恋かもしれない…恋愛偏差値ゼロ 第3部 88
船見さんと、待ち合わせたのは、以前、前沢と、密談した場所だった…
私の勤務するM商会のある駅から、数駅離れた駅の駅前にある、ファミレス…
私と、船見さんが、会って、話をしていてれば、会社の誰かに、見られるかも、しれない…
そう、思ったからだ…
それゆえ、わざわざ、数駅離れた駅前のファミレスで、話をすることにした…
正直、私は、まだ今の会社に入社して、まもないから、右も左もわからない…
なにを言いたいかと、言えば、私は、ともかく、私と話す船見さんが、私と話す姿を会社の誰かと見られることで、彼女の不利益になりは、しないかと、考えたのだ…
相談の内容によっては、会社の同僚に聞かれては、まずい話かも、しれない…
それゆえ、念を聞かせた…
念には念を入れて、わざわざ、数駅離れた駅前のファミレスで、話をすることにした…
そうすれば、会社の同僚に聞かれる心配は、まず、ないからだ…
それが、わかったのだろう…
「…わざわざ、気を利かせて頂き、申し訳ありません…」
と、船見さんが、席に着くなり、私に頭を下げた…
このファミレスにやって来るときも、二人とも、別々だった…
わざと、別々に別れて、電車に乗った…
同じ電車だが、別の車両に乗った…
その方が、これから、二人で会うとは、わからないからだ…
会社の同僚に、気付かれないからだ…
と、同時に、気付いた…
これでは、不倫…
まるで、不倫だ…
しかしながら、会うのは、女同士…
不倫でも、なんでもない、会社の同僚の女(笑)…
それが、わかると、つい、笑えた…
面白くなって、つい、微笑んでしまった…
つい、唇の端が、歪んだ…
そして、そんな私を見て、目の前の船見さんが、
「…どうして、笑うんですか? なにか、面白いことでも、ありましたか?…」
と、聞いた…
真顔で、聞いた…
が、声は、甘い…
舌足らずで、甘ったるい…
それを、見た、私は、
…これでは、いっしょにいる男は、彼女に骨抜きにされるな(苦笑)…
と、思った…
ハッキリ言って、彼女の顔は、良くない…
決して、美人ではない…
しかしながら、大柄で、スタイルが良く、胸も、お尻も、大きな、メリハリの利いた、カラダで、そんな、甘ったるい声で、男と二人きりで、密室で、囁かれたら、男は堪ったものではない…
男は、すぐに、彼女に、夢中になるだろう(爆笑)…
あらためて、そう、思った…
が、
さすがに、それを、口にすることは、できない…
さすがに、そんなことを、言うことは、できない…
だから、私は、
「…まるで、不倫みたいですね…」
と、笑った…
が、
彼女は、意味が、わからなかったらしい…
「…どうして、不倫なんですか?…」
と、真顔で、私に尋ねた…
それを受けて、私は、笑いながら、
「…だって、そうでしょ? 会社のみんなの目を逃れるようにして、こっそりと会う…これが、私が、男なら、不倫…間違いなく、不倫よ…」
と、私は、言った…
力強く、言った…
すると、
「…不倫…」
と、彼女が、小さく、呟いた…
私は、そんな彼女を、真正面で、見ながら、
「…なにか、頼みましょう…」
と、言った…
…ここは、ファミレスだ…
入ったからには、当然、なにかを、注文しなければ、ならないからだ…
「…なにを、頼む?…」
私が、彼女に、聞くと、
「…なんでも、いいです…」
と、彼女が、答えた…
「…なんでも、いいっていのは、困るのよ…なにを、注文していいか、わからなくなるから…」
私が、つい、若干、強い、口調で、言うと、
「…すいません…」
と、彼女が、詫びた…
私は、その姿を見て、なんだか、おかしくなった…
155㎝足らずの私より、10㎝以上は、大柄な、彼女、船見さんが、まるで、私のしもべのように、振る舞っている…
その姿が、おかしかった…
これでは、大人が、子供の言いなりになっているようなものだからだ…
すると、その思いが、私の表情に、現れたのだろう…
「…なにが、面白いんですか?…」
と、再び、彼女が、甘ったるい声で、聞いてきた…
だから、
「…だって、船見さん、カラダが、大きいでしょ? それが、一回り以上、小柄な私に、たいして、そんな態度を取るなんて…まるで、大きくなった子供が、小さなお母さんに取る態度みたいで…」
と、笑った…
「…お母さん?…」
船見さんは、絶句した…
「…そう…」
私が、断言すると、彼女は、戸惑った…
どうして、いいか、わからないようだった…
ホントは、笑えば、いいのだが、笑えない…
これが、もっと、親しい間柄なら、遠慮なく、笑ったに違いない…
いや、
それほど、親しくない間柄の仲でも、笑うものもいる…
が、しかしながら、彼女が、それをしないのは、おとなしいから…
性格が、おとなしいからだろう…
同じように、カラダが、大きな、あの米沢京子なら、笑ったに違いない…
この場面で、笑ったに違いない…
私は、思った…
私は、考えた…
この目の前の彼女と、あの米沢京子は、似ている…
同じように、カラダが、大きく、どこか、色っぽい…
ただ、目の前の彼女、船見さんには、失礼だが、あの米沢京子の方が、顔が、いい…
米沢京子の方が、美人だ…
だが、おそらく、船見さんの方が、モテる…
なぜなら、船見さんの方が、誘いやすいからだ…
あの米沢京子は、強い…
誰が、見ても、ヤンキー…
ヤンキー=元ヤンだ…
それゆえ、美人でも、彼女を好むのは、やはり、同じ元ヤン(笑)…
元ヤンに、限定される(爆笑)…
一般の男は、怖いから、彼女を、誘おうと思わない…
なぜなら、強いからだ…
余談になるが、元ヤンと言われる、女優の佐々木希さん…
たしかに、長身で、誰が、見ても、美人なのは、間違いないが、元ヤンで、あることを、ウリにしていたら、現在の成功は、間違いなくないだろう…
それは、今も言ったように、ファンが、限定されるからだ…
元ヤンが、好かれるのは、基本、元ヤンから…
一般的な男女からは、敬遠される…
佐々木希さんが、所属する事務所も、それが、わかっているから、彼女から、元ヤンの匂いを消して、売り出したのだろう…
素材は、ピカイチ…
しかしながら、売り方を間違えれば、現在の成功は、ないだろう…
私は、目の前の船見さんを見ながら、そう、思った…
そう、考えた…
そして、
「…相談内容というのは、もしかしたら、不倫?…」
と、聞いた…
小さな声で、聞いた…
私の問いに、彼女は、コクンと、首を縦に振って、頷いた…
私の質問を肯定したということだ…
それを、見て、私は、テーブルの上のメニューのタッチパネルを、彼女に見せた…
「…どれにする? 私は、カフェオレにする…船見さんは、どれにする?…」
船見さんは、メニューを見て、
「…コーヒーで、いいです…」
と、言った…
さもありなんと、思った…
船見さんには、悪いが、彼女は、大柄で、胸もお尻も、大きく、女の私から、見ても、魅力的…
いわゆる、いいカラダをしている…
男から、見れば、思わず、むしゃぶりたくなるカラダだ…
しかしながら、当人から、してみれば、おそらく、その体形を維持するのが、大変…
どうしても、太りやすいからだ…
日本人は、白人とは、違う…
なにが、違うかと言えば、白人女性は、痩せていても、胸が大きい…
しかしながら、日本人で、胸が、大きな女性は、どうしても、太りがちだ…
カラダが、貧弱で、胸やお尻が大きなことは、ありえないからだ…
だから、この船見さんのような女性は、わずかだが、太っている…
それゆえ、胸もお尻も、大きく、魅力的なのだ…
が、当人は、その体形を維持するのが、大変に違いない…
太っては、いけないが、歳を取れば、どうしても、太りがちになるからだ…
だから、今もカフェオレは、頼まない…
いや、頼めない…
カフェオレを飲めば、太るからだ…
それゆえ、コーヒーを頼んだ…
私は、そう、見た…
私は、そう、睨んだ…
そして、注文したカフェオレとコーヒーが、運ばれてくる間は、二人とも、黙った…
正直、会話がない…
私は、女だが、おしゃべりな方では、ない…
おそらく、眼前の船見さんも、そう…
船見さんも、おしゃべりではない…
なぜなら、私と彼女は、席が隣り合っている…
私は、入社して、まだ、一か月もたたないが、同じ営業所の人間が、どんなひとたちか、見ている…
観察している…
隣の席の船見さんは、余計なことは、言わないタイプ…
思っていても、言わないタイプだ…
だから、会社の同僚としては、完璧…
完璧だ…
正直、余計なことを、言うタイプは、苦手…
どうでもいいことを、年がら年中、口にしている人間が、男女ともに、稀にいるが、大抵は、そんな人間と、関わり合うのは、ごめんだ…
ただし、そんなおしゃべりな人間と関わり合って、いいことが、ひとつだけある…
それは、そのおしゃべりな人間が、どういう人間か、すぐに、わかることだ…
会話を聞いていれば、誰でも、その人間が、どんな人間か、わかる…
それが、メリット…
おしゃべりな人間が、持つメリットだ…
当人は気付かないが、周囲の人間は、そのひとが、どんな人間か、すぐに、わかるからだ(笑)…
が、
真逆に、しゃべらない人間は、困る…
どんな人間か、わからないからだ…
普通は、会話や行動で、そのひとが、どんな人間か、探るが、それを、しないから、どんな人間か、わからない…
この船見さんは、その典型だった…
私が、入社して、一か月近く、隣の席に座っていても、どんな人間か、さっぱりわからなかった…
会話は、最小限の会話しか、しない…
最小限というのは、仕事関係のみ…
プライベートの話は、一切、しないということだ…
それゆえ、一か月近く隣り合って座っていても、彼女が、どんな人間か、わからなかった…
が、
その彼女が、今日、初めて、私を誘った…
相談事が、あるからと、誘った…
これは、ドキドキ…
どんな話が、出てくるか?
ドキドキだった…




