恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 92
家に着くと、疲れた…
どっと疲れが、出た…
昔、大学時代に、初めて、お酒を飲んで、帰宅したときのことを、思い出した…
初めて、大学時代の友人たちと、お酒を飲んで、気持ちが悪くなったが、なんとか、我慢して、家まで、帰って来た…
が、
しかし、家で、玄関で、迎えに出た母の顔を見るなり、いきなり、気持ちが悪くなり、吐いて、しまった…
きっと、母の顔を見て、安心したのが、大きかったのだろう…
それまで、我慢していたのが、ぷっつりと糸が切れたように、我慢が、できなくなった…
自分でも、意外だったが、それが、真相だろう…
意識せずとも、ぷっつりと、緊張の糸が切れたのが、真相だろう…
今は、さすがに、それほどではないが、やはりというか…
家に帰って、安心した…
実に、安心した…
と、同時に、前沢のことを、考えた…
前沢は、本当に、船見さんと、不倫をしているのだろうか?
考えた…
あのときは、船見さんに、圧倒された…
圧倒されて、そこまでは、考えなかった…
つい、圧倒されて、船見さんの言い分のみを信じた…
が、
今、冷静になって、考えると、おかしいとまでは、言わないが、正直、疑問がある…
なにが、疑問なのか?
それは、なぜ、いきなり、船見さんが、私と前沢さんが、不倫をしていると、思ったのか?
その疑問だ…
当然、それは、誰かに、聞いたから…
会社の誰かに、聞いたからに違いない…
そして、おそらく、それは、昨日、今日では、ない…
なぜなら、昨日や今日に、聞いて、仮に、船見さんが、前沢さんと、不倫をしていても、いきなり、私に言っては、来ないだろうからだ…
誰もが、初めて、聞いたときは、疑う…
本当かな?
と、考える…
船見さんが、前沢さんと不倫をしていれば、まずは、前沢さんに、確かめるだろう…
「…高見さんとも、不倫をしているの?…」
と、前沢に確かめるだろう…
そして、当然ながら、前沢は、それを、否定するだろう…
仮に、前沢が、私と不倫をしていても、普通は、認めない…
当たり前のことだ…
が、
しかし、誰だろうか?
船見さんに、私と前沢が、不倫をしていると、教えたのは、誰だろうか?
考えた…
正直、思いあたる人物は、いない…
誰一人、いない…
なにより、私は、まだ、会社に馴染めていない…
会社の中で、仲が良いひとは、誰も、いない…
だから、当然、会社の誰かが、船見さんに、そんなウソを吹き込んだとしても、それが、誰だか、さっぱりわからない…
そういうことだ…
いや、
一人だけ、いる…
思い当たる人物が、いる…
それは、あの米沢京子…
あの米沢京子だ…
彼女は、私を憎んでいる…
なぜ、私を憎んでいるのか?
それは、あの米倉平造に、学生時代から、援助を受けたから…
要するに、彼女は、米倉平造と親しい…
そして、そんな彼女から見れば、いわば、ポッと出て、いきなり、どこからか、出てきた、私が、米倉平造や、息子の正造に、気に入られたのが、気に入らない…
それが、わかった…
あの熱海で、わかった…
が、
私に言わせれば、それは、単なる嫉妬…
ありがた迷惑な嫉妬に他ならない…
いわば、あの米沢京子は、私に勝手に、嫉妬して、私に勝手に、復讐心を燃やしている…
そういうことだ…
私に言わせば、理不尽、極まりない…
これが、まだ、あの船見さんのように、私が、前沢と不倫を、していると、思って、私を敵対視するのなら、わかる…
それなら、わかる…
それなら、言葉は、適正ではないかも、しれないが、恋のライバル…
お互い、同じ男を巡っての、恋のライバルだからだ…
しかしながら、あの米沢京子の場合は、それとは、別…
まったく別だ…
私に、言わせれば、理不尽な嫉妬…
それに、他ならない…
私が、彼女になにか、したわけでも、ないのに、勝手に私に嫉妬している…
勝手に、私をライバル視している…
そういうことだからだ…
しかし、冷静に考えれば、そんなことは、世の中にありふれている…
自分が、なにか、したわけでもないのに、勝手に誰かから、嫉妬される…
あるいは、ライバル視される…
そんなことは、世の中にありふれている…
良い例が、会社だ…
会社の昇進だ…
高卒のひとが、同い年の大卒のひとを、勝手にライバル視している…
あるいは、勝手に嫉妬している…
それが、よくある例だ…
要するに、何年後だか、わからないが、同い年の人間が、自分より、出世する…
下手をすれば、自分の上司になるかも、しれない…
それが、許せないのだ…
高卒のひとに、自分が、その人物になにも、していないにも、かかわらず、勝手に、ライバル視されたり、嫉妬されたりする大卒の人間には、気の毒だが、世の中、そういうものだ…
私の場合も、似たようなものだ…
私とあの米沢京子は、同じく、米倉平造と、知り合った…
が、
私は、なぜか、その後も、米倉家の人間と関わり、優遇されている…
しかしながら、あの米沢京子は、優遇されていない…
言葉は、悪いが、私のポジションに立てない…
私と同じポジション=地位に立てない…
それが、悔しくて、仕方がない…
そういうことだからだ…
それになにより、あの米沢京子が、美人だから、なおさらだ…
なおさら、悔しいに違いない…
要するに、私にルックスで、負けていない…
にも、かかわらず、この差は、なに?
と、言いたいのだろう…
彼女の立場に立てば、わかる…
実に、よくわかる…
そういうことだ…
なまじ、頭=学歴でも、顔=ルックスでも、負けていないから、余計に嫉妬する…
これは、どんな場合も、同じ…
同じだ…
会社の昇進も、同じなら、恋や結婚も同じ…
男も女も、同じ異性を好きになり、一方は選ばれ、もう一方は選ばれないと、する…
当然、選ばれない方は、
「…どうして、自分は、選ばれないの?…」
と、なる…
ルックスや学歴に差がある場合は、納得できるが、これが、差がない場合は、納得できない…
これも、当たり前…
あの米沢京子が、私に対して、ライバル心を抱くのは、当たり前…
当たり前だ…
いや、
なぜか、船見さんのことを、考えているにも、かかわらず、いつのまにか、話が、米沢京子のことになった…
これは、一体、どうして?
これは、一体、なぜだろうか?
考える…
そして、それは、おそらく、私があの米沢京子を意識しているからだろうと、気付いた…
今回、船見さんから、いきなり、
「…前沢さんと、不倫しているでしょ?…」
と、言われて、そのときは、動揺したが、それでも、動揺したのは、そのときだけ…
そのときだけだ…
なにしろ、私は、前沢と不倫など、していない…
それゆえ、なにを言われても、平気…
へっちゃらだ…
だから、船見さんに、なんと言われようと、平気…
平気だ…
が、
あの米沢京子は、違う…
違うのだ…
なぜか、あの米沢京子の話題になった…
これでは、まるで、私が、あの米沢京子に恋をしているみたいだ…
私は、思った…
私は、考えた…
いつも、無意識に、あの米沢京子のことを、意識している…
ずっと、昔、ある作家の方が、言っていた…
好きは、嫌いの裏返し…
自分を、好きなファンの方と、自分を嫌いなファンの方は、大切…
問題なのは、自分を好きでも、嫌いでもなく、自分になんの興味もないひとだと、言っていた…
ファンも、アンチも、大切…
なぜなら、自分を意識してくれるから、大切…
自分を意識しない層こそ、問題なのだと、力説していた…
私は、当時、それを、読んで、実に納得した…
嫌いは、好きの裏返し…
つまりは、嫌いということで、相手を意識している…
そういうことだ…
つまりは、それと、同じ…
私は、あの米沢京子を意識している…
常に意識している…
誰も、なにも、言わないのに、意識している…
これでは、まるで、恋?
恋のようだ(笑)…
が、
しかし、私は、同性婚を認めないわけでは、ないが、私自身は、その気は、まったくない…
私は、ノーマル…
至って、ノーマルな平凡な性癖?の女だからだ…
正直、家に帰って来て、そんなバカなことを、考え続けたおかげで、少々、頭が、おかしくなった気がした…
お風呂に入ろう…
とっさに、思った…
いつもなら、帰宅すると、まっすぐに、お風呂に入って、カラダと心をリラックスさせるのが、ルーティンだったが、今日は、あの船見さんのことで、少々、調子が、狂った…
いつものルーティンが、狂った…
船見さんを、恨むわけでは、ないが、彼女のせいで、狂った…
私は、思った…
私は、考えた…
と、
そんなときだった…
私のケータイの電話が鳴った…
いきなり、鳴った…
一体、誰からだろう…
考えた…
私は、急いで、誰からか、見た…
すると、ケータイに出ていた名前は、米倉正造…
あの米倉正造からだった…




