恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 9
米沢京子…
彼女以外は、普通だった…
彼女以外は、この会社で、私を普通に受け入れてくれた…
私を、普通に扱ってくれた…
彼女だけが、ダメだった…
私を受け入れてくれなかった…
なぜなのかは、わからない…
いくら考えても、わからない…
が、
それが、現実…
現実だった…
彼女だけが、私に対する態度が、違った…
私に対する態度が、冷ややかというか…
明らかに、塩対応…
それは、誰が見ても、わかった…
が、
さすがに、それを、口にするものは、いなかった…
皆無だった…
誰もが、面倒ごとに、関わりたくないからだ…
だから、それが、わかっても、スルーした…
あえて、スルーした…
営業所長の前沢など、その典型だった…
前沢は、典型的な事なかれ主義の人間だった…
なにかあっても、知らんぷりといっては、大げさだが、問題を極力起こしたくないタイプ…
評価で、言えば、減点主義の人間というか…
いわゆる、加点主義…
営業で、言えば、少しでも、良い成績を取って、周囲に評価されるというタイプとは、真逆のタイプ…
大きな点数を取ることなど、できないが、ミスもしないと、いうタイプの人間だ…
官僚タイプといっても、いいのかも、しれない…
だから、攻撃は、不向きだが、守りには、強い…
仮に、会社の本社の上司から、呼び出され、詰問されても、非が見つからない…
とりたてて、良いところは、ないが、悪いところもないと、いうやつだ…
だから、正直、職場としては、最適だった…
私にとって、最適な職場だった…
なぜなら、私は、イケイケドンドンは、苦手…
つまりは、攻撃的というか…
常に、周囲の人間を押しのけても、
…オレは…
…オレは…
と、いう人間は、ダメだった…
苦手だった…
それよりも、この前沢の方が、合っていた…
今も言った…
…オレが…
…オレが…
という人間では、ないからだ…
私は、学生時代から、そういう人間が、苦手だった…
ハッキリ言えば、大嫌いだった(笑)…
要するに、どんなシチュエーションでも、自分が、一番でなければ、気が済まない人間…
お山の大将というか…
これが、苦手だった…
それゆえ、自分で、言うのも、なんだが、そのタイプの男に、口説かれたときなど、これまで、感じたことのない、嫌悪感を、感じたものだ…
それは、そうだろう…
自分が、一番、嫌いなタイプの男に口説かれたんだ…
誰だって、これほど、嫌なことはない(爆笑)…
自分の好きなタイプなら、ともかく、自分の嫌いなタイプの男に口説かれるなんて、最悪…
まさに、最悪だ…
あっては、ならないくらい最悪だ…
私の好きなタイプは、いわゆるイケイケの男とは、真逆…
イケイケとは、真逆のおとなしい男が、好きだった…
そして、できれば、少しばかり、知的な男がいい…
知的=頭の良い男がいい…
そういう男に惹かれる…
そういうタイプの男に惹かれる…
これは、もしかしたら、コンプレックス?
コンプレックス=劣等感?
大学も中堅の大学しか、出ていない、私の劣等感かも、しれない…
どうしても、頭のいい、男に憧れる…
自分が、頭が、たいして、よくないから、憧れる…
そういうことだろう…
自分の持ってないものを、持っている人間に憧れる…
が、
ケンカの強い男はダメ…
イケイケ系は、ダメ…
自分が、そのタイプではないから、自分にないものを、持っているが、そのタイプには、憧れない…
私は、ケンカが強い男より、頭がいい男が好き…
そういうことだ(笑)…
そして、これが、好みというものなのだろう…
生まれつきの好み=趣向というものなのだろう…
これは、いい悪いではなく、そういうもの…
そういうものだからだ…
例えば、肉と魚、どっちが好き?
と、誰かに聞かれて、肉が好きでも、魚が好きでも、どちらが、いいとか、悪いではない…
それと、同じ…
同じだ…
あくまで、個人の趣味=趣向だからだ…
だから、それに、いい悪いはない…
ただ、私は、昔から、オラオラ系というか…
暴力の匂いがする人間が、嫌い…
これは、生理的なものだ…
だから、そんなタイプの人間に口説かれるのは、嫌…
生理的に受け付けない…
それゆえ、そんなことが、あったのは、黒歴史…
私の中で、真っ先に消したい黒歴史だった(爆笑)…
少々、話が、脱線した…
話が、横道に逸れた…
いつものことだ(笑)…
要は、私は、前沢は、受け入れることが、できる…
押しの強いタイプではないが、守りに強いタイプの前沢は、私は、受け入れることが、できる…
そういうことだ…
これは、相性というより、単なる好き嫌いの部類…
前沢のようなタイプの男を、嫌う女は、多いだろうが、私は、違う…
違うのだ…
ひとによっては、常に前に出たがる男が好き…
男なのだから、常に集団の先頭に立って、周囲の人間を、引っ張るような、強いリーダーシップのある男が好き…
そんなタイプの男に惹かれる女の気持ちは、わかるが、私は、無理…
無理筋だった…
そして、なにより、そんな男は、自分勝手…
なぜなら、常に自分が、一番…
一番、先頭を走る…
そんな男が、他人の意見など、聞くわけがないからだ(笑)…
いわゆる、男らしさと、我がままをいっしょにしている…
混同している…
歳を取って、わかったが、いわゆる、リーダーシップがある人間は、それ自体が、一つの才能だと思う…
どこに、いても、どんな集団の中に、いても、自分が、先頭になって、集団を引っ張る…
それは、例えば、絵がうまかったり、料理が、うまかったりするのと、同じ…
生まれ持った才能だからだ…
そして、その集団を引っ張る才能は、頭の良さと直結しない…
これが、意外なところ…
もちろん、まるっきりのバカでは、できないが、必ずしも頭の良さを必要としない…
ただ、常に集団をまとめることが、できる…
自分が、先頭に立つことが、できる…
となれば、余計に自分は、凄い人間だと、考える…
それが、普通だ…
それが、当たり前だ…
だから、自分勝手になる…
どうしても、自分中心で考えるようになる…
そして、そういう男に憧れる女は、いわゆる、その男の男らしさに憧れるわけだが、そういうタイプの男に憧れる女は、当たり前だが、気の強い女が、多い…
自分が、強いから、弱い男が、嫌い…
これも、当たり前だ…
だから、いっしょになれば、いずれ、ぶつかる…
ぶつかる=衝突する…
これは、火を見るより明らか…
明らかだ(笑)…
要するに、自分と同じタイプの人間と結婚すれば、最初はいいが、いずれ、ぶつかる確率が高い…
同じように、気が強い性格だから、互いに相手に、譲ることが、できないからだ…
いつも、
…オレは、オレは…
…アタシは、アタシは…
ということになるからだ…
だから、ぶつかる…
だから、衝突する…
私は、そんなケースを学生時代から、何人も見てきた…
いわゆる、気の強い男と、気の強い女のカップルを、何人も見てきた…
そして、それは、大抵破局した(笑)…
別れた…
しかも、大抵は、大げんかの末に別れた…
なんというか…
非常に、わかりやすい構図というか…
思わず、笑っちゃうぐらいわかりやすい展開だった…
話を元に、戻そう…
前沢のことだ…
前沢は、官僚タイプ…
いわゆる、イケイケとは、無縁のタイプ…
だから、好きというわけではないが、嫌いではない…
そういうことだ…
誰しも、自分が、嫌いなタイプの人間が、上司や同僚では、たまったものでは、ないからだ…
私は、今度の会社に転職して、真っ先に、思ったのは、
…たぶん、なんとかなる…
…たぶん、なんとか、やっていける…
ということだった…
これは、直観というか…
自分が、これから働く職場に行き、そこで、働く面々を見れば、なんとなく、わかるものだ…
おとなしい人間は、自分と同じようなおとなしいタイプの人間が、多ければ、安心するし、見るからにイケイケの人間は、自分と同じようなイケイケの人間を、見れば、安心する…
要するに、自分と仲良くなれそうな人間を見つければ、安心するということだ…
今度の職場は、私と合いそうな、人間が、多かった…
それは、一目見て、直観でわかった…
フラッシュバックというか…
これは、ずっと以前、学生時代にバイトで、経験したこと…
学生時代にいくつかのバイトをして、経験したことだった…
それが、この歳になって、生きた…
生きた=経験が、生きた、役に立ったといことだ…
学生時代のバイトを経験して、知ったことは、仕事が、自分に合うか、否かより、大事なことがある…
それは、職場の雰囲気が、自分に馴染めるか、否か…
これが、一番、重要だと、いうことだ…
正直、仕事は、二番…
一番は、職場の雰囲気に馴染めるか、否か…
職場の雰囲気=人間関係が、なにより、大事だということだ…
つまりは、仕事より、人間関係が、大事だということだ(笑)…
それが、わかった…
学生時代にバイトをして、わかった…
そして、いくつかのバイトを経験してわかったのは、自分に合う職場、合わない職場が、あるということだった…
私は、決して、個性的な人間ではない…
我がままでもない…
普通の人間だ…
しかしながら、どうしても、馴染めない職場もあった…
これが、現実だった…
そして、それを、学生時代に知ったのは、大きかった…
だから、今の職場も最初に、やって来たとき、
…たぶん、なんとか、なる…
…たぶん、ここで、やっていける…
と、思った…
学生時代の経験から、それが、わかった…
そして、それを思えば、もしかしたら、この職場を私に紹介した水野良平が、事前に私の性格を考えて、職場を選んでくれたのでは?
とも、思った…
どんな人間も、スーパーマンではない…
どんな職場でも、入っていける、人間は、この世にいないからだ…
大抵は、うまくいかない職場があるものだ…
それは、大抵、人間関係がダメ…
どうしても、自分が、その職場に馴染めない…
そういうことだ…
そして、それを、思えば、今度の職場が、うまく馴染めそうなのは、事前に、水野良平が、調査したのでは?
と、思った…
事前に、その職場に、私が馴染めるか、否か、調査したのでは?
と、考えた…
が、
これは、もしかしたら、考えすぎ?
いくらなんでも、33歳にもなる、いっぱしの女にそこまでは、しない…
とも、思った…
が、
本当のところは、わからない…
わからない…
それが、真相だった…




