恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 8
これは、僥倖…
私にとって、まさに僥倖だった…
私にとって、実に都合のいい話だった…
正直、金崎実業は、色々あって、居心地が悪くなった…
ハッキリ言って、もういたくない…
早々と、退職したい…
が、
行き先が見つからない…
転職先が見つからない…
また、なにより、自分の年齢と実力で、今以上の会社が、見つかるかと、言えば、疑問…
大いに疑問だ(苦笑)…
先日、就職氷河期の、おそらく男性が、大学を卒業したときは、就職が、厳しかったから、大した会社に入れなかったけど、後に、ステップアップして、それなりの会社に転職できた…
自分の周りの友人にも、そんなケースが多いと、いう記事を見た…
が、
それは、果たして本当だろうか?
少々、疑問だ…
むしろ、私の周りでは、転職して、会社のレベルが下がったのが、大半だからだ(苦笑)…
金崎実業は、大した会社ではなかったが、それでも、金崎実業を辞めた後、大抵は、金崎実業よりも、劣る会社に転職した…
それが、現実だ…
が、
それは、あくまで、会社の規模や給与など、待遇面の話…
居心地はわからない…
傍から、見れば、格落ちした会社に転職したが、本人は、前の会社より、ずっと、居心地がいい…
そういうことが、あるからだ…
だから、それは、本人しか、わからないからだ…
だから、わからない…
本人にしか、わからない…
例えば、日本を代表する企業、トヨタに勤めて、辞めた…
その後、はるかに、劣る企業規模の会社に転職しても、本人は、居心地がいいということがあるからだ…
これは、本人でなければ、わからない…
他の人間には、わからない…
大学の偏差値ではないが、良い大学にいたものが、傍から見れば、格落ちの大学に入学し直しても、本人は、以前の大学より、気の合った友人たちに、恵まれて、充実したキャンパス・ライフを送れることも、あるからだ…
要は、環境…
大学も、会社も同じ…
どんな有名大学や有名企業に入社しても、周りの環境は、わからない…
仕事や学業よりも、気の合う友人や知人が、周囲にいれば、誰でも、楽しいからだ…
真逆に言えば、気の合う友人や知人が、できなければ、大学でも、会社でも、辛くなる…
要するに、人間関係…
これは、生きている限り、続く…
永遠に続く…
そこから、逃れることは、誰にも、できない(苦笑)…
だったら、そんな自分は、どうだったのか?
私、高見ちづるは、どうだったのか?
当然、答えなければ、なるまい…
率直に言って、金崎実業は、普通だった…
平凡だった…
大学を出て、新卒で、入社して、十年ちょっと…
別段、何事もなく過ぎた…
ハッキリ言えば、幸せでもなく、不幸でもなかった…
傍から、私を見て、他人が、私をどう思うのか?
それは、わからない…
ただ、私は、そう感じていた…
正直に言えば、金崎実業に入社して、仕事にやりがいを感じたことなど、一度もない…
また、好きになった男もいない(涙)…
だから、残念と言えば、残念だが、居心地は、決して、悪くはなかった…
だから、十年を超えて、在籍した…
それが、真実…
真実だ…
誰もが、居心地が悪いのに、十年も、いない…
居心地が、良いから、いるのだ…
あるいは、
居心地が良いとまでは、いえないが、悪くはない…
だから、いれたとも、言える…
ただ、欲を言えば、きりがない…
ホントなら、好きな男を見つけたかった(苦笑)…
金崎実業に、こだわるわけではないが、見つけたかった…
金崎実業の取引先の男でも、なんでもいい…
見つけたかった…
が、
見つからなかった(涙)…
正直、それだけが、心残り…
心残りだ…
他には、なにもない…
給与等のことは、言っても、仕方がないこと…
世間の平均が、どうだか、わからないが、給与に不満はなかった…
それは、おそらく、私が実家暮らしなのが、大きい…
金崎実業を就職先として、選ぶにあたって、実家住まいの私は、実家から、通える距離の会社を探した…
そして、金崎実業の営業所は、私の住む駅から、数駅の距離の駅前にあった…
だから、金崎実業の就職試験に合格して、入社した…
そういうことだ…
そして、退職…
今の会社に移った…
水野透の父、良平に紹介された今の会社に移った…
が、
正直、私にとって、今の会社は、微妙…
微妙だった(苦笑)…
まだ、転職して一か月足らずということも、大きい…
金崎実業は、新卒で、入社した…
だから、右も左もわからない私に手取り足取り、指導する先輩もいた…
が、
今の会社は、中途入社…
転職組だ…
33歳の新入社員…
だから、周囲の人間も私に気を遣うし、私もまた周囲の人間に気を遣う…
私は、別段、個性的な人間ではないし、敵を作る人間でもない…
でも、それでも、やりづらい(苦笑)…
途中で、それまで、縁もゆかりもなかった集団の中に入るのは、難しい…
これは、誰でも、経験すれば、わかるものだ…
あるいは、経験せずとも、そう言われれば、難しいだろうな、と、感じるものだ…
もちろん、私も例外ではない…
私、高見ちづるも、例外ではない…
これまで、中途で、会社に入ったのは、学生時代のバイトだった…
が、
今と年齢が違う…
当時は、二十歳前後…
今と違って、若かった(笑)…
だから、バイトの職場でも、学生さんとして、扱われた…
それが、今は、33歳…
正直、若くない…
自分でも、嫌というほど、それが、わかっている…
そして、なにより、周囲も私の扱いに困る…
学生時代のアルバイトのように、周囲の人間が、私を子供扱いできないから、困るのだ…
私は、自分の立場を、そう見た…
私は、自分の立場を、そう睨んだ…
正直、仕事は、普通…
いわゆる、営業支援…
営業の人間に、会社の事務で、サポートする業務…
前の仕事と大差ない…
私個人が、人前で、プレゼンすることもないし、あるのは、他人のプレゼンの資料作り…
だから、言葉は、悪いが、裏方…
営業の裏方だ…
が、
これが、いいのか、どうかは、わからない…
なぜなら、一日中、会社にいるからだ…
基本、一日中、自分の席に座っている…
だから、言葉は、悪いが、逃げ場がない…
逃げ場とは、外出する機会がないということだ…
外出する機会があれば、会社から、外に出て、気分転換が、できる…
同じ職場に、嫌なヤツがいても、その人間から、逃れることが、できるからだ…
以前の金崎実業の営業所が、そんな感じだった…
営業所といっても、どこそこの駅の前の雑居ビルの一室…
営業所全体の人数も、二十人ちょっとと、決して、大所帯ではない…
しかし、人間同士が集まるから、どうしても、派閥が生じる…
派閥=人間関係が生じる…
これは、いい悪いではない…
人間同士が、集まれば、どうしても、自分と気が合う人間同士が集まるからだ…
仲のいい者同士が集まるからだ…
これは、会社でも、学校でも、同じ…
同じだ…
おとなしそうなものは、おとなしそうなもの同士、集まるし、気の強そうなものは、気の強そうなもの同士、集まる…
その方が、気が合うからだ…
だから、性格の悪いものは、性格の悪いもの同士が集まる…
実に、わかりやすい構図だ(苦笑)…
ただ、例えば、性格が、悪いもの同士が集まっても、その中の誰も、自分が、性格が悪いとは、これっぽっちも、思わないだろう…
傍から見れば、ろくでもないヤツでも、自分で、自分をろくでもないヤツと思う人間は、皆無だからだ…
皆無=いないからだ…
誰もが、周囲の人間が、思うほど、自分を悪いヤツだとは、思わないものだ…
それは、おそらく死刑囚も同じだろう…
死刑になるぐらいだから、とんでもない悪いことを、したに違いないが、自分で、自分をそれほど、悪い人間だとは、思わないに違いない…
死刑囚も、人間…
人間だからだ…
だから、自分のことを、それほど悪く、思わないだろう…
まあ、私自身、死刑囚に知り合いは、いないが、そう思うのだ(笑)…
それは、ともかく、今の会社に、転職して、一か月弱…
少しは、慣れてきた…
いや、
だいぶ、慣れてきた…
最初は、緊張の連続だった…
それは、私が、大人だから…
33歳の大人だからだろう…
子供と違って、人間関係の難しさが、よくわかっているからだろう…
そう、思える…
いや、
それは、違うかも、しれない…
子供の方が、人間関係の難しさが、よくわかっているかも、しれない…
なぜなら、ナイーブだから…
子供の方が、ナイーブ=純粋だからだ…
だから、余計に人間関係に敏感になる…
父親が、サラリーマンで、転勤族だった場合など、最悪だろう…
数年ごとに、居住地が変わる…
それまでの友人たちと、別れ、新しい友人たちを探す…
それは、おそらく父親も同じ…
転勤族の父親も同じだろう…
同じ会社でも、職場が変われば、ひとが、変わる…
当然、自分が、新しい職場で、やっていけるのか?
不安になるものだからだ…
だが、大人の方が、子供と違って、図々しくなる…
ナイーブでは、なくなるからだ…
感受性が、異なるからだろう…
誰もが、歳を取るごとに、図々しくなり、鈍感になる(笑)…
それゆえ、子供時代なら、ちょっとしたことで、悩んでも、大人になれば、気にしなくなる…
そういうものだ…
だいぶ、前置きが長くなったが、だから、私は、もう33だから、傷付かない…
強くなった…
あるいは、
図々しくなったということかも、しれない…
今の会社に転職して、わずか、一か月弱…
短い期間だが、なんとか、馴染めてきたように、感じる…
あるいは、
自分だけが、そう思っているだけかも、しれない…
自分だけが、そう感じているだけかも、しれない…
が、
そう、思う…
そう、思うのだ…
あの米沢京子を除いては…




