない。


 そして。


 案の定である。


「ミレイユ様!」


 マリアが走ってくる。


 幸せそうだった。


 本当に幸せそうだった。


「ありがとうございました!」


「違う」


 反射だった。


 もう様式美である。


「祭りの日に助けていただいて」


「違う」


「おかげで彼の優しさに気付けました」


「違う」


 アルベルトまで頭を下げる。


「背中を押していただきました」


「違う!」


 誰も聞かない。


 本当に聞かない。


 その夜。


 女神が現れた。


 私は無言でクッションを構えた。


 女神も無言で盾を構えた。


 最近息が合ってきている。


 嫌だった。


「十一組目です」


「帰れ」


「恋愛成就が」


 クッションを投げる。


 防がれる。


 悔しい。


 そして。


 女神がニヤニヤしながら言った。


「ところで」


「なに」


「エリオットさんがお茶会七回夜会三回訪問十五回目です」


 私は首を傾げた。


「友達多くない人なんだね」


 女神は天を仰いだ。


 何故なのか。


 私には本気で分からなかったのである。

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