恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 7
散々、米倉好子さんと、水野透のことを、語った…
二人のことを、振り返った…
が、
私のことは、語っていない…
私、高見ちづるのことは、語っていない(笑)…
そもそも、なぜ、今の会社に移ったのか?
話は、それからだ…
今の会社に移ったのは、私が、前の会社に居づらくなったから…
それが、一番の理由だ…
米倉正造と知り合い、水野透とも、知り合った…
それが、きっかけで、米倉や水野のお偉いさんと知り合った…
米倉も、水野も、同族企業…
日本の会社でいえば、サントリーや、竹中工務店のようなもの…
いわゆる、社長が、代々、同じ一族で、占められる…
つまりは、小さな同族企業が、発展した形だからだ…
だから、社長=経営者一族…
それを、代々、続けてきた…
そういうことだ…
例えば、木村さんが、街中で、始めた、小さな企業が、やがて、日本を、代表する企業のひとつになった…
そんな感じだった…
そして、その中で、問題なのは、私が、水野透に、気に入られたことだった…
水野透に、好きになられたことだった…
たぶん、それが、私の運命を変えた…
この平凡な高見ちづるの運命を変えた…
大げさでなく、そう思う…
なぜなら、水野透は、水野財閥の御曹司…
戦前に、日本の二十大財閥に入る、大金持ちの家系の御曹司だったからだ…
私は、なぜか、そんな大金持ちの御曹司に気に入られた…
なぜか好かれた…
そして、それを、知った透の父の水野財閥の当主の良平のみならず、良平の妻の春子からも、私は、気に入られた…
それゆえ、大学を卒業以来、新卒で、入社した金崎実業を離れて、今、水野グループの会社にお世話になっている…
私にとっては、僥倖…
思いもかけない僥倖だった…
なぜなら、金崎実業は、私にとって、居心地が悪くなり、この先、どうしていいか、わからなかったからだ…
会社は、辞めたいが、生活のためにも、すぐに辞めるわけには、いかない…
ホントは、今すぐにでも、辞めたいが、それでは、私が、生活ができなくなるからだ…
私も、33歳…
もうすぐ、34歳になる…
もう、決して、若いとは、言えない年齢…
自分でも、それが、わかっている…
それを、十分、理解しているつもりだ…
が、
ホントは、よくわかっていない…
傍から、見るほど、よくわかっていない…
それが、現実だ…
誰もが、経験する現実だ…
自分では、
「…高見さん…キレイ…」
とか、
「…高見さん…可愛い…」
とか、言われて、つい、
「…お世辞は、いいですよ…」
とか、
「…そんな歯の浮くようなお世辞を言われても、なにも出ませんよ…」
と、笑って、答えるが、それでも、悪い気は、しない…
当たり前だ…
自分が、褒められているから、当たり前だ…
しかしながら、それは、ホントにお世辞に過ぎない…
なぜなら、それが、わかるのは、会社のオジサンの、若い女性社員に対する態度が、私に対する態度と違うからだ…
現実には、オジサンの顔…
オジサンの表情…
これが、違う…
オジサンに下心がないのは、わかるが、やはり、私に対する態度と、若い女性社員に対する態度が、違う…
それは、誰でも、歳を取れば、わかってくる…
もし、それが、わからないので、あれば、よほど、おめでたい人間だろう…
だから、私も歳を取った…
もう随分、若さが、なくなった…
そう思う…
そして、若さが、なくなった、私が会社を辞めて、転職するのは、厳しい…
私に特技は、なにもない…
よく、三十を過ぎた男や女の転職した成功談をネットで、見るが、それが、本当か、否かは、わからない…
少なくとも、自分に関して言えば、自信がない…
言葉は、変だが、自分に自信が、ないことに、自信がある…
そういうことだ(笑)…
歳を取って、転職をして、成功した人間は、私に言わせれば、ただ、運が、いいのだろう…
会社の仕事と、学校の勉強は、違う…
いわば、似て非なもの…
学校で、勉強ができれば、会社=社会で、成功するとは、限らないからだ…
が、
それが、わからないものも、多い…
まだ、高校や大学を出たてで、それが、わからないのは、まだ、いい…
若気の至りで、すむからだ…
だが、私の見たケースでは、それに当てはまらないものも、数多くいた…
要するに、ある程度、歳を取っているにも、かかわらず、それが、わからない…
自分の実力がわからない…
そういう連中だ…
自分が、高卒でも、大卒でも、会社の中で、自分と似たようなキャリアの年上の人間を見れば、ある程度、自分の未来は、わかるものだ…
例えば、自分と同じようなキャリアで、課長になれたものは、同期の四分の一に過ぎないとする…
真逆に言えば、四分の三は、課長になれない…
四人に一人しか、課長になれないのだから、課長になれない可能性は、高いと思うものが、普通の人間だが、自分なら、簡単に課長になれると、考える…
物事を非常に、シンプルに考える…
あるいは、
物事を非常に、自分有利に考える…
つまりは、自分の評価が、異常に高いのだ…
誰も、その人間を優れていると、思わないのだが、自分だけ、優れていると、思う(笑)…
そして、そういう人間は、大抵が、相手の頭がわからない…
例えば、身近に接していれば、なんとなく、相手が、高卒?
あるいは、
大卒と、わかるものだ…
そして、大卒ならば、早慶レベルか、日大レベルか?
話を聞いていれば、わかるものだ…
それが、まるで、わからないし、そもそも、そんなことは、考えることもない…
与えられた仕事をこなせるか、否か?
それが、すべてだからだ…
それゆえ、物事を非常にシンプルに考える…
今ある仕事を、こなせるから、次は、もっと、レベルの高い仕事を与えられると思う…
つまりは、自分のことも、他人のことも、わからない…
そういう人間は、稀にいるが、正直、自分の身の回りには、いてもらいたくない…
見ているのが、しんどいからだ…
ハッキリ言って、昇進に縁もゆかりもない人間が、昇進を目指すのは、滑稽だし、隣で、見ているのが、辛いからだ…
稀にだが、私の周りには、そんな人間は、いた…
ごくわずかだが、いた…
そして、そういう人間が、入って来る年は、決まっていた…
それなりに、景気のいい年…
だから、採用人数が、増える…
採用人数が増えるから、採用レベルが、下がるからだ…
そして、そういう年に入って来た人間は、大抵が、数年以内に辞めた…
人事が、採用が、失敗したのが、わかったから、会社を辞めるように、仕向けたからだ…
いわゆる、リストラ…
全員が、リストラされることは、ないが、それを見て、残った人間もまた、おとなしくなった…
自分の立場が、遅まきだが、わかったからだ…
だから、おとなしくなった…
そして、それを、見ていたからだろう…
余計に、自分に自信が、なくなった(苦笑)…
私は、その連中より、まともだと、自負しているが、それでも、自分が、優れているか?
と、誰かに問われば、とても、自信がない…
何度も言うように、私に特技は、なにもないからだ…
だから、自分に自信が、ないのが、自信がある…
そんな、わけのわからないことを、言うことになる(苦笑)…
だから、転職をためらった…
自分に自信がないから、ためらった…
正直、金崎実業は、私にとって、滅茶苦茶、居心地が悪くなったが、それでも、会社を辞めるのは、ためらわれた…
勇気が必要だった…
が、
あっさりと、私に救いの手が差し伸べられた…
水野グループから、手を差し伸べられた…
私が、水野グループのトップの水野良平と、その妻、春子に気に入られていたからだ…
だから、苦境に陥った私に手を差し伸べて、くれた…
今の会社を紹介してくれた…
そういうことだ…
そして、水野良平と、その妻の春子に、私が、気に入られた理由…
それは、やはり、私が、息子の透に、気に入られたから…
それに尽きるだろう…
私が、透に、気に入られたのは、私が、好子さんに似ているから…
米倉好子さんに、似ているから…
私と好子さんは、姉妹と呼べるほど、似ている…
顔立ちもそうだが、全体的な雰囲気も似ている…
顔立ちが、よく似ていても、雰囲気が、似ていなければ、すぐに、別人と気付く…
が、
顔立ちのみならず、雰囲気まで似ていると、一瞬、区別がつかない…
そんな感じだ(笑)…
そして、何度も、繰り返すが、透は、好子さんが、好きだった…
だから、私を好きになったのだろう…
好子さんと同じような顔立ちで、同じような雰囲気の持ち主だから、好きになったのだろう…
いわば、私は、好子さんの代替品…
私が、それを、受け入れようと、受け入らなかろうと、それが、真実なのだろう…
が、
おそらく、透の両親は、それが、気に入った…
好子さんの代替品の私が、気に入った…
そして、それは、なぜか?
おそらく、それは、好子さんの性格だろう…
好子さんの性格は、悪くはなかったが、プライドが高かった…
それゆえ、扱いづらいと、思ったのかも、しれない…
なにより、好子さんは、米倉家のお嬢様…
大金持ちのお嬢様だ…
おまけに、ルックスもいい…
これでは、プライドが、高くなるなと言う方が、無理…
無理=できない…
だから、おそらく、好子さんに比べて、私の方が、扱いやすい…
そう、思ったのかも、しれない…
透の両親の良平と春子も、そう、思ったのかも、しれない…
同じような顔をしていれば、どうしても、比べてしまう…
私と好子さんを比べてしまうからだ…
これは、当たり前…
誰でも、当たり前だ…
だから、私は、余計に、透の両親から、気に入られた…
それゆえ、今の会社を紹介して、もらった…
水野グループの今の会社を、紹介してもらった…




